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5 カインは激重
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昨日はどうやって帰ったのやら…何にも覚えていない。
とにかく動悸が凄かったのは覚えてるんだけど、一切落ち着かない。
今日は昨日とは違って、武器屋の店内は暇の極みだった。
なので、今は客がくるまで居住スペースのリビングでソファに座ってのんびりとしている。
そのせいか、ずっと昨日の事を考えてしまっている気がする。
「……抱きしめられるって…あんな感じなんだな…」
僕とあの人ではかなりの体格差があって、あの時は凄い包まれていた感じがあって、体温が溶け合っていた気もする…。
「…いやいや、何考えてるんだ僕は…」
変な感じだ。僕は少し体温が上がっている気がして無意識に服をバタバタと動かして、涼しくしようとしていた。
〇●〇
【カイン視点】
まただ。
今日、ミサキの様子がずっとおかしい。
朝からずっと店は暇なのに、落ち着かない様子で店内を動き回っていたり、突然座ってはぶつくさと独り言をつぶやいていたり…。
そういえば、ミサキは昨日の夕方に騎士のケイトという人と二人で出かけていた。
何かされたのだろうか。
俺のミサキに何を…?
「ミサキ」
昨日何かあったのかと本人に聞く方がはやいかもしれないと思った俺は、リビングで一人、独り言を言いながら服をばたつかせているミサキに声をかけてみた。
ミサキがこちらに振り向いて「なに?」と返事をしてくれる。
しかし、振り返ったミサキは顔が真っ赤だった。
これほどまでに赤面するミサキを見たのは初めてで、俺は何だが悔しくて少し落ち込んだ。
俺が最初にそういう顔にさせたかったのに。
ダメだ、こんな汚い感情は表に出さないようにしないと、そうじゃないとミサキに嫌われる。
表情を何とか取り繕って、ミサキにいつも通りの笑顔を向けた。
「今日はまったく落ち着きがないな、昨日の夕方にケイト様と何かあったのか?」
「え、いや…落ち着かないのはちょっと暑いからで…! 昨日はただアイスを奢ってもらって食べただけだよ」
「…ふぅ~ん、そうなのか」
嘘だ。何年一緒にいると思ってるんだか。約18年だぞ。子供のころからお前を見てきてるんだからな。
「あー、そうだ、カインも暑いだろ? 今、窓開けるよ」
「…あぁ」
「いやー最近急に暑くなってきたよな? もう夏かな?」
「…ミサキ」
リビングにある窓を開けて寄りかかっているミサキに近づいて、手を重ねた。指と指の間に手をすりこませると、手の絡まりに動揺したのか、ミサキが離そうとする。
逃がさないように強く握り直して、じっと顔を近づけた。
ミサキの少し落ち着いた赤色の頬が、また濃く色づいていくのを見て、俺で上書きできたような気がして歓喜した。
少しは意識すればいい。ミサキは鈍感すぎるから。
「…う」
「…嘘ついてるだろ?」
少し間が空いて、しばらく見つめ合った後に、ミサキがやっと口を開いた。
「…はい…」
「それで? 本当は何があったんだ?」
「え、えと…その…なんていうか」
「うん?」
「だ、だき、抱きしめられて…」
「は?」
「それで、帰りは手を繋いで…」
「…」
まさか、そこまで体の接触を許したのか…。
あんな出会ったばかりの男に…?
「あ、いや、まぁ、それだけだからさ…他はなにもしてないし」
「そうでないと困る…まぁミサキは警戒心がないもんな…今度またあの人が来たら俺もついていこう」
「え…くるの?」
「じゃないと、また変な事されるだろ」
「…そうかな?」
「そうだ。だから、絶対に二人だけで出かけるなよ?」
「分かったよ、分かったからそんなに顔近づけないでくれ…僕、たぶん真っ赤だろ? 恥ずかしいから見ないで」
「…確かに、赤いな」
「暑いからだし」
「ハハ、可愛いヤツ」
「カインまでノエルみたいなこと言うじゃん…!! むり、絶交だぁ…」
「絶交は許さないぞ?」
「可愛くないからな!! 僕は!!」
「ハイハイ」
〇●〇
【ノエル視点】
リビングでカインとミサキが窓際で恋人繋ぎをしていた。しかも、向き合って、だ。
カインのミサキへの友愛を超えた感情には気づいていたがこれほどまでとは思っていなかった。
邪魔をしないように踵を返して、工房の方へと戻り出す。
「まったく、こんなとこで…」
ミサキは確かに可愛い。女の子のミユ―と変わらないくらいの愛らしさが漂っているのだ。
カインが惚れてしまうのも無理はないだろう。
しかし、何年もミサキが帰宅する時に自分が暇だったら、コッソリ後をついて行って無事に帰宅しているのを見届ける習慣はやめてほしいものだ。
カインが毎回帰って来ては「今日もミサキは無事に帰宅したよ」とか、「今日は変な男に声をかけられそうになっていたよ、後で(男に)きつく言っておかないとな」とか色々と聞かされる僕の身にもなってほしい。
ミサキも大変だな。
あんな激重男に愛されてさ…。
「そういえば、昨日は騎士と出かけてたな」
「そうよ、ミサキ、アイス買ってもらったみたい!」
「うわぁ!! ミユ―!?」
「何か考え込んで歩いてたでしょ! 危ないよぉ~」
「いやぁ、ハハ、ごめんごめん」
「ミサキたちはあっちにいるの?」
「いるけど、お取込み中だから、工房の方にいくぞ~!!」
「えー!! アイスについて聞きたいのに~!!」
「ワハハ、ダメ―!!」
僕はミユ―の脇下を両腕で掴んで、まるでタ〇タ〇ッ〇の名シーンようにして、ドタバタと工房の方へと走った。
ミユ―には悪いが、今は入れないし、入ったらカインに殺されそうだ。許せ。
「いや~!!」
とにかく動悸が凄かったのは覚えてるんだけど、一切落ち着かない。
今日は昨日とは違って、武器屋の店内は暇の極みだった。
なので、今は客がくるまで居住スペースのリビングでソファに座ってのんびりとしている。
そのせいか、ずっと昨日の事を考えてしまっている気がする。
「……抱きしめられるって…あんな感じなんだな…」
僕とあの人ではかなりの体格差があって、あの時は凄い包まれていた感じがあって、体温が溶け合っていた気もする…。
「…いやいや、何考えてるんだ僕は…」
変な感じだ。僕は少し体温が上がっている気がして無意識に服をバタバタと動かして、涼しくしようとしていた。
〇●〇
【カイン視点】
まただ。
今日、ミサキの様子がずっとおかしい。
朝からずっと店は暇なのに、落ち着かない様子で店内を動き回っていたり、突然座ってはぶつくさと独り言をつぶやいていたり…。
そういえば、ミサキは昨日の夕方に騎士のケイトという人と二人で出かけていた。
何かされたのだろうか。
俺のミサキに何を…?
「ミサキ」
昨日何かあったのかと本人に聞く方がはやいかもしれないと思った俺は、リビングで一人、独り言を言いながら服をばたつかせているミサキに声をかけてみた。
ミサキがこちらに振り向いて「なに?」と返事をしてくれる。
しかし、振り返ったミサキは顔が真っ赤だった。
これほどまでに赤面するミサキを見たのは初めてで、俺は何だが悔しくて少し落ち込んだ。
俺が最初にそういう顔にさせたかったのに。
ダメだ、こんな汚い感情は表に出さないようにしないと、そうじゃないとミサキに嫌われる。
表情を何とか取り繕って、ミサキにいつも通りの笑顔を向けた。
「今日はまったく落ち着きがないな、昨日の夕方にケイト様と何かあったのか?」
「え、いや…落ち着かないのはちょっと暑いからで…! 昨日はただアイスを奢ってもらって食べただけだよ」
「…ふぅ~ん、そうなのか」
嘘だ。何年一緒にいると思ってるんだか。約18年だぞ。子供のころからお前を見てきてるんだからな。
「あー、そうだ、カインも暑いだろ? 今、窓開けるよ」
「…あぁ」
「いやー最近急に暑くなってきたよな? もう夏かな?」
「…ミサキ」
リビングにある窓を開けて寄りかかっているミサキに近づいて、手を重ねた。指と指の間に手をすりこませると、手の絡まりに動揺したのか、ミサキが離そうとする。
逃がさないように強く握り直して、じっと顔を近づけた。
ミサキの少し落ち着いた赤色の頬が、また濃く色づいていくのを見て、俺で上書きできたような気がして歓喜した。
少しは意識すればいい。ミサキは鈍感すぎるから。
「…う」
「…嘘ついてるだろ?」
少し間が空いて、しばらく見つめ合った後に、ミサキがやっと口を開いた。
「…はい…」
「それで? 本当は何があったんだ?」
「え、えと…その…なんていうか」
「うん?」
「だ、だき、抱きしめられて…」
「は?」
「それで、帰りは手を繋いで…」
「…」
まさか、そこまで体の接触を許したのか…。
あんな出会ったばかりの男に…?
「あ、いや、まぁ、それだけだからさ…他はなにもしてないし」
「そうでないと困る…まぁミサキは警戒心がないもんな…今度またあの人が来たら俺もついていこう」
「え…くるの?」
「じゃないと、また変な事されるだろ」
「…そうかな?」
「そうだ。だから、絶対に二人だけで出かけるなよ?」
「分かったよ、分かったからそんなに顔近づけないでくれ…僕、たぶん真っ赤だろ? 恥ずかしいから見ないで」
「…確かに、赤いな」
「暑いからだし」
「ハハ、可愛いヤツ」
「カインまでノエルみたいなこと言うじゃん…!! むり、絶交だぁ…」
「絶交は許さないぞ?」
「可愛くないからな!! 僕は!!」
「ハイハイ」
〇●〇
【ノエル視点】
リビングでカインとミサキが窓際で恋人繋ぎをしていた。しかも、向き合って、だ。
カインのミサキへの友愛を超えた感情には気づいていたがこれほどまでとは思っていなかった。
邪魔をしないように踵を返して、工房の方へと戻り出す。
「まったく、こんなとこで…」
ミサキは確かに可愛い。女の子のミユ―と変わらないくらいの愛らしさが漂っているのだ。
カインが惚れてしまうのも無理はないだろう。
しかし、何年もミサキが帰宅する時に自分が暇だったら、コッソリ後をついて行って無事に帰宅しているのを見届ける習慣はやめてほしいものだ。
カインが毎回帰って来ては「今日もミサキは無事に帰宅したよ」とか、「今日は変な男に声をかけられそうになっていたよ、後で(男に)きつく言っておかないとな」とか色々と聞かされる僕の身にもなってほしい。
ミサキも大変だな。
あんな激重男に愛されてさ…。
「そういえば、昨日は騎士と出かけてたな」
「そうよ、ミサキ、アイス買ってもらったみたい!」
「うわぁ!! ミユ―!?」
「何か考え込んで歩いてたでしょ! 危ないよぉ~」
「いやぁ、ハハ、ごめんごめん」
「ミサキたちはあっちにいるの?」
「いるけど、お取込み中だから、工房の方にいくぞ~!!」
「えー!! アイスについて聞きたいのに~!!」
「ワハハ、ダメ―!!」
僕はミユ―の脇下を両腕で掴んで、まるでタ〇タ〇ッ〇の名シーンようにして、ドタバタと工房の方へと走った。
ミユ―には悪いが、今は入れないし、入ったらカインに殺されそうだ。許せ。
「いや~!!」
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