15 / 47
納得できない2(2)
しおりを挟む
最終的にリンチ事件は、空手有段者の俺が手を出したことにより、加害者となってしまった。
つまり、怪我を負った上級生の保護者に訴えられたのだ。
しかし、一年の野球部員の証言と学校の隠蔽体質のおかげで公にはされず不問となったのだが、結局それを不服に思った誰かが協会に通報したのだろう、俺は全国大会への出場停止処分を受けた。
そればかりか、学校の裏サイトにあることないこと書き込まれて、喧嘩をふっかけられる事が多くなり、結果的に、俺は野球部も空手もやめざるを得なくなった。
貴史が康平を連れて来て、俺が悪かったと謝ると康平は泣いて抱き付いてくる。
「お前のせいじゃないってあれほど言ったのに、まだ気にしてたのかよ」
「気にするよ。グレて、誰とも口をきかなくなって、みんな、どんなに心配したか、・・・功ちゃんは分かってない」
確かに理不尽だと憤慨していたのは事実だが、事件はきっかけに過ぎなかったと、今ならはっきり分かる。
俺は既に虚無に侵されていた。
全ては虚無が原因なのに、状況的には事件のせいみたいになって、なんか悪いことをしたなと反省する。
「本当に悪かったよ。ごめんな、心配かけて」
「約束だよ? 俺・・・もう、いやだからな・・・」
デカい図体の男にぎゅうぎゅう抱きしめられて、苦しい。
「分かったから、もう泣くなよ。康平は相変わらず泣き虫だな。お前、野球部の主将なんだろ? しっかりしろよ」
康平の腕から逃れて、ポケットから清潔なハンカチを出し、涙を拭いてやる。
ちなみに、ポケットの中にはオキシドールとバンドエイドも入っている。
愛美はしょっちゅう転ぶから、いつでも処置できるように常備しているのだ。
「好きでやってるんじゃない! 功ちゃんが勝手にやめちゃうからじゃないか!」
康平が怒って文句を言う。
俺と康平は、小学三年生の時からずっとバッテリーを組んでて、俺はこいつの女房役だった。
こいつの面倒をずっとみてきたから、一から十まで癖も性格もよく知っている。
普通、ピッチャーは俺が俺がっていう自信家タイプが多いのに、こいつは気が優し過ぎて。
確かに、野球は上手いけどリーダータイプではないんだよな。
「わかった! わかったから! 俺が悪かった! 済まなかったから、泣きやんでくれよ、な?」
「ねぇ、野球部に戻って、俺の球受けてくれよ! また、一緒にやろう? 功ちゃん、俺、うんって言うまで、離さないよ!」
そう言って、康平は俺の右腕にしっかりしがみついた。
「「「そうだよ! それがいいよ!」」」
「それ、いい考えだな!」
「大和なら、すぐに勘を取り戻せるよ」
「最後の大会、一緒に出ようぜ!」
「俺、功ちゃんとまた野球やりたい」
「なぁ、一緒にやろうぜ、大和」
康平を宥めてる間に、いつやって来たのか野球部の連中に取り囲まれていた。
イラついてひどい態度をとった俺に、温かい言葉をかけてくれる。
素直に嬉しいと感じた。
「ありがとう。そんなふうに言ってもらえて、本当に嬉しいよ」
「「「功ちゃん!!」」」
「「「大和!!」」」
すると突然、河合が野球部の囲いを破って入って来た。
「どうした?」
ムッとした顔をして、俺の目の前に仁王立ちする。
ああ、こいつらがクラスを騒がせたのを怒っているのか。
俺もまさかこんな事態になるとは、思ってなかった。
悪いなと謝ろうとしたその時、河合は無言で俺の左腕に巻き付いた。
・・・・・・
「なんで?」
「・・・なんとなく?」
つまり、怪我を負った上級生の保護者に訴えられたのだ。
しかし、一年の野球部員の証言と学校の隠蔽体質のおかげで公にはされず不問となったのだが、結局それを不服に思った誰かが協会に通報したのだろう、俺は全国大会への出場停止処分を受けた。
そればかりか、学校の裏サイトにあることないこと書き込まれて、喧嘩をふっかけられる事が多くなり、結果的に、俺は野球部も空手もやめざるを得なくなった。
貴史が康平を連れて来て、俺が悪かったと謝ると康平は泣いて抱き付いてくる。
「お前のせいじゃないってあれほど言ったのに、まだ気にしてたのかよ」
「気にするよ。グレて、誰とも口をきかなくなって、みんな、どんなに心配したか、・・・功ちゃんは分かってない」
確かに理不尽だと憤慨していたのは事実だが、事件はきっかけに過ぎなかったと、今ならはっきり分かる。
俺は既に虚無に侵されていた。
全ては虚無が原因なのに、状況的には事件のせいみたいになって、なんか悪いことをしたなと反省する。
「本当に悪かったよ。ごめんな、心配かけて」
「約束だよ? 俺・・・もう、いやだからな・・・」
デカい図体の男にぎゅうぎゅう抱きしめられて、苦しい。
「分かったから、もう泣くなよ。康平は相変わらず泣き虫だな。お前、野球部の主将なんだろ? しっかりしろよ」
康平の腕から逃れて、ポケットから清潔なハンカチを出し、涙を拭いてやる。
ちなみに、ポケットの中にはオキシドールとバンドエイドも入っている。
愛美はしょっちゅう転ぶから、いつでも処置できるように常備しているのだ。
「好きでやってるんじゃない! 功ちゃんが勝手にやめちゃうからじゃないか!」
康平が怒って文句を言う。
俺と康平は、小学三年生の時からずっとバッテリーを組んでて、俺はこいつの女房役だった。
こいつの面倒をずっとみてきたから、一から十まで癖も性格もよく知っている。
普通、ピッチャーは俺が俺がっていう自信家タイプが多いのに、こいつは気が優し過ぎて。
確かに、野球は上手いけどリーダータイプではないんだよな。
「わかった! わかったから! 俺が悪かった! 済まなかったから、泣きやんでくれよ、な?」
「ねぇ、野球部に戻って、俺の球受けてくれよ! また、一緒にやろう? 功ちゃん、俺、うんって言うまで、離さないよ!」
そう言って、康平は俺の右腕にしっかりしがみついた。
「「「そうだよ! それがいいよ!」」」
「それ、いい考えだな!」
「大和なら、すぐに勘を取り戻せるよ」
「最後の大会、一緒に出ようぜ!」
「俺、功ちゃんとまた野球やりたい」
「なぁ、一緒にやろうぜ、大和」
康平を宥めてる間に、いつやって来たのか野球部の連中に取り囲まれていた。
イラついてひどい態度をとった俺に、温かい言葉をかけてくれる。
素直に嬉しいと感じた。
「ありがとう。そんなふうに言ってもらえて、本当に嬉しいよ」
「「「功ちゃん!!」」」
「「「大和!!」」」
すると突然、河合が野球部の囲いを破って入って来た。
「どうした?」
ムッとした顔をして、俺の目の前に仁王立ちする。
ああ、こいつらがクラスを騒がせたのを怒っているのか。
俺もまさかこんな事態になるとは、思ってなかった。
悪いなと謝ろうとしたその時、河合は無言で俺の左腕に巻き付いた。
・・・・・・
「なんで?」
「・・・なんとなく?」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる