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第24話 超高速意見吸上げ(Super fast retrieval opinion)
しおりを挟む薄々、感じていた。美醜と善悪は比例も反比例もせず関係ない。その事に改めて、7年しか生きていない経験の中で向き合うと、中々重たい衝撃がある。
それもその筈で美醜は、生態的に異性確保に有利な子孫を残せる判断材料であって、正義や道徳は、他者の所有する物や権利を動物の様に奪わせない制御として生まれた。
元々は、別角度の概念なのだから、その混同は危険なのだと理解する。
理解はするが、難しい。これから美しいゴブリン少女を相手にってのは本当にやり辛い。
そんな事を考えていると先行偵察させてたサンド・グレインがゴブリン2体の姿を視界に捉える。
サンド・グレインのサイズは2mm。見つかり難いだろうが、地面より1cm程下の空間へ空間移動しながら、偵察と対策を行う準備にかかった。
『よし、先行偵察が配置に着いた。行動を起こそう』
『お? ついに決めたか? ちゃんと吹っ切れたんだろうな? もしもの時はゴブリンを全滅させる覚悟……』
『いや、出来てない。でも、殺らなきゃいけない事がないよう全員、僕の下につかせる。絶対』
『やっぱり、魔王になるんじゃねーかよ』
『そんなつもりはない! でも殺し合いもさせない』
かなり、甘ちゃんな事言ってる自覚はある。でも、だからここは我儘を通す。嫌な未来にならないように今は力を求めると決めた。
『はぁ。まぁ、お前の言うことに従うしかないんだけどよ。お前に使われる事が不幸になろうとも、この契約がある限りは逃げられねーしな』
『不幸になるなら、契約は解除するさ』
『バッ! お前ホントにバカだなっ!』
ヘルが顔を真っ赤にして罵倒してくる。何故だ?
『あー。イチャイチャしてるトコ悪いんだけど、この後の行動についてだけど、並列処理は一時停止で全力で罠張るで良いの?』
『その通りさ。流石、並列思考達。ゴブリン捕虜捕獲作戦前のそれぞれ考えついた仕込みを聞かせてくれないか』
イチャイチャとは心外だがスルーした。ヘルに手の平を見せて待って貰う意思表示をしながら、並列思考達が独自で考えてる筈の事を聞き出してみようと思った。
◆
『ゴブリン捕虜捕獲作戦前のそれぞれ考えついた仕込みを聞かせてくれないか』
"思考加速"
後で甘い食べ物確保しなくちゃダメだろうけど、短時間会議なら有効なので、敢えて思考速度を10倍に跳ね上げる。並列思考達もそれに合わせてくる。
『それは、此方も参加でいいですか?』
『あぁ。むしろ頼むよ』
『ほお。別行動の新入り君も参加か。ウルだ。並列思考代表して取り敢えずよろしく。提案は相手の陣地の魔力枯渇を先に行う事だ。それにはこちらから出向いてサンド・グレインをさらに作成させる事だ』
ウルがリーダーをしたかったようにも見える、代表を名乗ってラドに挨拶をする。多分効率的な話と人間らしい挨拶の練習を兼ねてだろう。並列思考とて将来どうなるかは分からないのだから。僕の手元を離れ誰かの物になるかも知れない。礼義の大事さは理解しているのだ。
『何故代表。ソーンだ。よろしくラド。提案は視覚を奪うために光か空間で景観を妨害し隙を作ること』
『アンスールだ。よろしく。提案は、コボルド達にサンド・グレインを張り付かせ、多重結界と同時にボスも含めてゴブリン全員に強制睡眠を仕掛ける』
こぞって挨拶の練習を始める他の並列思考。経験値稼ぎに健気だ。
『ご丁寧にどうも、先輩方。僕は事が始まれば独自に陽動しますが、それまでは全員サンド・グレインの作成は同じですね。僕はその作成場所は壁の中がいいかと思います』
『サンド・グレインの作成に一工夫はラドだけ?』
『あ、それなら、サンド・グレインの次世代、輸送型を同時に作りたいと思う。まだ設計段階にもなってないけど』
ソーンが提案に追加した。輸送特化型は前々から考えてはいたが着手するにはイマイチデータが乏しかったので放置したままだった。丁度いいから今のうちに原型を出してしまおう。
『よし、採用。すぐイメージ出して』
『安直だな。良いのか? もう設計やっちゃうけど』
『それなら、俺もあるぞ。エア・バーストの力が分散してしまうのをまとめる方法があってだな』
ウルが発言したことの内容は何となく感じていた物だった。これも原型出してしまおう。
『オッケー、考えてた事は同じか。採用』
『じゃ、これがイメージな』
『魔法式よろしく、アンスールは何かある?』
『もちろん。ただ、今回出番の無いアイディアだと思う』
『どんな?』
『そこらの虫や動物のスピリット・スキャンで得られる神経の構造分析。これを進めると人型以外のサーヴァントが作れるかも知れない。知覚と実行マニピュレータのカテゴリの数は生き物によってバラバラだから、人型の魂で補えなかったり違和感ありすぎる形にはなかなか操るのは困難になるから制御補助を創り出すのに今からスピリット・データを取りたい』
先を見据えての話はちょっと考えてなかった。人型以外は考えてたのに。先送りする悪い癖が浮き出たな。
『よし、採用。では作戦を伝えるよ』
◆
コボルド達の気持ちを汲んで、ヴェアヴォルフ達に先陣を切らせる事にした。それには残りのパーツ作成は急務だ。コボルド達に作成を急がせると同時に睡眠学習未実施者に強制実施を開始する。
同時に止まってたラド用書庫のコピーを新たな石にも行った。後でサンド・グレインに中身を取りに来させる。その序でに持ち歩く用に第四~七階梯とルインズ・ブックの読んで無いものを中心に片っ端から自分用にコピーを作った。書き込む為だ。その為には自分専用が欲しい。
およそ12分後には予定した全ての工程が終了した。
『お待たせだ、ヘル、皆。みんなの家族を助ける作戦も出来た』
『なんだ。やろうと思えば出来るんじゃん。さっさと片付けちまおうぜ。相手が焦れてコボルドに手を出さないとも限らないからな』
『あぁ。コボルド集落奪還の作戦を説明する』
コボルド達は喜び勇んだ。だが、まだ声を上げる者はいない。
『各員、サンド・グレインをありったけ持て。そして、ゴブリンに指で弾いて当てろ』
『投げたら駄目ですか?』
コルベルトが代表する様に言う。なんだか指導者の風格が備わりつつある様だ。
『相手に気付かれる迄は大きな動作は禁止だ。お前達の鼻のようにゴブリン達は闇でも目が効くだろう。大丈夫だ。コルベルト。ここに残ってるヴェアヴォルフを貸して貰って、そこらの石を拾って、指弾を今まで来た道に思い切り放ってみなよ』
『石の当たった音で位置がバレませんか?』
『そこは、ほら、ズレる予定だし、陽動と思って良い』
『それじゃ……ちょっと借ります』
コルベルトは年長と思われるコボルドに一声かけ、ヴェアヴォルフを動かす。石を拾い、しゃがんだままの姿勢で指弾を放つ。
ズガッ!
石は豪速で飛んで曲がった道の壁に小石の立てる音とは思えない破砕音を立てながら、めり込んだ。
『『『『『……』』』』』
『じゃ、この力でサンド・グレインをゴブリンの指に叩き込んで攻撃力を奪ってから、家族を救出ね。軌道修正はサンド・グレインがやるからぶっちゃけ適当にやっても親指に当たるよ。ボスがいるけどそっちは僕に任せて、以上。質問は?』
コボルド達は一斉に首を横に振った。
____________________
アイルスがやらかしてる事や本筋には出にくい情報。
◆パッケージ・マジック再度停止中。
※パッケージ・マジック詳細等は割愛。
・オリジナル・マジック
各関節可動補助魔法
基本は念動魔法による制御。人間の成人女性の
平均位の出力で、それ程強くは無い。出力を上げ
るには、当然、各関節に動作する度に追加の物理
出力の魔法が必要となる。通常の魔法では魔力量
が限界にすぐ達する為に魔力循環を使い、無駄に
出て行ってしまう魔力を抑えるようにしている。
これに必要時だけエア・バーストとスペイシャル・
ストレス・アクセラレーションを組合わせた結界
を発生させ、時速150km程度の速さで関節を動か
す事に成功した。更に投擲物や進行しようとする
コース上にこの魔法陣を連続展開すれば、加速も
可能となる。
____________________
【ステータス】
※変更なしの為、割愛。
_____
お読みいただき、ありがとうございました。
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