マジック サーヴァント マイスター

すあま

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15 岩塩探求と並列思考会議(Rock salt exploration and parallel thinking conference)

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 召喚した森蟹を捕まえ掲げてたコボルド達がこちらに向かってひれ伏した。
 言葉が通じなくてもこれはこれで結構いけるもんだ。
 安心したのも束の間。どうやら僕の分は無いらしい。

 え? なんで、召喚した張本人の分が確保されてないんですけど?
 神様じゃないから、霞食べるとか無理なんですけど?
 仕方ないから、後で自分の分は召喚し直すか。

 ヘルが仕事してくれないと言葉が通じない。うーん。
 経験もないし、知らない事が多すぎる。いつでも書庫の知識が引き出せたなら最高だな。
 そう考えて書庫検索抽出魔法式を急造で組んで、並列思考達に丸投げる。試しにコボルド語を書庫から捜索サーチさせてみた。

 しかし、そんな言語ないと言う結果。残念だ。
 悔しいがやはり、洞窟ココを1人で2日以内に脱出するには無理がある。水と食料の確保をしなければいけないのに、ヘルは拗ねたまま。かと言って精気を少し与える事がどれ程危険か?

 インプの特性とこの先考えられる自身の成長に訪れる人の生態を考えると、そこには麻薬的な依存関係が発生し、食い潰しあう可能性が存在する。極めて高い確率で。
 ……仕方ない。強制力行使の執行もやむを得ないかも知れない。

 その時に閃いた。そもそもヘル達悪魔族ってマトモな食事した事あるのだろうか?
 精気とか味気無さそうだし。もしかしたら味の楽しみを知らないのかもしれない。
 よし。食事、否、料理をさせる為に簡単な味付けから試してみよう。

 そうなると塩が必要だな。岩塩の調達をコボルド達にさせるか。

『ヘル、お仕置きが残ってたね。お仕置きとして強制力使うよ。コボルド達にしてもらいたい事があるんだ』
「ちょっ! そんな使い方ずるい!」
「じゃぁ、協力してくれる?」
「……仕方ない……」

 よほど、強制力の行使の方が嫌なのだろう。ともあれ良かった。

「コボルド達に岩塩を探させて」
『了解、コボルド共、岩塩を探して来い』

 ヘルがコボルド達に告げる。
 コボルド達が右手を拳にして右前腕を水平に応えた。
 バラバラだが、誠実さが伝わった。

「ヘル、ほら、ちゃんとコボルド達が言うこと聞いてくれたでしょ」
「ふぇ? ……知るか。いつ言うこと聞かなくなるか分かったもんじゃない」

「ま、塩茹でのカニ料理を食べてから考えよう」
『え? 塩茹で? それは、何ですか?』
『何となく思ったけど、悪魔族はやはり料理はしないの?』
『料理? そんなの私ら兵民悪魔には許されてない』
『な、ナルホド。それでその味覚。魔力変換出来る消化器官の癖に食べ物よりも精気チョイスはその所為か』
『精気こそ最強の補充エネルギーです』

『マジでそこは変えていこう。コボルド達全員に伝えられる様にしてくれる?』

 ヘルは、反対意見を言わなかったが顔に不満が出たまま、コルベルトに命じる。

『コルベルトよ。コボルド達で全員手を繋ぎなさい』
『イエス! マムコボ!』

 まむ? 何処からそんなワードを覚えるんだか。まぁ、いい。
 コボルド達全員が輪になって手を繋いだ。ヘルは発動キーワードを唱える。それを見守りながら、サーヴァントに次は何を付加させるか考える。

「“マジック・リバイバー”、“テレパス2”、“リバイバル・オン”」

 ヘルは、コルベルト経由で魔法を発動させた。
 かかった先でのコボルド経由で"繰返し作業ループロジック魔法"が発動されて全員にテレパス2がかかっていく。

 今見た魔法の発動方式を覚えて置く。さっき使ったオリジナルのリバイバル魔法そっくり。なのに魔法陣なし、魔法式のみ。こういうのは、改造したら応用が出来そうでワクワクする。魔法がかかり終えたのを確認し、コボルド達にして欲しいことを口にする。

『お前達に命令する。捕まえた森蟹は塩茹でにする。この近くで塩は取れないか?』
『塩って、何ですコボ?』

 やはりそう来たか。どう見てもナマ食しか知らない犬原人だもんな。

『えぇと、塩は塩だ!』

 ヘルが言うその様子を見て、思わず目に手を当てて天井を仰ぐ。
 うん。皆、味の概念、美味いか不味いしかないもんね。
 ボクガワルカッタ。
 岩塩とかありそうなんだけど……

『邪(よこしま)な女神様も知らんコボじゃね?』
 ※ぼそりニュアンス。
『誰だ! 我を侮辱するか!』

 平伏する全コボルド。
 耳まで真っ赤になるヘルを慌てて手で制しながら、全員に塩味のイメージを送る。

『ゴメン、皆は知らないんだね。こんな味の岩は知らない?』

 ヒット感。同じイメージを返して来たコボルドが居た。左目を失ったシェパード顔だ。厳つくカッコいい。

『オレ、それ知ってるコボ』

 当たりだ。父さんが、昔持ち帰って来た綺麗なクリスタルが塩の塊って驚いた事が役立った。当てずっぽうだったけど。この付近にあったんだ。

『よっし、じゃ、ヘル、探索と料理よろしく』
『料理?』
『大丈夫、レシピは鍋を作って、その鍋に水を入れて塩を入れて森蟹を入れて、鍋の下から火で炙るだけだ』
『それだけ!?……鍋は?』

『それだけ。鍋はコバルト鉱石で作ってくれれば良い。後で作るとこ見せてもらうよ。塩の量は岩塩削りながら味を調整してね。まぁ、味の染み込み具合で森蟹の味が変わるから関節に切れ目を入れておくと良い』

 イメージと共に図解説明してコボルドにも分かりやすく教える。
 味のイメージも添えるのを忘れない。

『マスター、コレ、我々には禁忌なんですけど』
『うん? 悪魔って人で同じようなことすんじゃないの? 蟹を茹でて美味しくいただくだけだけど?』
『だからー、下級悪魔はー』
『あー、却下。もう、お前らは僕の所有物だから悪魔族名乗るな。これ命令ね』
『『『『『『『『『『『え(コボ)』』』』』』』』』』』

『何を意外な顔してるの? 美味しい蟹の塩茹で食べたくないの? 食べたかったら、その為に働け』
『食べても怒らないコボ!?』
『僕は悪魔族のルールなんか知ったこっちゃ無いから怒らない』

「「「「ウワオオーーーッ」」」」

 感極まったのか何匹かのコボルドが遠吠えを始めた。

『うるさいっ』
『ごめんなさいコボッ!』
『僕は、まだまだ読まなくちゃいけないデータの処理で忙しいんだ。敵が攻めて来るような事になるか、塩茹での準備が出来るまで話しかけるな。ヘル、コボルド達の行動を任せた』

 そして並列思考から上がって来た新しく作られた書庫検索ライブラリ・サーチを改造することに没頭する為に、コルベルトの後ろについて半覚醒状態になって歩く。

『ご無体な』
『取り敢えず、岩塩取りに行くコボ』
『あれ、美味そうだったコボ』
『悪魔貴族様は、あんな美味いものを食べてたコボ?』
『ずるいコボ』

 口々に勝手な言い草がのぼったが、岩塩採掘が開始された。

 ◆

 コルベルトの後ろを行く視界に幻影管理紙面ミラージュ・コンソールを展開する。
 書庫検索をコピーして、それをいじくり倒す。
 うーん。いじくり辛い。あぁ、そうだ、本の目次や題名みたいに整理しよう。

 コメント文をコマンド群の要所に追加して行く。ただ単に後から機能追加や発見した効率の良い式に差し替え可能になる様にひたすら単なる見出し文としてコメントを追加して行く。
 うん。整理しやすくなった。

 一旦こちらを正として現役サーチに反映して更にバックアップコピーしてながら改良して行く。
 結果、知りたい情報を直ぐに引き出せる常時起動の自動検索が出来た。
 問題は書庫のデータがほとんど画像なので幻影__ミラージュ__#画像解析通さないといけない。

『本体__ウル__#、何してんの』
『そう言うのはこっちに割振れば良いだろ』
『楽しそうなモノ作ってるなよ、そんな暇あるなら差分記憶並列化して貰うぞ』
『差分記憶並列化?』
 自分のコピーが説教して来た。

『今までは全記憶を焼き直ししてたけど全部する事ないじゃん?』
『だから、差分記憶をそれぞれピックアップしてみんなでローテーション組んでそれぞれの記憶を共有させます』
『バックアップも兼ねてね』
『バックアップ? 記憶を?』

『実は、僕らコピーエーテルフィルムは人格に若干の差異がある事が判明してる』
『!? なんで同じ魂からコピーしたフィルムに差異が出来るんだ?』
『まぁ、聞いてよ。魔素に意思__エーテル__#を与える事で様々なベクトルエネルギーが生じるコトが関係してるのか、野良魔力マナ拾ってコピーすると前に使った存在の意思が混じって劣化コピーが生じるみたいなんだよ』
『それが統合時の失敗に繋がってた?』

『僕ら、大脳を持ってない。だから、生存本能による感情が抜け落ちてて、混ぜ物だろうと純粋なコピーであろうと何とも思わないけどね』
『もし、人体や生態で再現すると存在本能が強くなる可能性がある』
『なるべく自分の完全複写体は作らない方がいいと思うよ。下らない喧嘩になる可能性がある』
『肝に命じて置くよ。でローテーションの差分記憶並列とどう繋がる?』

 複製した自分に襲われる物語りは古くからあるが……なるほど。

『あぁ、差分記憶だけなら1、2分で並列が終わるんだよ』
『短い時間なら差分も少ない。所要時間も短く済むから、ローテーションが組める』
『記憶差異が少ないお陰で得た知識から効率化も計れた。お陰で第三階梯がもう直ぐ終了するよ』
『……本気で?』

 速読術か? 速読術による成果か?

『冗談言わないの分かってるだろ? そろそろ冗談の一つや二つ言えるよう覚えた方が良いとも思うけど』
『ま、そんな訳で、第二、三階梯は差分が長いから分割して統合してく』『ちょっと本体をこのフェオに貸して一分だけ、統合に全リソース回してよ』
『分かった。じゃ、よろしく』

 自分の分身思考達が優秀すぎる件。さっさと第二、三階梯のパッケージを覚えてしまおう。フェオに任せた途端誰かに勝手に体を動かされてる変な感覚にとらわれる。並列処理の為意識を手放した。

 ◆

 復帰した。自分の並列思考に起こされるの変な気分だ。

『どうだ。第二階梯のパッケージは?』
『なんか思ったより呆気なくて実感無いな。その癖読んだ記憶もあるし』

 大変便利だが、コレに慣れるべきか一瞬悩む。まぁ、考えようによっては不老不死を手に入れたも同然なのだが、それをやると多分、生き物として生殖能力が無くなる。一応、子供は作れるようにしておきたい。残して来たも気になるし。後8年の間に、ちゃんと一人前になって迎えに行きたいとも考えてる。って、いやいやいや、違う違う今はそれどころじゃ無い!

『いや、僕だから分かるけどさプライベート環境筒抜けにするのだけは避けた方が良い』
『ヘルに知られたら面倒なことになりそうなコトだしね』
『ま、早いとこやるべきコト済ませる為の並列環境って思えばいいだけでしょ』
『確かに』

 自分に説得された……。まぁ、いい。サッサと魔導を極めて剣士になる! 生き残る為にそのいち。サーヴァントの改良だ。
 折角、コルベルトとの戦闘データが手に入ったのだから。先ずはマナ・アドプションを……え?

 マナ・アドプションのファイルを出そうと意識した途端、書庫検索が結果に出して来た一覧を見てびっくりした。
 テキストファイルになってるそれを開いて見る。

 中身は師匠が魔法化したアーティファクト・デバイスの術式! やった! 凄いです、師匠!
 マナ・アドプションより数段上を行く出来です。持続魔法ではなく、瞬間発動と瞬間効果で持続し続ける魔法を実現し、しかも体外でのエーテルタンクも構築する為のプロセスが丁寧に書かれた設計書だった。
 まさに芸術品と言わざるを得ない出来とか素敵過ぎる。

 意思、魂のカケラ。生命の根源たるモノをエーテル。
 周辺のあらゆる低級霊をサモン系コマンドで引寄せ、エーテルフィルムを中和、吸収、エーテルタンクに保存。そこらに飛んでるマナからエーテルを抽出するのではなくゴーストが再構築したエーテルフィルムそのものを分解吸収するのだからマナより省スペース且つ運用効率がいい。

 生前魔法を使う為の余剰の魂源エーテル……MPに乗った意思エーテルは、死後に体に残る。本来の魂が後に何らかの未練があると余剰意思エーテルに引き継がれ、まるっと余剰分MPがゴースト化する。それが低級霊。

 迷惑の元凶に成り果てたエーテルなら再利用してもいいよね? 流石、師匠。目の付け所が違い過ぎです。
 サモン・ゴーストを覚えさせた理由がやっと理解出来た。
 マナ・アドプションは枯渇した状況下では、少しのマナで低級霊を召喚し、エーテルを補充出来る魔法でもあった。

 魂は時空をも超越し、分裂さえ出来ると結論付けられている。しかし教会では輪廻転生と時空も超越することは受け入れられても魂の分裂や残留思念は信じられていない。
 この魔法は教会に知られたらヤバい代物だ。

 だからと言って使わないことはないのだが。
 ターンアンデットは、その実エーテルを浄化と言って霧散させるだけの代物だったのだ。
 さまよえる魂を天へ返す? その意義を盲信するのが目に見える。

 魔法も奇跡も技術だ。道具と変わらない。善悪など使う側の心次第が真実なのだと僕は思う。が、そんな概念は彼ら信奉者には通用しないだろう。理屈が通用しないのだから。

 さて、脱線はココまでにしよう。

 取り敢えずリルナッツのマイナーチェンジを行う。中央胸部背面側首の真下に2mmのアーティファクトデバイスを構築。左右の胸部と両足大腿部のパーツにマナ・アドプションを構築。アーティファクト・デバイスの前面にマナ・プールを構築。マナ・プールを介してエーテルを抽出しデバイス内のエーテルタンクへ蓄積させるように配置。

 作動させてみて上手く行くことを確認。一体でも最大四つの魔法の並行発動が可能になった。五体で頑張れば、ファイアブリットを毎秒十発三〇秒叩き込める事も出来そうだな。……そんな無駄撃ちする場面にならないと思うけど。

 アーティファクト・デバイスの構築で新しくアーティファクトの作成の概念が変わった。コレを並列思考に共有しよう……。



 ____________________
 アイルス手記

 ※パッケージ等は割愛します。

 ・ヘルの魔法メモ
  マジック・リバイバー
   所謂、魔法の繰り返し発動用魔法。こんなもの使った
  ら大抵はオド枯渇で卒倒するので広く使われることはな
  いと思われる。
____________________
 【ステータス】
 アイルス・プリムヘッツ(7歳)
 弟子32日
 ◆才能:※並列思考には脳が無いので更新なし
 アカシック・リーディング(無自覚)
 最適設計演算
 魔力補助精密動作筋肉制御
 失敗検証
 検証データ予測演算

 ◆才能→技術化(ユニークスキル→ユニーク複合スキル)
 魔力制御法+魔法最適化→
 マジカル・オプティマイザ→
 マジカル・コンビネーション・オプティマイザ:Lv 3 New
 頭脳使用法:Lv 30(並列処理により上限解除)
  記憶向上+関連記憶→フラッシュ・デフラグ・フロー
  動的空間把握処理能力+予測演算+
  動体視力処理速度連動加速→フラッシュ・シミュレータ
  夢想実現化演算→ブレイク・ダウン・マイル・ストーン
  ※頭脳使用法で纏められているのでLv 表示なし
  ※並列思考に脳は無くともアイルス自身のリソースは使えるので
   パワーレベリングが出来る。

 ◆技能:
 見稽古(分析、考察)Lv 1
 標準語(会話、読み書き)
 遺跡語(読み書き)
 精霊語(読心会話)
 高速切替思考処理
 並列意識連携処理グリッド・シンクLv 1→5
 魔力察知マナ・センシズ Lv 3
 魔法式改造マジック・カスタム Lv 4→6
 魔法上級改造ハイ・カスタム(並列連動式等)Lv 4→6
 混成魔法ミクスド・マジック Lv 5→6
 物理造形設計技術(木材、石材)Lv 3
 研磨整形技術Lv 5
 ※関節部分の精密さを追求した結果。
 スキルカスタム Lv1→3
以下魔法複合技術 New
 短時間睡眠術メンテナンス・リブート New
 記憶整理処理メモリー・デフラグ・フロー New
 共有記憶同期メモリー・シンクロ New



_____
 いつもお読みいただき、ありがとうございました。
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感想 4

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