マジック サーヴァント マイスター

すあま

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第53話 プロテクション"シヴィア・ペイン・アンサー"

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『師匠~、ドル師匠~! 話が終わったんならプロテクション"シヴィア・ペイン・アンサー"の魔術プログラムの譲渡に応じて下さ~い』
「ワシはお前の師匠ではないぞ? フォールーンとやら」
『オリジナルが自らの記憶を使いましたからね。それにまだ切り札もありますから、裏切られても大丈夫ですよ』

 フォローする様にラドが伝えてくるがその言葉に驚きと疑問に女性陣は口を揃えて言う。

「「「切り札?」」」
「何をするつもりぢゃ?」
『まだ秘密です』
「秘密!? テレパスリンクで思考の優劣を情報統制ぢゃと!?」
『伝えたい事と伝えなくていいことの取捨選択くらいは出来ますよ。優先順位タグもつけられますので。最もゴブリン達は好奇心旺盛過ぎてなんでも暴きに来るので、その問いに答える様に頭に思い浮かべてしまうと伝わってしまうのですけれど』

「なんて意味のない……」
『必要性を感じませんでしたので』
『で、私の魔術プログラムは要らないんですか?』
「要るわ! こうなったら貴女が頼りよフォールーン」
「ふむ。という訳で頼むぞ。フォールーン」

『それは、いいですが、師匠と呼ぶのは無しですか?』
「あぁ、分かった好きにするがええ」
『やった! 此方がそのプログラムになりまーす』
「これはまた随分と……複雑で繊細ぢゃな……」

 想像していたよりも多い情報量に処理がいっぱいになり、苦悶の呻きが口から漏れる。直ぐにラドがドル師匠に着けたサーヴァントから処理支援をかける。

「くっ……ぬっ? なんぢゃ!?」
『コボルドやゴブリンに使った、思考リソース支援です。やり慣れてますから大丈夫です』
「馬鹿な……脳の……種の欠点を克服させるカラクリが外部からの並列思考ぢゃと……!?」
『思考同期と、記憶同期を"超高速回転でエネルギーを飽和させたエーテル"で行ってます。ナノセック単位で電子の回転力をエーテルで増幅し、馬車の車輪の様に運用させる事で生態脳の電子を超高速移動しています。そのおかげで大量のデータ処理が可能になっています』

「なるほど、原理はさっぱり分からんが処理が追いついたのは分かった」
『その内、理解できる様になります。そろそろ譲渡が終わりますね。これがあれば全員リンクするという事でよろしいんですよね?』

「解っておる。まずは先にこのプロテクション付きサーヴァントを三人に着けてからぢゃ」
「これで護りたいトコは大丈夫なんですね」
『えぇ、先程プロテクトにテストアタックしたところかなりの痛覚データが返ってきたので問題ないかと思います』
「あら、アイルスのコピーとは思えない反応をするのね」

『先刻、クリスティさんがオリジナルとは違うと断言されたので差別化を図った方がよろしいかと判断しましたので』
「それは、貴女がクフィーリアより、輪をかけてデリカシーの無い事を言うからよ」
『マスターひどいです。私ってそんなにデリカシーがないですか?』

 いきなり現れる風の精霊が抗議する。スピリット・スキャンの影響か自我が強化された気がした。

『クフィーリアも私も生殖器官や排泄器官がない為、生体の感情の動きが判り辛い所為かと思われます。クフィーリアには擬似恋愛感情は存在する様ですが私にはありません。オリジナルの記憶から他人に生殖器官や排泄行為を見られる事が恥ずかしいと言う感情はデータとして持っていますが情動はありません』
「いやいや、アイルスなら例えそうでも言動を抑えてくれたりするでしょ?」

『……真実を話さず、ゴブリン達に覗き見されるのも構わないとお考えなら、私も黙っていましたが?』
「それは!」

『それは、ゆくゆくは厄介なトラブルの可能性があったので敢えて先に言いました。健康管理と強化を行う上で身体の隅々までスキャンして保管し、補完するのでゴブリンでなくとも私には全ての情報が集まります。そして、オリジナルはそれを知る事が出来るのです。例えプロテクトを行ったとしても。それを実行する程、私もオリジナルも愚かではありません。出来るけれど実際に行動して良いことと悪いことの分別は持ち合わせているつもりですが、貴女方やオリジナルが生体である以上、恥ずべき行為を選択しなければいけない未来がある可能性を否定出来ないので極力そうならない為にもデリカシーと言う言葉で不確定要素を曖昧にするつもりは私にはないのです』

「本当に何を言ってるのか、分からないのですが」
「もっと簡単に言ってくれんかの。大凡、恋愛感情で裏切る芽を持ってしまった場合それを見逃さずに潰したいとか具体例で言って欲しいのぢゃ」
『師匠の具体例そのものを指していますね。生殖器官を持つと言うことは発情から恋愛感情まで行動を左右される可能性があり、悪魔族の奴隷にオリジナルが同情や恋慕を持ってしまったり、悪魔族の主人がその対象だった場合、貴女方はアイルス個人を助けるつもりで危険な解決策を選ばなければなりません。特にクリスティさんはその様な状況への覚悟はできてないと思われます』

「わ、わたし!?」
「その時は私が彼女を護ります」

 マリアンナが即答を返した。

『分かりました。脅す様な言動で申し訳ありませんでした。それではプロテクト(仮)が出来たので三人にグリッド・リンクを行います。宜しいですね?』
「ええ。やってちょうだい」

『先ずは、プロテクション"シヴィア・ペイン・アンサー"のプログラムを管理者権限でコピーしたサーヴァントから発動し、三人へ着けます。後でご自分達でちゃんと理解して下さい。でないとプライベートの情報が漏れます』
「わかったわ、マルシェラはお母さんと一緒にやりましょう」
「うん」

 素直にマリアンナからの言葉に肯くマルシェラを見て和んでいる中、ラドは開始を宣言する。

『では、始めますね。グリッド・リンク』

 別に風景的に変わった事もなく、テレパスが繋がれた。その途端一気に情報量が流れ始める。その情報量と共にまるで鼓膜が破れんばかりの拍手喝采と野次が三人の脳に送り届けられる。まるで感じだった。

「ヒャッハー!」「女だー!」「しかも美人だぜー!」etc……
『うるさい。発言権利剥奪』
「い、今のは?」
『フォールーン、統率は任せているはずだが? 逸脱出来る者が多い様だな』
『どうせ、情報は見れないんだから馬鹿な発言くらい許してあげても良いじゃない』
『オリジナルの家族の心理に波風立てて、これ以上遅延するのは許されない』
『あっと、それはいけないわね。でも、私のマスターは敗北した時点で私を見捨てたみたいだから一切連絡がないわよ。だから知ってる事って少ないのだけど。一応私がここに来た地点の座標は出せるけどいきなり転移させらとばされたから、マスターの拠点もわからないわ』
『手がかりはなしと?』
『そう。遅延も何もゼロから……いえ、マイナスから探さなくちゃいけないと言うのが現状ね』

 ラドは焦燥感と言う感情が魂から少し起きたが、感情物質を分泌または、それに準ずるプログラムを備えずにいるのでその感情は、すぐに霧散した。

 ◆

 フォールーンの転送された場所を起点に悪魔族の大陸へ向けてサーヴァントを飛ばす計画を立案。その用途に合わせて、長距離音速飛行型が設計された。あちらに着いたらサンド・グレイン級を散布、現地でマテリアルを確保してソード・アームズを生産して捜索範囲を拡大する計画だ。その頃になって、ウザ勇者ことジルドレッドの"再教育"が完了する。

 しかし、ここでクリスティとマルシェラが兄との行動に拒絶を表した。仕方が無いのでジルドレッドは万が一を考え内陸側の捜索に入ってもらう事とした。

 すると、彼は

「なら、俺の役割たるマルシェラの護衛は一旦終わりだな。実家に帰ってゆっくりしながら捜索するわ。じゃぁな」

 そう残してさっさと帰ってしまった。ウザがられているのを彼も感じ取っているからなのだろう。ラドがそっとしておいてやるかと思ったのは間違いだったと後で思い知るが、それはもう少し先の話だ。


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いつもお読みいただきありがとうございます。
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