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第20話 刺客とヴェアヴォルフ1(Assassins and W erewolf 1)

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『魔法戦士のコボルド?』
『レアケースでコボルド・シャーマンはいたらしいけれど、魔法戦士はいないでしょ?』
『いや、確かにいないけどなんか弱そうだな』
『実際、魔法を行使するのは僕の下位互換コピーだから、操縦者と言うか憑依者と言うか……コボルドが使おうがサーヴァントの攻略難易度は変わらない。本体を叩かれてもぶっちゃけ自立行動できるし』
『怖っ!? なんだそのゴーレムもどきは!』

 ゴーレムってそんなモノなんだな。聞いた限りコストばかり掛かる無駄の多いアーティファクトに思える……。

『仇を討ってくれる武器と思えば良いよ』
『そう言う事でなくだなぁ。乗っ取られて敵に使われたりしないか?』
『僕自身が洗脳とかされたらあり得なくも無い。それ以外は完全消滅以外は今のとこ思いつかないかな』

 口ではこう言ったものの思わぬ落とし穴や弱点はあるかもしれない。弱点等が明らかになるのは、これからの運用次第かな。

『で、このクロースとやらを着せて仮魂接続を行えば、自分の体としてあれを使えるんだな?』
『そう。魔法はキーワードコマンド形式。使える属性を上の視界から選んでも良いし、直接リクエストしても良い』
『なるほど。じゃ、早速仕事がある。俺のジェンドブ・ガディエス終焉の女神には、このインターフェイスとかっての扱えるようになってるんだよな?』
『ん? じぇんどぶ? 何?』
『ジェ・ン・ド・ブ・ガ・ディ・エ・ス! 俺様専用のリルナッツに付けた名前だ! 空気読めよ!』
『いや、解らないってば。使えるよ。でも、なんで?』

 ネーミングのセンスには、この際突っ込まない。

『ゴブリンが二体近付いて来る。コルベルト、集落迄の地図を出せるか? 大まかで良い』
『了解です』

 コルベルトのイメージしたマップが全員に共有され、そこにゴブリンを示すマーカーも共有表示された。

『恐らく様子を見に来たんだな。パーツが出来ている者から組み上げる。岩塩採掘組はそのまま待機、組み上がったら、ヘルのサポートに回れ。出来るだけ時間を稼いでくれ』

 ゴブリンにしては反応が早い。定期的な連絡要員なら良いがそうだとしても指揮している者がいる。やはり、眠らせたゴブリン達の視覚か何かしらの感覚器を共有させてた可能性が高い。こちらが出来る事は敵も出来得ると覚悟した方が良いようだ。

 並列思考フェオとソーンにデミルス制御でリルナッツを使い、砂つぶを並べて人型にした簡易体サーヴァント"サンド・グレイン"を急遽作成依頼。出来たサンド・グレインもデミルア制御でサンド・グレインを次々と作成させる。クフィーリアには出来たサンド・グレインへ記憶とアーカイブのバックアップを兼ねたコピーを依頼。

 並列思考アンスールには引き続きインターフェイスの調整を頼んだ。
 僕自身がコルベルト達のヴェアヴォルフを起動させて回る。岩塩採掘組へ向かわせたリルナッツ二体は弓を渡し、一人を説得込みで強制睡眠学習にして、サンド・グレインを作成させ、制御をソーンに任せた。この時岩塩採掘組にはまだヴェアヴォルフのパーツが揃ってなかった。

『居たぞ。しかしコイツは……ホブゴブリンだが妙だ。ヤケに細身で……』

 そのホブゴブリンは、手が長く細身で腹は膨れ、栄養失調特有の体つきそのままの風体をしていた。腰布しか纏わず、必要最低限の筋肉しかない体つきの癖に素早く動き、天井に張り付いていたヘルのジェンドブ・ガディエスが掴まれた。

『うわ!? なんだ、気持ちわり"スリープ"!』

 ヘルがテレパスリンク内で叫び、半ば脊髄反射の如く眠りの呪文を放った。にも関わらず、栄養失調ホブゴブリンの眼前で波打つ陽炎が現れて魔法がかき消された。

『!? 手の感触がキショい!』

 ヘルのピンチだ。反射的にジェンドブ・ガディエスのデミルスにコマンドを出した。瞬間、指の隙間を縫って出た電子の幅まで細くしたハイヒート・ライン・バリアを生成。そのまま指を切り飛ばして脱出する。序でにスピリット・スキャンでテレパスリンクの様式を見ようとした。

『きゃんっ!』

 ヘルが悲鳴をあげる。呪的な何かに殴られたようだ。カウンター・マジックの類か。

『ヘル、大丈夫か!?』
『大丈夫。攻撃魔法だったら、やばかった。ありゃ上位古代語ハイエンシェントだった』
『はい えんしぇんと? ほとんど読めなかったけど他にも魔法言語があるの?』
『ある。つまり俺様よりも上位悪魔がバックにいるってことになる』
『おっと、それはヤバいかも知れないね』

 二体表示の筈の敵が、ジェンドブ・ガディエス視界内で一体・・しか・・#確認出来_・・・・__#ない・・

『ヘル、見えてる視界に害意探知!』
『分かってる』

 僕のテレパスが伝わり切る前に赤い光の球が現れる。右手指全部を切り落としたホブゴブリンも赤く染まる。

『なんでコイツノーリアクションで左手で襲って来れるんだ!?』
『操られてんだ! 恐らく、アイツらは今サーヴァント並みの扱いでしかない』
『生き物を!? 可能なのか?』

 言いながら、作業を続ける。やっと一体目のヴェアヴォルフが起動し、立ち上がった。

『使い魔契約だ。コルベルトにもやっておいた方がいいぞ。そんな事より早くしろ! どうにか避けてるがそんなに保たねーぞ!』

 ホブゴブリンが指のなくなった右手で叩き潰そうと何度か振るって来た。全て躱し相手を観察するがどうやら疲労による動作の鈍りもなさそうだ。ギリギリ構成の筋肉にしか見えないのに。 すでに肉離れを起こしていてもおかしくないにも関わらず、素早く右手のみで攻撃してくる。

 そして5回目の攻撃。左手で攻撃して来た。その手には20cmもない木の根が握られている。それを叩きつけてきた。余裕で躱し、もう一体の赤い光を見る。コルベルトの肩を叩いて、起動したばかりのヴェアヴォルフを現場へ走らせる。

『武器はショボいが気を付けろ。今、コルベルトを向かわせた』
『見えない奴が動いた! ガディを無視して進む気だ!』

 コルベルトだけでは対処できない可能性もあるか?念の為増援を頼もう。

『出来るか?』

 毛で目が見えないチャウチャウ顔のコボルドを見て言う。さっきまで寝ていた弓を与えたコボルドだ。チャウチャウアーチャーは力瘤を作って見せて応える。

『爪以外の武器が欲しいなら作成する。イメージをくれ』

 少し考えるチャウチャウアーチャー。可愛く小首を傾げるマッチョ犬原人。

『これ……』

 提示されたイメージは、歪な十字型のハンマーにしか見えない。いや、文化を持たないコボルドがハンマーを見た事ないだろうに。弓じゃないんだ。しかも、伸び縮みするとかどんなぶっ飛んだ発想だよ。しかも天辺尖らせてるって……これ、フレイル・ハルバードか!? 洞窟内でこんなもの考えるとか……コイツ、バカなのか天才なのか……いや、この状況なら天才だな。即座に両手の三本の爪を集約させて右手に集め、望む形にする。ただし鎖で繋ぐようなものじゃなく、細い糸で繋ぎ一つのオブジェクトとして済むようにした。使い方のイメージを送る。

『おぉ!?』

 チャウチャウアーチャーは、チャウチャウ・フレイラーとなった。その使い方をちゃんと想像していなかったらしく、そのイメージを見たチャウチャウ・フレイラーは驚きつつも、その使い方に感動していたようだ。

『じゃぁ、こっちに向かって来る奴はよろしく』
『オレもアニキと一緒に早く戦いたいコボ』

 チャウチャウ顔した他のコボルドが言い出した。居残り組で、まだ強制睡眠学習をしていない最後の子だ。

『アニキばかりがいつも頼られるコボ! オレだって戦えるコボ! もう一人前コボ!』
『よし、分かった。お前の兄と同じ能力を与える。だから、今は待て』
『そうやっていつもアニキばかりが贔屓されるコボ!』

 あー。これ面倒臭いコンプレックスだな。贔屓でもなんでもなく物理的な順番が原因なのを我慢出来ない弟とか妹の持つアレだ。経験ある。面倒だから師匠の教えも記憶の一部に入れるか。教養知識も並列化で皆のステを上げてしまおう。そうすれば自分のコントロール外で悩む事も無くなるだろう。無駄な時間と気付くまでの周りを巻き込んだ無駄率を省かせられよう。

『分かった。"クリエイト・サーヴァント"』

 丁度、出来上がったコバルト鉱石になったパーツを並べヴェアヴォルフを起動させた。そのままデミルアの基礎を上書きする。

『やったコボ! これで……』

 強制睡眠学習と言う名の記憶のコピーを開始した。チャウチャウ・フレイラーの弟は、その場に尻餅をつくと眠りに入った。"見下すデメリット"は、相互で理解がないと受け取り側の感情で簡単に見下されていると受け取られ易い。二つの違いは相手との将来の関係性を考えているかどうかにもあるが、大抵は僕も含めて経験の少ない個体は判別しにくい。そして、知性が未熟な内は目の前の事で手一杯になりがちだ。逆に言えば、自分で予測出来るまで色々と教えこめばいい。分別もそれでつくだろう。

『コルベルト、ヘルを助けに行ってくれこっちに来てる奴は後続に任せろ。頼んだぞ』
 その場に居るコルベルトとチャウチャウ・フレイラーに戦闘を託す。僕は、サンド・グレインの作業状況を見てから三体目のヴェアヴォルフ起動に取り掛かる。

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 アイルスがやらかしてる事や本筋には出にくい情報。

 ◆パッケージ・マジック第四階梯を学習再開。
 ※パッケージ・マジック詳細等は割愛します。

 ・魔導具に備えた魔法メモ
  イメージ・ブレード(変則ブレード・クロー)
   妄想大爆発を体現した武器魔法シリーズ。
  マジック・オブジェクトで作るヴェアヴォルフの腕
  に三本の爪、脚先には爪先部分付きで三本の爪を
  作り出す。熱魔法は通常なし。

 ・オリジナル・マジック
  スピリット・スキャン
   エーテルを包む不可視の魂の膜の表面を読取る
  魔法。其処には意思の発露の源が刻まれていると
  考えたアイルスが創り出した。十中八九当たって
  いた結果、魂融合したコピーを作れた。

  並列処理化
   記憶のピックアップを行った後、眠った相手に
  記憶を書込む追体験を夢で行わせる。外部デバイ
  スへ記憶のバックアップも行い、脳のサポートも
  行わせている。強制睡眠学習も並列処理化のプロ
  セスの一つ。記憶が格納された外部デバイスを失
  うのは、脳のその部分を切除するのと同義。

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 【ステータス】
 アイルス・プリムヘッツ(7歳)
 弟子32日
 ◆才能:※並列思考には脳が無いので更新なし
 アカシック・リーディング(無自覚)
 最適設計演算
 魔力補助精密動作筋肉制御
 失敗検証
 検証データ予測演算
 全体統制視野
 外部記憶媒体直接読取

 ◆ユニークスキル/ユニーク複合スキル
 魔力最適制御(マジカル・オプティマイザ)
 マジカル・コンビネーション・オプティマイザ:
  Lv 4
 頭脳使用法:Lv 30→31
  (並列処理により上限解除)
  記憶向上+関連記憶→
  フラッシュ・デフラグ・フロー
  動的空間把握処理能力+予測演算+
  動体視力処理速度連動加速→
  フラッシュシミュレータ
  夢想実現化演算→
  ブレイクダウン・マイルストーン
  並列思考限定パラブレイン・オンリー
   技能貸与
   才能貸与
  ※頭脳使用法で纏められているのでLv 表示なし
  ※並列思考に脳は無くともアイルス自身のリソース
   は使えるのでパワーレベリング可能。

 ◆技能:
 見稽古(分析、考察)Lv 2
 標準語(会話、読み書き)
 遺跡語(読み書き)
 精霊語(読心会話)
 コボルド語(会話。物理的な発音は無理)
 高速切替思考処理
 並列意識連携処理グリッド・シンク Lv 5
 魔力察知マナ・センシズ Lv 3
 魔法式改造マジック・カスタム Lv 6
 魔法上級改造マジック・ハイ・カスタム(並列連動等)Lv 6
 混成魔法ミクスド・マジック Lv 6
 物理造形設計技術(木材、石材)Lv 3
 研磨整形技術 Lv 5
 ※関節部分の精密さを追求した結果。
 スキルカスタム Lv 5

 ◆魔法複合技能
 短時間睡眠術メンテナンス・リブート
 分散関連記憶回収整理処理メモリー・デフラグ・フロー
 共有記憶同期メモリー・シンクロ
 並列複合魔技最適化
 技能分析スキル・アナライズ
 技能複製スキル・コピー
 才能読取タレント・リーディング New
 才能分析タレント・アナライズ New

 ◆キャラクター紹介
 ・ホブゴブリン
   ゴブリンの上位種。本来は筋骨隆々な感じ。
  本編で出現したタイプは特殊な成長を遂げ、速度
  特化と思われる。刺客としては理想的な程の隠密
  と速度特化していると思われる。

 ・チャウチャウ顔兄弟達や他のコボルド達の嫉妬等
   弟はコルベルトと歳は離れていないが、コルベ
  ルトより年上である。コボルド達はまだ若いコル
  ベルトが邪なる女神に仕えている事に蟹を手に入
  れた頃抱いたが、強制睡眠学習を施された者は今
  やその程度の事で嫉妬は覚えていない。名付けし
  て欲しい程度である。



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