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第十六話:洞窟の中
しおりを挟む俺達は竜王を必ず倒すと心に決め、真っ直ぐ洞窟へ向かっていた。
カナが不安そうに俺に尋ねてきた。
「ここが竜王のいる洞窟なの?」
「ああ、間違いない。この森にはここ以外洞窟がないからね。準備はいいか?」
「いつでも大丈夫だよ。」
俺はカナの方から洞窟の方へと目を向けた。
俺達は一歩ずつ洞窟の中へと歩き出した。
奥に進めば進むほど、魔獣の気配を感じ、かなりの数の魔獣が奥にいることを理解した。
「魔獣の数が一万を超えてるぞ。」
「竜王くらいになるとそのくらいは従えているんだね。2人で倒せるかな。」
「2人でやるしかない。すまない、カナ。こんな事に巻き込んで。」
「ううん、大丈夫。いつでも私はヤミの側にいるから。」
俺が申し訳なさそうに言うと、カナは優しく微笑んでくれた。
洞窟の中を歩いているのに魔獣が出てこない事に違和感を覚えながら最深部に到着した。
俺達は魔獣にバレないよう隠れながら最深部を見渡した。
「魔獣全員がここの場所にいたのか。まるで俺達が来るのを分かっていたみたいだな。」
「ランクが高くなれば知能も高いのかもしれないね。あの数どうやって倒す?」
「ここは洞窟だし俺に考えがある。この場所は上に穴が空いているものの、空気の循環がかなり悪い。だから土魔法を使って奴らを閉じ込め毒魔法で一気に倒す。」
「わかった。でも、毒魔法で倒れない魔獣がいるかもしれないよ。」
「その時はもう肉弾戦しかないよ。」
俺は作戦を伝え、実行する準備を整えた。
「ウォール!」
俺が魔法を唱えると、洞窟の穴が全て塞がった。
俺は間髪入れずに毒魔法を使った。
「ポイズン!」
魔法を唱えた瞬間、すぐに洞窟は毒の霧で覆われた。
俺達に被害が及ばないように防御魔法を発動させ少し待つことにした。
数十分待ったところで魔獣の苦しむ声が聞こえてこなくなった為、土魔法を解除して毒霧が無くなるのを待った。
「ほぼ全滅だとは思うが一応警戒はしとかないとな。」
「そうね。どのランクの魔獣がいるか分からないもんね。」
俺達は警戒体制のまま毒霧が無くなったのを合図に防御魔法を解いた。
「やっぱりまだいたか。高ランクの魔獣ばっか残ったな。」
「ランク5のミノタウルスが10体、ゴブリンキングが3体だね。」
「やれるな?」
「もちろん。」
残った魔獣を確認したのち、戦闘体制へ切り替え、魔獣の方へ走った。
魔獣の近くに行くと、魔獣は俺達を囲むようにして向かってきた。
俺達は背中合わせになり、お互いを守りながら戦った。
「ヤミ!魔法をそんなに連発しないで!もたないよ。」
「わかってる!けど···。」
俺はカナの忠告を聞きながらも、怒りに身を任せて魔法を連発した。
両親を殺された恨みを晴らすように特大魔法ばかりを使った。
「はぁはぁ。なんとか倒せたね。けど、魔法を使いすぎよ。魔力ほとんど残ってないでしょ。」
「あぁ、もうほとんどない。わかってはいるんだけど、どうしてもな···。」
どうにかランク5の魔獣達は倒せたもの、まだ竜王はこの場所にはいなかった。
辺り一面探してみたが、気配が全くない。
「ヴオオオオオオオオ!!!」
地鳴りがするほどの声に驚き、俺達は音のする上を見た。
そこには大きく黒い竜が飛びながらこちらを見ていた。
「あれが竜王か?俺が知っている竜王はもっと小さくて赤い竜だぞ。」
「あれは竜王じゃない!黒竜王だよ!ランク6の魔獣なんかじゃない。ランク7の魔獣!」
カナは焦ったように教えてくれた。
ランク6の魔獣ですら、2人で倒すのは難しいと考えていたが、ランク7の魔獣と知り俺の中に絶望が生まれた。
「ランク7···。俺達2人で倒せるのか···。」
俺達の顔には一切の余裕がなくなっていた。
この戦いにより、俺達の運命が大きく変わる事になるとは思いもしなかった。
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