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第十九話:冒険者貴族
しおりを挟むギルドマスターの部屋に着くと、椅子に座るよう言われた。
「俺がパッと確認しただけでも、ランク7黒竜王、ランク6スコーピオン、ランク5ミノタウロス、お前達2人をランク6にするには十分過ぎるくらいの魔獣だな。」
「これだけの魔獣を倒せても犠牲を出してしまったんだよ。結局着くのが遅かったんだ。」
「そうか。」
「ただ今回は犠牲になったのは俺の両親2人だけだったから大きな被害ではないけど、俺にとってはな···。」
「そうだったのか。お前確か、レイ·ヤミと言ったな?」
「ああ、そうだ。それがどうした?」
「そうか。両親というのはアーサーとマリアか。」
「知ってるの?」
「そりゃもちろん。その2人もギルドに所属していたランク5の冒険者だったからね。」
「そうだったのか。」
俺は両親の昔話を聞きたい気持ちを押し切って尋ねた。
「ネームタグが変わるのか?」
「そうだ。ランク6の冒険者はお前たち2人を加えて十人になった。明日丁度ランク6の冒険者が集まる会議がある。それに参加するといい。」
「わかった。」
「それと、ランク6になると冒険者貴族になれる訳だが、冒険者貴族になると出来る様になることが多い。まずは名前のままだが、貴族になることが出来る。貴族になれば、奴隷を買ったり、奴隷解放したり出来る。また、色んな店で優遇される。そして、ただの貴族と違うところが何個かある。それは、国王に直接会いにいけること、伯爵と直接話せること、ギルドから依頼を受けなくても報酬が貰えることだ。国王と直接会えると言ってもこちらからは会えんがな。国王に呼ばれることで会うことが出来る。普通の貴族だと国王に呼ばれることなどないからな。あと、伯爵と直接話せるというのは、ランク6冒険者のほとんどが伯爵と契約を結び、それぞれの国の守護をすることが出来るからだ。この辺のことは明日また話そう。そして、ギルドから依頼なしで報酬を貰えるってことだが、いくつか条件はある。ギルドから月に何個か受けてもらいたい依頼を渡す。その報酬とは別で報酬を渡す。王都を中心としたこの国が危険な状態になった際は最前線で戦ってもらう。ランク6の冒険者が集まる会議には出席してもらう。まあ、これは強制ではないがなるべくな。そんなものかな。後は明日皆に聞くといい。」
「色々あってめんどうだな。まあいいさ。」
「では、これがネームタグだ。」
俺達はネームタグを貰うとギルドを出てビョウインへと向かった。
「こんにちは。予約の方はされてますか?」
「予約はしていないんだが、どうしてもユナに会いたくてな。冒険者貴族がユナに会いたがってると伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
受付嬢はすぐに戻ってきて、ユナの部屋まで案内してくれた。
「失礼します。冒険者貴族の方を連れてきました。」
「ありがとう。では、下がって良いぞ。」
受付嬢はペコリと頭を下げ、戻っていった。
「なんだ、少年じゃないか。ランクがあがったのか?」
「ああ、ランク6になった。明日また会えるとは思ったんだが、ユナにはすぐ報告しないといけないことがあってな。」
「報告しないといけないこと?」
「レイ・アーサー、レイ・マリア、両名死亡。俺が村に着いたころにはもう···。」
「な···うそ···でしょ?」
ユナは驚きながらも状況を理解したのか、膝から崩れ落ちてしまった。
「村民はなんとか守れたんだけど、2人は···。村を守るために必死に戦ってたそうだよ。」
「またか···。また私は大切な仲間が必死に戦ってる時に力になれなかったのか···。」
ユナは自分のことを責めるように呟いた。
「報告してくれてありがとう。今は1人にしてくれ。また明日会おう。」
ユナはそう言うと、椅子に座り頭を抱え込んでしまった。
俺達はそっとするように部屋を出て、ビョウインを後にした。
家に戻り明日の会議に備えてもう休む事にした。
今回の会議に参加する事で俺達のやりたいことに一歩近づく事になるとは思っていなかった。
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