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第58話 勇者、覚醒認定
エーゼルバニア・フォレスト←→ガレラッチア テレパス
『ところで、クリスティとマルシェラは母さんに許しを得て来たんだよね? 他に誰か来てる? 父さんだけでちび共見てるの?』
『ジルドレ兄がマルシェラの護衛って言って来てたよ』
『ジルド兄さんが!?』
『彼は現在、教会から呼び出され、別行動に入りました』
『ん? じゃぁ、ジルド兄さんとも話せるのかな? 教会に行くなら注告した方がいいかも……』
『オリジナル、今し方、彼に着けたサーヴァントからのリンクが途絶えました』
『え?』
『ジルド兄さんは、今の話を聞いてたの?』
『繋がる前に教会に入られたので、後で記録を見せて合流の予定でした。なのでまだ知らないはずです』
『教会入り……』
『そうです。勇者候補の認定も教会が発行したものですから』
『嫌な予感しかしない……』
『もはや、教会は鬼門以外の何者でも無いですからね』
◆
件のジルドレッドは聖王都に着くと真っ先に教会本部へ足を運んだ。大きな門を潜ると司祭が気付き、近寄って来た。
「よくぞ参られた。ジルドレッド様。勇者候補、勇者、英雄候補の中で一番のご到着ですぞ。さぁ、先ずは女神様へ祈りをどうぞ」
「何があったのです?」
「魔王の覚醒因子が発生しました」
「魔王の? 魔王ではなく? 魔物の類ですか?」
「そこまでは分かりません」
『魔王の覚醒因子? 魔王に繋がる何かでしょうか?』
『あ、そうか。ここからは教会での儀式に集中したいから一度テレパス切るよ。ただでさえ魔法を悪魔族の技術って目くじら立てる教徒が多いから』
『テレパスリンクのみにして、接触念話にしておきますね。これならほぼ気付かれることはありませんから』
『了解』
テレパスリンクから押さえられていた会話のボリュームが完全に消えた。しかし、5分に一回ラドに信号を送り続けるジルドレッド専用のサーヴァント。そんな会話の間も司祭に連れられて祈りの間へと通される。
「では、神官長をお呼びして参ります」
「分かりました。その間祈りを捧げております」
司祭が退室すると五神像が眩く輝く。その光に思わず目を閉じ、次にジルドレッドが目を開くと、何もかもが白い空間に居た。
--久方振りですね。異界の者、ジルドレッドよ--
強烈な存在感を放つ光の人の像がいきなり目の前に現れた。その瞬間ジルドレッドは白い空間にいる事も認識する。
--しばらく会わぬ間に、弛まぬ努力をした様ですね。これまでの勇者候補の中で群を抜く能力の上昇です--
「!?」
ジルドレッドは、ラドによる能力引き上げやヘルスサポートの自覚が無かった。『多少体が軽くて早く走れるなー』と思っていた程度だったのでここに至って、ラドの再教育のせいだと気付いた。
--この小さな人形はなんでしょう? ……はて? 魔法か?--
「あ、それはぁ~……」
弟の分身が作ってジルドレッドにつけたアーティファクトと主にプライドが先に立って言えなかったのが功を奏した。後にジルドレッドは知る事になる。
--この様な技術を造れる者がおるとは、面白い物を見つけたものじゃのぉ--
「え、えぇ、とある遺跡みたいな洞窟からの戦利品で」
--ふむ? このアーティファクトは従来の思想からも逸脱しておる。まるで見つかることを恐れているのかと疑う程の器量、それでいて高い技術水準とは。どれ、勇者らしく魔法などでは無い我等の技術で運用できるものとしてやろう。それと今回からは、勇者候補ではなく勇者と名乗って良いぞ。ジルドレッドよ--
「ゆ、勇者……!!」
ラドのサーヴァントが光り輝き、信力により作り替えられていった。その事に重大な問題が生じているが、ジルドレッドはそれに疑問を持たないのだった。
◆
奴隷キャラバンより、少し離れた森の中でこれから夜だと言うのに伝書鳩を飛ばす不審な人物を監視するサーヴァント。その視界をテレパス回線内に設けた会議場に大映しして口々に疑問を出すアイルスの人格コピー達。
『第一回、[コイツどこの所属か?]クイーズ!』
『いやー、わかんないなー(棒読)、奴隷盗賊?』
『いやいや、奴隷の欲しい、どこぞのお貴族様かもよ?』
『でもさー、王国の密偵とかー、帝国のスパイとかー、諜報員なのは明らかだよねー?』
『まぁー、人間にしては頑張ってるよねー』
『意見は出そろいましたか?』
『意見も何も、オリジナルの奴隷からの殺害事件に始まって、ミュトス撃退にジルドレッド兄さんの教会呼び出し音信不通とか一連の状況証拠からも、最早考えるまでもなくない?』
『それを言っちゃぁ、楽しめなくなるじゃないか』
『随分、僕ら加速時間内に居たせいで人間らしい感情を模倣できる様になったよねぇ』
『んじゃま! お待ちかねの答え合わせ行ってみようー!』
やんや、やんやとはしゃぎ立てるG.I.Aのコピー人格達。新型ソード・アームズ改め、シザー・アームズ(10μm)を文書に忍ばせて置いたので直で読む事ができるのだった。手紙をエーテル・スキャンする。3Dデータが出来上がりそれを伸ばすとインクの位置もそのままで読めた。
『へぇー、教皇直属なんだー』
『なんとなく読めるけど、こりゃ暗号と言うより別言語だねぇ』
『教会は神聖語とか使うんだっけ? ラキムゲルの頭ん中に言語体系あるっしょ、持ってきてみぃ』
『どれどれ? あ、コレだ。じゃ、配布ー』
『んー。まずは、欲しいとこだけピックアップしてからにしてよって、なんだこれ三千程の単語しか組めないの? お粗末な体系だなぁ』
『日常で使わないからこれで事足りるんじゃないの』
『ラキムゲルが勉強不足なのもあるかも知れないよ』
『兎も角、翻訳したよ』
--ラキムゲルに不審な動きなし、されどオークションには若い男五人のみしかせず、ガレラッチアを離れるのか荷造りをしている。カンテラは今のところ見あたらず、次の報告を待たれたし ホーリー教皇直属部隊 デカルソン--
『なんだ、何にもわかってないし、得られる情報も大した物じゃないねー』
『じゃぁ、手紙に忍んだシザー・アームズ君を人格引き上げ推薦出してしまおう』
『あ、それ、ナイスだねー。僕ら自由意志押さえつけられてるしねー』
『それ、サボりたいを正当化してるだけだろー』
『うん、わかるわー』
『そーそ、怠惰を貪っていたいよねー』
アイルスの人格コピーは興味のあることならトコトン追求出来るがその分他が疎かになる処もしっかりとコピーされていた為、"怠惰"を覚えてしまっていた。
『それじゃ、報告と承認回しまーす』
『サンセーイ』
『賛成多数~』
『反対ゼロ~』
G.I.Aではオリジナル抜きで度々、多数の会議が行われているのだが、大体がこんなノリであったのだ。
◆
オークションは、女性を出していない事が不評を買ったが適当に頭を下げ"お布施"と言う名の奴隷代金を貰って、オークションステージを片付けさせた。その最中にG.I.Aから報告があがって来た。
『なんだ? 監視者? あのカンテラがなんらかの対魔の能力があったから壊してしまったが完全に破壊したのはミスだったか。馬車の床も塞がなきゃいけなかったし。予測よりも早く動いてるな。ラキムゲルを隠蓑にするのは限界があるか……』
『教会の奴等なんか皆殺しでいいじゃん』
『いや、戦争意識に流され過ぎだろ。殺した事への禍根云々はヘルが言ったんだぞ』
「それは、そうだけどね』
『教会の動きについては、後の後で対処だな。知らない技術を持ってたら欲しいし……ん? 承認? あー、潜入調査ね。じゃぁ、次は……ギューフとウィンは使われたのか。G.I.Aのせいで影が薄くて忘れそうだな。じゃぁ、ハガルで承認っと』
教会への潜入は魔王も果たし得ない所業である事だが、アイルスは自覚なく実行したのだった。
____
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