マジック サーヴァント マイスター

すあま

文字の大きさ
49 / 77

第49話 魔法発動と達人所作とプライベート侵犯




 クリスティ視点

 アイルスが居なくなってからもう数時間で一日が過ぎようとしている。あのバカ兄貴はマルシェラの保護者として来たけどアイルスの捜索の邪魔をしたのでラドってアイルスと母様の精霊クフィーリアの融合コピー人格に"再教育"されてる。

 ちょっとだけ興味があったので聞いてみたら、

『アーティファクト・デバイスは一度記録すればほぼ忘れない記録媒体です。これにテレパスで"直結リンクして外部脳として使用する事により生体脳ではなかなか出来ない"一度で記憶すること"が見た目では可能になります。更にその記録を反芻する事で生体脳への記憶も自然と出来ますがこれにはムラが出来ます。そこは脳みそ仕様なので諦めるしかありません。ジルドレッド兄様への再教育とは即ち、ラド・アイルスの持つ能力の一部提供に他なりません。この能力は、コボルド、ゴブリン達の元悪魔族の生命体含めてのものとなります』

「能力の提供? ズルいわ。私達にも提供してくれないの?」
『能力の提供は可能ですが、その前に能力の内容とメリット、デメリットを説明します』
「デメリット?」

『先も話した通り、一度で覚えられる外部記憶装置デバイスがテレパスでリンクされます。その結果、簡単に言うとオリジナルのドル師匠から学んだ記憶と書庫から得られた知識が自分で学習したかの様に使えます。最終的にはオリジナル・アイルスや私が習得した魔法が使えます』

「「「え!?」」」

 今、このアイルスの面影を色濃く残すコピーはとんでも無い事を言ったように聞こえたわ。能力提供を受けた者は魔法を行使出来るようになる?

 誰でもなのかしら?


『オリジナルは、ドル師匠の書庫を読み終える前に連れ去られました。その引き継ぎは行っていますが……』
「待て、ラドよ。コボルドもゴブリンも魔法が使えるのか?」

 何やら思考に沈んでぶつぶつ言っていたドル先生が復活して聞きたい事を聞いてくれた。

『今はサーヴァントが代行していますが何れ単体でも使えることになると思います』
「素質があるなしに関わらずか?」
『個体差はあると思いますが素質がなければ作れば良い事ですし。なりたい意志があれば眷族の成長を手助けする責任は果たします』

「いや、ダメぢゃ……それは世界を壊してしまう事に繋がりかねんのぢゃ……」
『差別意識で成り立ち、罪のない弱者に能力を伸ばす機会も与えず無能な搾取者が統治する世界の方が私には歪です。むしろそんな世界は即刻変えるべきと愚考致します』
「むむむむ。急激に変えるのでは武力での争いとなろう、ゆっくりとぢゃ、ゆっくりと変えなければ人々は受け容れぬ。特にお前の言う無能な搾取者に気付かれてはならん」

『なるほど、流石は師匠です』
「ねぇ、それリンクしたデメリットってなんなの?」

 話が変な方向に向き始めたのでバッサリと切って聞きたい事へ戻した。ドル先生もラドも話したい事が出たらそちらへ向かって突き進んでしまうらしい。アイルスもこうなってしまったのだろうか?

『あぁ、脱線でしたね。デメリットはプライベートが一切ないことです。コボルドやゴブリン、それとジルドレッド兄さんと同様の能力を欲する場合はそれを覚悟してください』
「ぷらいべ?」

 マルシェラが呟いた。ギクリとした。

「ラドお兄ちゃん! マルシェラは強くなりたいでし!」

 その言葉を聞いて、ラドが杖型の何かを映し出す。

「待って、マルシェラ。大事なことが先よ。」
「ママの言う通りよ。マルシェラ」
『これが僕等の開発した新しい提供出来る能力の源です。これに対して全員が動作制御をフィードバックし、効率の良い動作へ昇華します。つまり何年も修行した達人と同じ動作ができる様になります』
「「「え? 魔法だけじゃないの!?」」」

 ラドの言う事に私達は、唯々、驚愕するばかりでアイルスの予想斜め上を行く企画外振りに舌を巻いた。

 ◆

『デメリットはプライベートと申し上げましたが、提供出来るサービスは魔法だけではございません』
「どう言うことなの?」
「ジルド兄が達人の動作を身に付ける?」
「ラドよ、まさかとは思うが交渉ごとも閲覧したのかの?」
『流石は師匠ですね。でも狙いは多分分かっていただいてると思います』

「たたみかけ、思考させない様にし要求を聞かせる。初歩的な手段ぢゃが、そうまでしてワシらにアイルスを捜索する協力を迫っておるのか?」
『悪魔族の高い地位の者に拐われたとして、師匠と母様はどうお考えでしょうか?』

「む、そうぢゃな……確かに正確な説明を出来るのはお主だけぢゃろうて……」
「あ、あの、悪魔族の高い地位のと言う話は聞いてませんけれど……」
「説明する前でこうなってしまったからのぅ」

 それを聞いたクリスティは、ジルドレッドを睨みつけた。

『なりふり構ってる場合ではないと理解していただけますか? 一部プロテクトした状態でアイルスの記憶を見せますがその際、個人の境界を見失う可能性があります。一応、夢として見せるので自我を保てるとは思いますが、親和性の高い魂程境界が甘くなる可能性があるかもしれないので』

「エーテルの性質を理解したのか……なるほどの。それがプライベートがなくなると言わせる起因か」
『更に交渉として強行した訳は、記憶共有後、捜索に協力していただくと思いますが、話した通り私は全能力の底上げと最適化が可能です。しかしそれには前提条件として、このケーリュケイオンにいつでも接続可能で居ないとなりません。つまり、個人的な時間が物理的になくなります』

「アイルスを救う代わりに対価として個人の秘密の全てを曝け出すしかないとお前は言うのぢゃな?」

「ラドさん、アイルスは早く探し出したいけれど、その提案には私たち女性陣は乗れないの。分かって頂戴」
「ママ!」
「マルシェラ、ママはやめなさい。貴女はもう直ぐ"淑女"になるのよ」

『勿論、強制はいたしません。将来の伴侶を重きに置いて決断するのも自由ですから』
「分かっていて、それを言うの? 母様、アレはアイルスじゃないわ」
『えぇ。半分はオリジナル以外で構成された擬似の魂です』

 敢えて、クリスティが口にした物言いを肯定し、事実をそのまま機械的に述べるラドに一同は押し黙る。

「ワシも繋ぐのはやめておこう」
『……承知しました。ところで、私の記憶にリンク出来ないので、このまま思考加速の状態でここに映像映します』

 アイルスのコボルドと出会った場面から記憶が再生されて行った。それを見た一同はまた唖然とするのだ。一度で記憶出来る外部脳を持った魔法使いはとんでもない独自進化とも言うべき成長を遂げていた。

 コボルドに相対していた時はまだ大人を真似たあどけない口調が、分身を作り、速読方を導入し、記憶の並列化を行う頃には七歳にして既に成人(十五歳)手前の様な所作を振る舞っていた。あどけなさが霞んで行くのをマリアンナは逞しくなったと涙を流しながら見届ける。

 クリスティとマルシェラは驚きの連続を隠さず、その記憶を目にする。先程は反対意見に加担していたが、次第に同じ魔法が使えて体術も達人級までこなせる文武両道を提供してもらえる事と乙女の秘事諸々を天秤にかけ始めていた。と言うのもクリスティはアイルスと生涯居るつもりでマルシェラは何も考えてない事が原因だ。

 しかも暴れているのはサーヴァントで本人はほぼ無傷と来ればその魅力は計り知れない。


____
いつもお読みいただきありがとうございます。
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。