マジック サーヴァント マイスター

すあま

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第51話 アイルスの記憶2




『呆れたぞ、そんなことが可能だって思う事も、もうなんか、甘ちゃんにもほどがあるぞ!』
『まぁ、記憶を切り離した魂に繰り返し夢を見せてるから大丈夫だよ』
『なに?……今、さらりと恐ろしい事言わなかったか?』

 全員の思考が停止する。『記憶を切り離した魂?』彼等には想像出来なかった。一切の己を形作る記憶から切り離された無垢なる魂の状態がどういったものか解ってる様で判らなかった故の思考停止に陥る。そこへ、更なる会話が流れて行く。

『? だって、先入観とか記憶として存在していたら、僕等には邪魔だからね。一旦理解して貰ってから決めてもらっても良いかなって。多分理解してくれると思うけど』
『ねぇ、それ洗脳じゃないの?』
『え? ……そうかも? でも何方いずれも知った上で判断させる。のだから」
『はっ? 何言ってんの?』

 アイルスが悪魔族と魂の根源が同じと言う。決定的なデコグリフ教会への背信行為と取れる言動にマリアンナは青ざめた。

「まさか、この様な会話があったとは……使い魔の選定を誤ったか……」

 師匠が独りごちた。マリアンナ達は信じ難かった。敬虔ななデコグリフ教の信徒でなくとも、アイルスの言い放った言葉は簡単には受け入れ難いものだった。

『んー。ヘルを見てると基本的な行動も習性も感情の揺らぎも変わらない。で、あるなら、さ。……悪魔族の課せられた使命って何?』
『お前、……

 教会だけでなく、悪魔族の禁忌にまで触れようとしている可能性が使い魔の表情から窺い知れた。このままでは異端者として我が子が世界に裁かれる。そんな予感がしてマリアンナの顔からは血の気が失せ、白蠟の如く白くなった。

『吾が自信作を魔法如きで倒してくれるとはな。中々、面白い奴よ』

『誰だ!』

 マリアンナ達は手を握り締めていた。

『どうした! アイルス!』
『誰かがテレパスでない方法で僕に語りかけてきている!』
『なんだと!? 呼びかけに応じるな! 今すぐイービルシンボルを切除する! 死ぬほど痛いが我慢しろ!』

 ヘルが背中に周り、イービルシンボルにマジック・オブジェクトの刃を突き立てた。

『うがっ!』
『我慢しろ!』

「「「アイルス!(お兄ちゃん)」」」

 三人とも口に手を当てて、アイルスの名を叫ぶと、同時に使い魔へ複雑な視線を送る。

『何やら色々とくっつけておるな。本当に面白いヤツぢゃ、苦しゅうない、近う寄れ』

 そして、アイルスを拉致した黒幕からの声を最後に、記憶の再生が途切れた。

『以上がオリジナルが拉致されたところまでの記憶です。何か質問はありますか?』
「あの、イービルシンボルはアイルスから取れたの?」

 マリアンナより早くクリスティが口を開いた。少し過剰までの心配だが、聞きたい事なので特にマリアンナは言及しない。

『恐らくは切除は失敗しています。奴隷にされている可能性は高いですね。研究対象として実験されているか、魔王の生贄にされてるかも知れません』
「そんな……」
「アイルスお兄ちゃん」
「あぁ、アイルス……」
「ワシの監督不行届ぢゃ、スマヌ!」

 三人が沈黙し、ドル師匠が謝罪を口にする。

「……私、ちょっと提案があるんだけど……」
『なんでしょう?』
「知られたくない事をドアみたいに鍵はかけられないの?」
『鍵……セキュリティならば乗っ取られ防止を既にサーヴァントには行っています』
「それと同じ様に、例えば身体のコトとかオシッコとかお風呂とか乙女に走られたくない事が多いの」

『ふむ……ですが、"完全循環ループ・マテリアルで身体はいつも清潔で有機物も成長分摂取するだけで事足りますので排水さえ必要ないですが……体の構造に関してのセキュリティは有用ですね……』
「なん……ぢゃと……!? ループ・マテリアルを完成させておるのか!?」

「それ、どう言う意味ですか?」
「平たく言うと身体を拭く事もトイレに行く事も必要なく食事も少量で済む魔法ぢゃ」
「はぁ、え!?」

「ループ・マテリアルの最大の欠点は、発汗で出て行く水分ぢゃ。水が出ていけば、その分摂取しなければならん。水を摂取が必要となる。すると登録したマテリアルが入れ替わり、循環機構に不具合が生じるのぢゃ。他にもまだ理由はあるが……とにかく完成しておらん魔法なのぢゃ」

「そんな魔法があったら、トイレも身体拭きも覗かれる心配ないね。それにダンジョン攻略とか楽そう」
「でも、それが知れ渡ったら……、世界は色々と変革して行くのは避けられなさそうね……ますますアイルスが心配だわ」

『この魔法の完成はオリジナルが拉致された後ですから多分オリジナルはまだ使えません。もちろん合流すれば並列化するので使える様にはなりますが』
「それより、ジルドレ兄さまには絶対知られない様に身体のコトとか誰が好きとか言う乙女の秘密に強固な鍵をかけたいのだけれど。それが出来るなら私は貴方達とテレパスで繋がってもいいわ」
「そうね、そう言う鍵があるなら問題はないでしょうけれど……」

『分かりました、いったん簡易の鍵をつけて意に沿う物を作成しましょう』
「できるの!?」
『勿論です。それでリンクして捜索にご協力いただけるのですね?』
「それなら、……」

 クリスティが母の顔を伺う。マリアンナはうなずいて返す。

「いいわよ。でも、やっぱり私は遠慮しておくわ」
『そうですか、リンクしていただかなくてもサポートユニットは出させていただきます。他に質問等ございませんか?』
「サポートユニットって、何をしてくれるの?」
『防御と回復位ですね』
「ありがとう、それで十分だわ」

『先程、記憶でご覧いただいたゴブリナの再教育がたった今、終わりました。お会いになりますか?』

 一同に緊張が一瞬走る。

『彼女にはアイルスの記憶がある為マリアンナ母様を母と認識しています。勿論ドル師匠も、家族のクリスティとマルシェラにも親しい感情を持っています』
「え、そんなの急に困るわ。心の準備をさせて貰えないかしら」
「敵だったんでしょう?」
『彼女は生まれて間もないそうですよ。魔法で急速な成長をさせられた個体でゴブリンとも異なる存在です』

「何ぢゃと!? 成長を早める秘術を使ったと言うのか!?」
『ちゃんと読み解いてないのですが、新陳代謝を活性化する特殊な魔術構築式が必要のようです』
「魔術ぢゃと……?」
『悪魔族の技術ですから。でも、近々その式も僕の開発した階梯言語式ステアケース.ランゲージで置き換え可能になると思います』
「なるほど……イヤイヤ、ラドよ、主は既に我が魔導を超えておるようぢゃが?」

『ミューセック処理と修練洞窟全体に行き渡らせたサーヴァントの並列処理により1万年単位の時間を思考し続けている結果かと推測します』
「なんと、よもや悠久の時に耐え得るとは思いもせなんだ」
『私には真の感情は存在しません。オリジナルが作ったアーティファクトです。生物の価値観で比べるべきではないと判断します。故に師匠はオリジナルの師匠であり私は思考し続けるオリジナルの分身であり道具で対等な立場で全てを考える者です』

「なんか難しいこと言ってまた脱線してるけど、敵だった人と会わなくても会話は出来るんでしょ? さっさと用件済ませてアイルスを探しに諸々を片付けましょうよ」
『会話は可能です。会わずにそれで済ませることでよろしいですね?』
「そうして頂戴」
『承りました。繋げます』

 


____
いつもお読みいただきありがとうございます。
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