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第52話 グリッド・リンク
『あ、あの、あの、は、初めまして! フォールーンです!
マリアンナ母様とお呼びしても良いですか?』
『コミュニケーションの為、映像イメージをテレパス送信します』
フォールーンの第一声に身構えていた一同が呆気にとられた。その隙にラドはフォールーンの映像イメージを各自にリアルタイム送信する。
「ちょっと待って。貴女、アイルスの敵だったのは憶えているのかしら?」
『ラド様、すみません、あ、あの、マリアンナ様、憶えてます。確かに私はこの地の悪魔族を束ね、拠点を築く為に派遣されて来ましたので。あの頃の私は、まさか、人の魔法使い……いいえ、魔導士に遅れを取るとは思ってもいませんでした。そして私は再教育を受けました。現在は敵ではありません』
「ニワカには信じ難い事ぢゃ」
『悪魔族の潜在意識下のコマンドは既に切り離し可能にしてあるので実質、彼等はラドの眷族です。言ってしまえばサーヴァントの生身版ですね』
「えと、彼女もプライベートはないのかしら?」
『そうですね』
『プライベート?……あぁ、そう言う意味ですか』
フォールーンの幻像がキョトンとした顔で聞いた後、直ぐに何かを悟ったかの返答をした。
『確かに私に関する情報で一部のゴブリン共がアクセスしに来たので知られたくない情報にはペイン・センダー・インターセプト・プログラムをつけた上でプロテクトしたので私にはプライベートはあります』
「「「は?」」」
フォールーンの言葉に一同は理解の処理が追い付かなかった。解ったのはフォールーンがラドも及ばないか、許可させる何かをしてプライベートを獲得していると言うことだけだった。
『厳密には、データには重要性にランクが存在しているのでそれに関するアクセスに権限が必要です。魔法の階梯と同じに考えていただければ理解し易いかと』
「それを先に言わんか! ならば話は別ぢゃ。ワシはラドのリンク……そうぢゃな。"眷族化接続"では適当では無いか……」
『グリッド・リンク。僕らはそう呼んでます』
「ふむ、なるほどのぉ。では、そのグリッド・リンクにワシも参加を同意しよう」
「「えぇ?」」
ドル師匠の宣言にラドは喜びの表情を幻影に映し、三人は驚愕した。が、マルシェラは単に解っていなくて二人に合わせたようだ。
『師匠は、繋がってくれるんですね! 師匠にもちゃんとお会いしたいと思ってたので嬉しいです!』
「む、うむ。よろしくの。ワシが先に繋ぐ。マリアンナ嬢達はワシがプロテクトを組むからそれを装備してからつなぐと良い」
「そうですね。分かりました。さ、あなた達もそれまでは家で待っていましょう。移動はよろしいです?」
「勿論ぢゃ」
師匠がまずはグリッド・リンクに参加した。
◆
『それでは、我々は問題ないのですが生体のあなた方には負担ですので、先ず通常時間へ戻します。師匠、右掌を上に目の前に出してください』
言われるがままに目の前で右手を天にかざす。するといつの間にか掌の真ん中に赤と青の二色の珍しい砂つぶが乗っかっていた。
『いきます。"グリッド・リンク"』
その途端、視界いっぱいのワシ自身の巨大な顔を捕らえる映像が流れてきた。自分の顔に驚くとその映像の顔も驚いて見せた。
--
接続完了を確認。
フェーズ移行。
操作主導権委譲プロセス開始。
エーテルスキャン、IDを設定。
サーヴァント65001F管理者権限をID:ドル000へ付与。
ID:ドル000へ操作委譲。
委譲完了。
並行プログラム実行。ヘルス・チェック・プログラムを行使しますか y/n
--
一通りの流れ作業を聞いて何かウインドが表示される。と同時にもう一つ砂つぶが掌にいつの間にかあった。そちらからも映像が流れて来るようになると、その砂つぶが地上へ降りる。
砂つぶ(サンドグレイン)は先ほどよりも何やら小さくなっている気がした。いや、それよりもウインドの『y』に思念を送るとウインドが消えて、砂つぶが行動を開始した。
--
"ガベージ・コレクション"
"クリエイト・ソード・アームズ"
--
砂つぶの周りに仄かな輝きが複数舞い、送られて来る映像が増える。砂つぶにしか見えなかった、全貌がその映像の中に映る。初代に作られたサーヴァントより重厚なフォルムでずんぐりむっくりな、ケンタウロスを少し太らせて縮めた、華奢な腕と逞しい腕と四本脚のサーヴァントであった。
そのサーヴァントが更に小さな、(こちらは四肢が剣の形の)サーヴァントを三体作成し、ワシめがけて突入させて来た。当然、驚いて尻餅をついてしまったが、その短い間に理由になる情報が強制的に外部ストレージから送られて理解させられる。
「なんとも老体に鞭を打つ仕打ちぢゃわい」
呟いたそばから異変が起きる。視界から強い抵抗感と目眩を覚える。かけていた老眼鏡の度数が合わなくなったのが原因か。眼球を従前に使えるようにリフレッシュが行われていた。
--
【コレクトリンク】
師匠のみ必要な情報です。他の方には届きません。外側から眼球の老朽した細胞へ侵入して再構築しています。
痛覚神経に干渉しています。作業は急ピッチで行っていますので後2分ほどで眼球の修復が完了します。
その他各関節の擦り減り具合が酷かったので有り合わせの資源で補強しています。
修復に使ってしまう資源は2日程食べ物で補います。特に大きな病気による内臓疾患は見受けられません。
血中のLDLコレステロールが僅かに正常値以上です。ガス・セレクション・ナイトロジェン等を使用し長時間かけてセロトニンに変換します。
筋肉に対して代謝機能の劣化が確認されました。代謝機能を数日かけて向上させます。
現段階での身体状況を保存します。
ヘルス・チェック・プログラムを終わります
--
「やれやれ、色々と弄くり回されるとは思わなんだ。確かにこれはプライベート云々言わねばならんな。時にラドよ、セロトニンとはなんぢゃ?」
『起きている時に分泌される神経伝達物質で精神を安定させる物質です』
「ナイトロジェンとは?」
『空気中に多量に含まれる生命と関わりのある物質です。コレステロールを構成する物質だけではセロトニンを作り出せないので加える為に使います。変換に関してはピコサイズのサーヴァントが結界を作り、その中で臨界状態にして組み立てます』
「知りたいことをスラスラと教えて貰えるのはテレパスの利点ぢゃが……科学を読んだのぢゃな?」
『はい』
立ち上がろうとした時マリアンナ嬢が手を貸そうと駆け寄るのを手で制した。立ち上がると軋んでいた関節が百年程ぶりにスムーズに動かせる。
「まるで、若返ったようぢゃわい、アイルスの発想も驚きぢゃがラドの熟達さも合点がいったわ。しかし、禁忌に触れる危険性を説かなかったワシの責任もあるかの」
『この世界の人の使う魔法の法則を崩す恐れですか?』
「うむ。休戦状態とはいえ、悪魔族との戦争をしておるのに光の民と自称する者たちの国はいまだに国として不安定で悪魔族たちの暗躍もある。そこに新たな火種になるヴィッセンシャフトの知識を取り入れた魔法なぞ、世に放つべきではない」
『見られなければ良いのです。見られても理解もできないでしょう』
「そうかの? 意外と人とは、弱くとも渋とく強かであるぞ?」
『師匠もその時はいる事でしょうし、問題はありません』
「はぁ……やれやれ、問題しかないのぉ」
盛大に溜息を吐き諦観の想いを呟いた。深く考えに沈んでしまう前に気の抜けたあっけらかんとした声がテレパスで届けられて来た。
『師匠~、ドル師匠~! 話が終わったんならプロテクションの魔術プログラムの譲渡に応じて下さ~い』
____
いつもお読みいただきありがとうございます。
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