マジック サーヴァント マイスター

すあま

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第43話 名ばかりの奴隷生活と承認と予測




 「うう。……ぬ」

 御者は簡易テントの中でどうにか眠い目を擦って起き始める。テントに近づく人の気配に目覚めたのだ。いつもの起床より10分早くに誰がと思った矢先に外から声がかけられる。

「今日は私が皆を起こしにかかるから少しだけゆっくりで良い」
「!? ラキムゲル様!?」

 驚いてすぐにテントの外へ顔を出すと、ラキムゲルは他の御者のテントに声をかけていた。信じられないモノを見たと御者が顔に文字を刻んだ。毎朝好き勝手に起きて来ていた破戒僧然としたラキムゲルが起こして周っているのであれば、それは仕方のない事だろう。

 加えてラキムゲルに蘇生された少年がついている。余程気に入られたか、ナニかシたのかと邪推をする御者達だった。

 ◆

 御者達の後、男性奴隷十一人、女性奴隷五人、と全員を起こして、朝食の支度をすした。その間も好奇の目にアイルスとラキムゲルは晒されていた。アイルスは奴隷のフリをして、見様見真似で準備を手伝っている。が、奴隷のフリなど退屈なだけなので、スピリットスキャンから抽出した奴隷全員の記憶をミリセックタイムの中で流し見ていた。

 到底、デコ教のする事を許せる内容ではなかった。改めて彼らには同情する。ここに来ている奴隷は奴隷罪にされた半獣人の子供達だ。親に相当する者達の行方は引き離されて行方知れず……そこまでの記憶しか読み取れなかった。

 子供の奴隷罪奴隷はミュトスが毎回連れて来ていたらしい。彼女も行動基準の前提条件としている教義の『光の民に仇なす存在になり得る』がなければ容認出来たことではないだろう。

 監視をつけた以上、ミュトス達にそうそう簡単には好きにさせないが。そんな事を考えながら情報を精査して一つ気付いた。磔刑投石時に石を投げているが全然当ててない子が居た。わざと外している。しっかりとオカマッチョの目を欺く為、たまに当てたかと思うと貼り付けの縄の上とかめちゃくちゃコントロールが良い。あの羊の半獣人の子だった。

 正直、光の民も半獣人も、あの洞窟のコボルドとゴブリンを思えば、身内のように引き入れれば良からぬ火種になる事が予想できた。従って、目立つ行動は取りたくない。奴隷の解放もするつもりは無かったので悩む案件だ。

 それを考えるのは後回しにすると決定。続いてサーヴァント達から上がって来ていた提案に目を通す。先ずはヘルも目を通したサインがあるデザインだろう。ほぼ最終的なデザインがそこには上がって来ていた。

 目に見えて理解しやすい技術力と言う観点から、正直もう作らないと思っていた、サイズ10cmのシュラッチャ級。超長距離高高度高速周回飛行ワイアーム型"ヴィヴェルム"。完全新規フレームで腹に横倒しにしたドラム型が基部になっており、変形時にのみ腕と脚を入れ換えるためのロックフレームが出て来てドラムの外側が回転する。腕の付け根がワイバーンの股間へ、脚の付け根が肩へと位置を変える。随分と個性的と言うか"三枚おろし"な変形だ。

 考えた奴は狂ってるなって俺の分身だったわー。ワイバーン時はガニ股で爪先だったとこから更にフレームが左右へ展開し、やたら横幅がある。胸中央ブロックに折り畳まれた首が上へ展開し、腰内部と長いフロントスカートアーマーに隠された尻尾を展開、長いフロントスカートアーマーを90°曲げて基部を腰内部に引き込み元両肩内側基部にロックすれば、概ね変形完了する。

 ジェットリングと言う前方の気圧を下げ後方の気圧を上げる風魔法ベースの推進魔導器をずっと構想していたがどう計算しても最高でコンポジットボウ程度の速度しか出せず、長らく悩んでいた。が、それを四つ連結して指輪型から樽型にして解決してくるとは思わなかった。ソレが二器首の付け根を基部にして取り付けられてる。更に重力推進まで使って超高速を実現させてる。

 極め付けは、脚になった腕を位相空間へしまう事でワイアーム形態となっている。その理由が魔力が足りなくなった時、流線結界から解かれるので空気抵抗を減らす為とか、いずれ覚える位相空間と重力遮断の合わせ技での軽量化とか、見た目とか、ロマンとか。……最後が本音だろう。

 そもそも、さっき承認した電磁波魔力変換式出来てる時点で、大気表面伝搬してくる電磁波(オーロラの原因)捉えれば夜でも供給可能だろと思わずツッコミを入れた。

 目的は成層圏にてテレパスの中継と制空権確保とサーヴァントの輸送。輸送方法は位相空間に本騎を起点に固定したコンテナ。搬入出は出入口のみを出して行う。ワイアーム時の全長約15cm、全幅20cm、シュラッチャの全高は8cmと小型化。予定材質はシリコン、鉄、ホウ素、炭素、アルミニウム? チタン? そんな金属こんなとこで取れるっけ? 回収した並列思考とまだ同期を取っていない知識からそんな金属があると今朝、知ったけれど。まぁ、承認っと。

 その次は予想してたけどリルナッツ級の1cmの"ノーシェ・ファルコ"人型⇄猛禽類変形でコチラの変形は逆さま変形だ。ワイアームもこうすれば良かったのにと思わないでもない。長首と尻尾フレームの折り畳みギミックが問題なんだろうけれど。

 推進動力は引力と斥力。これも試験的な匂いを感じるな。一晩承認を待ってた所為でエビデンス取れなかったからここで試験も並行してやろうって話だな。用途は成層圏運搬の行き来? 確かに成層圏周回させるなら大陸の形も関係無いもんなぁ。障害物無視の超短波電磁波通信すればテレパスも問題無いし。時間魔法覚えるまでの繋ぎかな……。承認っと。

 その次はやっと地上活動部隊かな。これも新機構か。5mm? 中途半端なのは今までのパーツサイズ感で組んだからか。可変輸送インセクト型"ヴェシュピンネ"と名付けられたそれは人型は備えてなかった。おまけに低魔力活動と隠密性の高いタイプだ。

 首の収納可能な胸部パーツには上面下面に一体ずつ。コンテナユニットの腹部は左右に三体ずつ。四対目の脚に一体ずつ。ネオ・サンド・グレイン級 可変飛行型"三本投擲槍トレ・アーギ"を計十体格納可能。三対目の中脚が背中へ取れてから再接続。長距離移動時に蜂型として翅になり空気の圧力調整で姿勢制御、必要なら重力魔法で加速。近距離移動時は蜘蛛型で基本はこちらがメインになる。

 蜂型は、ドル師匠のとこまで飛ぶための形態か……なるほど。現段階の問題は、既に一人で解決できる気がしないほどヤバめだし、師匠の手を借りるのは確かに得策だね。何より遺跡の書庫ルインズ・アーカイブにアクセス出来るのは大きい。よし、両方とも承認っと。

 などと処理をしながら、支度をしていく。

「で、君はサレちゃったの?」

 不意に豹の半獣人が無遠慮に小声で話しかけてきた。現実時間に戻り、対応のため、その人物に集中する。私語は厳禁な筈だが、さすが猫科の獣人。好奇心には耐えられなかったのだろう。その問いには既に予習済みの回答をそっけなく返してやる。

「ご想像にお任せします」
「えぇ~? 教えてよ~」

 この場にいる全員が耳をそばだててる気配を感じながら、この後をどうするかG.I.Aオーダーで高速シミュレートする。うん。イジメに入る未来が三通り、同情に入る未来が一つ。但し、同情ルートはこの場の男が全員敵になる。か……面倒臭過ぎる。

「あんな変態にサセるわけないじゃないですか」
「ヘェ~、なかなかやるね……ところであんたエルフ系じゃない生活してた? ハーフにしちゃ耳も普通だし……」

 彼女はそう言うと言葉を切り、身を寄せてきた。胸をグイグイ擦り付けるように腕に押し当ててくる。媚びてるつもりか?

「ホントは人間なんでしょ?」
「……いくら言っても信用していただけなくてですね。別に隠してるわけではないのですが」
「やっぱり本当に人間なんだぁ! ヘェ~人間なのに奴隷罪……」

 彼女はニヤニヤしている。種として身体的に半獣人より弱い人族は周知の事実だ。弱い人族で首輪により魔法が使えないと来れば彼女の取るパターンは限られて来る。それに則したこちらの行動の回答は、媚を売り庇護欲を掻き立て守ってもらうか、適度にガスの抜きの対象になるか。

 社会的最底辺のヒエラルキーである奴隷になってさえ、グループが形成されればどこでも同じような事が起きる。本能には逆らえない悲しい脳味噌のさがだろう。表向きにグループのボスに委ねた方が早期解決になりそうだ。

 ただ問題は、予想外に声が大きいこと。この場で奴隷全員を巻き込む意図まで予測して居なかった。すぐにG.I.Aにシミュレートし直しをオーダーする。回答が即座に返って来た。『反教会の礎にするつもりだ』と。とは言え、一度投石により殺しに加担した連中だ。複雑な感想しか抱けない。

「え、何々、やっぱそいつ人族なんだ?」
「えー、ホント? あたいらと同じ扱いになっちゃったんだー?」
「ねぇ、死んでから蘇ったのって、どんな感じ?」

 一斉にみんなが質問して来た。やはりそこは奴隷にされたとは言え普通の子供なのだ。例え、心を一度くらい折られても逞しい。問題は人間だと宣言したのは自分だが、奴隷と言う同一立場のグループでと言う前提条件の中での弱い人族の子供なら、この後の展開は容易だ。

「あの! そ、その……」

 篦棒べらぼうに投擲コントロールの良い、あの羊角の娘だ。皆より少し離れていた。しかしそれが返って皆の注目を集めてしまい縮こまっている。

「みんなで、石を投げて御免なさい。生きてくれてて良かったです」

 一人だけ僕の人権を尊重してくれる者が居たわけだ。彼女は助けるに値するか……まぁ、危険だからキャラバンからは追い出す事には変わらないけど。

「そこ! 何を騒いでいる!」



____________________
 【G.I.A ステータス】
 サーヴァント達に積まれたアイルスを基に造られた意志の集合体。基本的には、一体一体がアイルスが取得した魔法を行使可能で学者肌揃い。常に研究し時間操作にも似た方法でエーテルや電子を操り、トンデモ理論展開とそのアンチテーゼを繰り返している。
 ※あまり細かくしても誰も読まないので簡潔に出来る事をまとめました。

能力:
 1/1000秒ミリセック常動思考。取り敢えず出来るからミリセックに設定されているがミューセック、ナノセックもいける様だ。そこまでする必要性を感じないのと今のところエーテル加速がミリセックが限界なのでそこで止まっている。ミリセックでの活動は現実との乖離が発生する。具体的に示すならば、並列化した記憶が膨大になり過ぎるところが今のところの課題。一晩でおおよそ7000×60000時間が得られている。

超高速シミュレートによる予測
 問合わせる際に前提条件をしくじると解答が異なるので出来るだけ入力時の情報は正しく多いものであれば未來視と同等のスペック解答を持つ。

警告:
 アイルスの行動で今後の展開に想定外が出る場合発せられる。もちろん外的要因にも即座に反応する。

研究・開発:
 サーヴァントの材質に使うマテリアルの研究開発。分解者の生態とその利用法など思いつくまま魔法も駆使して研究している。


 ◆サイズ感比較
 シュラッチャクラスold:10cm
 ヴィヴェルム級(人型):8cm
 リルナッツ級:1cm
  ノーシェ・ファルコ(鳥型):全幅3cm

 ヴェシュピンネ級:5mm
 サンド・グレイン級:2~3mm
 ネオ・サンド・グレイン級:1mm
  トレ・アーギ
 ソード・アームズ級old:0.05mm(50μm)
 ソード・アームズ級new:0.01mm(10μm)
 ナノ・アームズ級:0.0001mm(100nm)
 プローブ・サーヴァント 1nm

 マイクロスライム(仮)20~60μm


_____
 いつも、お読みいただき、ありがとうございます。
感想 4

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