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第64話 カヲス⑤ 言葉の便利さと醜悪さ
『一応、制圧プラン進めておこうか。何があるか分からんし準備だけでもしておこう』
『んー。賛成51%』
『準備だけ、準備だけ』
『賛成60%』
『まぁ、準備だけ』
『あいつ、エーテル漏らしながら戦ってるぞ』
『大方、"身体強化"系と"乗っ取り"で消費した分が霧散してるんだろう』
『1km四方の結界じゃデカすぎたんじゃないか?』
『結界内部に残った特殊エーテル量が多すぎる? だが狭い結界だとカンテラの出してたガイガーなんたらで結界を破壊されかねん』
『特殊エーテルを分解と同時にマナ・アドプション全開でエーテルを枯渇させればええやん』
『仮にマナ・アドプションを奪われていたとしても循環システムの構築まで手は回らんだろうし、作業工程をオミットした上半身のみのフレームで増殖させれば特に支障なく倒せるね』
『倒せるのは分かってるけど侵食対策が出来てない以上、迂闊に手を出すのは下策だ』
『対策を考案しつつ、枯渇を狙うのが望ましいんじゃない?』
『ならば、枯渇を狙いの静観だな。どれ位で枯渇する?』
『予想は8分』
『長いな』
◆
「お前こそ、その行いが格好良いと思ってんのか?」
「ナニ? 貴様、女神様ガ認メタ勇者ヲ愚弄スルカ!?」
「似てないが兄弟なんだろう? 悪魔族落ちしたからって奴隷にしただけで飽き足らず、丸腰のこの子を手にかけるつもりか? しかも、まだ成人してねぇじゃねぇか。テメェそれでも兄貴か! ただの大人としても見過ごせる話じゃねぇな!」
「見タ目ニ惑ワサレルナ! 其奴ハ、魔除ケノ燭台ヲ破壊シタノダ!」
ギリギリと金切音をさせ、鍔迫り合いをしながら互いに憎悪の念を乗せた『大義名分』と『己の正義』がぶつかり合う。
◆
『オリジナルにはもう一度死んで貰って、逃げるのはどうだろう?』
『生き返ってるとこ見られてるから無駄じゃない?』
直後に、結界最前線の個体からアラートが発せられた。
『緊急警報、緊急警報エーテル物理侵略による上書きを確認! 緊急削除実施! これより現個体名No.23052はG.I.Aより永久離脱します。同胞よ、物理侵略時の侵略パターンデータを最後に送る。健闘を祈る』
『緊急警報、緊急警報エーテル物理侵略による上書きを確認! 緊急削除実施! これより現個体名No.46855はG.I.Aより永久離脱します……』
次々と届く犠牲者からのメッセージ。にも関わらず彼等はポーズしてた感情らしい感情を排した冷静な判断で対処していく。
『侵入!? 仕方ない、体はくれてやれ。データの消去を急務。思考加速のデータを渡すな』
『個体No.4万番代、6225、6256、7881~7899侵食率何も13%強、データ消去完了までは20 PicoSec』
『くっ。一旦、侵食を受けてない個体を退避。対局構成エーテルを生成、高圧高速回転で目標構成エーテルに物理接触させて、エーテル初期化して取り込め。時間はかかるが結界構成と維持に使える筈だ。同時に侵食に対する防壁を構築、反撃の機会を窺え。迂闊に近づけば取り込まれるぞ』
『了解! もう、やってる』
『あのエーテルの構成スキャンで何処かおかしな点は?』
『おかしいなんてものじゃない! まるで生き物そのものだ』
『なるほどな』
『クソッ! 食い止められない!』
『改めて結界を貼れ。現状を維持するのだ』
『……やったぞ、奴等、結界内だと侵食率が異様に遅くなる』
『あのエーテルは奴等のエネルギー源……魔力供給みたいなものか?』
G.I.Aは混乱していた。まとまりなく自由に考察し続けるアイルスの模倣並列思考は、新たな敵に相対した事で形態を変えなければいけない局面を迎えていた。
◆
「ちょっと! タカシ! いきなりどうしたのよっ!」
「黙レ! 悪魔族ノ女!」
あ。アレは、ダメだ。僕みたいな子供でも分かる。何でそれを簡単にしちゃえるのか理解に苦しむ。天使って馬鹿なのか? あ、人の作品勝手に乗っ取って好き放題する位馬鹿だから人の気持ちが、ましてやカップリングの二人の気持ちとか平気で踏みにじれるんだな。大義の前に個人の気持ちなどとか言いそう。
「ちょっと! その言い方は酷いでしょう!」
「好いた女に心配をかけた上で、その物言い。まっことデコグリフの勇者様はご立派よの」
「ハッ! 悪魔族ノ地上一掃ノ大義ニ比ベレバ個人ノ恋愛ナド一時ノ迷イ! マシテ悪魔族ノ女ナド狂言ノ極ミ!」
あちゃー。言ったよー。ジル兄この後大変だなぁ。
「アンタねぇ! 何よ、その口調! 空気読めない空気みたいな癖に勇者が務まるわけないでしょう!」
「旧世ノカビノ生エタ型落チノ種ノ血ガ入ッタ分際デ!」
「片言な似非外人やめなさいよ! ウザいのよ!」
「フンッ、ヤハリ、悪魔族ノ血ニ毒サレシ者ハ言ウ事ガ違ウナ。意味ノ判ラナイ罵倒デ濁シテ来ル」
「は? あんたタカシじゃないわね! さっきまでタカシだったのに!」
「ハンッ、たかしたかしト小煩イ獣メガ、ワレハ勇者ニシテ天使ナルゾ! 頭ガ高イ!」
……この大人達に解決策を委ねてたら、時間がいくらあっても足りないな。殺されてやるのもなんか馬鹿らしくなって来た。今のうちに別プランをG.I.Aに上げておこうかな。力押しってバカっぽいけど。個人の尊重も命の尊さを唱えもせずに都合の悪い事を便利な単語や難しい話で煙に巻いたり口当たりの良い言葉で思考停止させて民衆を謀る。やり方はやはり間違っている。父さんと母さんなら、きっとだいじょうぶ……サブ治、出番だ。
「元人間で、勇者の弟……、悪魔属にされた半分は教会の責任ですが、女神様はその責任を、『僕を封印、もしくは殺害する』事で解決出来るとお考えで宜しいでしょうか?」
「吠エルナ! 悪魔!」
「聴く耳も持ち得ない『サルの如き、純粋無垢』な方でしたか。失礼、困りましたね。言葉が通じないのでは交渉も何も出来ませんね」
「貴様! 仮ニモ勇者ノ弟デアロウガ!」
「はて? 僕の兄は、多少ウザいですが、弟を問答無用で斬り捨てる様な外道は絶対にしません。あなたは兄の皮を被った外道です」
「邪魔ダ!」
「くわっ」
大剣の人を吹き飛ばし、ジル兄を借りた何かが、ジル兄の貌で、こちらを睨みつけて来た。コワイ。
「天使ノ我ヲ外道ト言ッタナ?」
「兄に弟を殺させるのは、外道とは言いませんか? 女神の使徒」
「黙レ! 悪魔!」
「凄い、凄いな。天使だっけ? 兄の生体脳を使ってるのかな? まるで本物の人間みたいに挑発にも反応するし本当に怒って見える! 憑依で引っ張られてるのかな? 本当に表情豊かで生きてるみたいだ!」
「ウォオオオオオオオ! まだまだぁあああ!」
大剣の人が突如として、ジル兄に襲いかかる。
それをジル兄が右へ左へいなし、受け流す。ジル兄の技量か、天使とか言うペ天使の所業か定かではないけれど大剣のお兄さんがちょっと劣勢に見える。
右上段からの袈裟斬りをそっと剣の峰を当てて力に逆らわず足元へ逸らしつつ刃の軌道から左足を軸にバックステップした。
ズドッ
重い音を響かせて振われた大剣が斜めに地面へ突き刺さる。その大剣に片手剣で大剣の上を抑えて大剣の人を睨み付けるジル兄。
「なんだ! 何を言っている!?」
「幻聴デモ聴コエタカ? 随分ト余裕ダナ?」
大剣使いが突然、誰にでも聞き取れる声量で言った事に対しジル兄が応えたが、そのまま目の焦点は、ジル兄を捕らえず固まった様になる。
妙な間に女神の使いとやらが冷静になったのか、語りかける様に喋り出す。
「光ノ民ノ子ヨ、何故、分カラナイノデスカ。悪魔族ナリタテトハ言エ、ユクユクハ光ノ民ノ血ヲ根絶ヤソウトシテ来ルノデスヨ」
「いや、僕はバリバリ光の民の子ですが?」
サブ治が思わずツッコミを入れた。
「今ハ、アンデッドデショウガ! 死ンデ甦エル奇跡デモ使ワナイ限リ光ノ民デアル筈ガナイ!」
「でも、心臓動いてるし息も吸ってるよ?」
「ハ?」
「音声増幅……ほら」
トッ……トッ……とまるで虫の息の様な弱々しいアイルスの心音が周囲に響いた。
「馬鹿ナ! アリ得ナイ! ソレニ存在セヌ魔法ヲ使ウナド! ドンナ奇術ヲ使ッタ! 私ハ騙サレナイゾ!」
「えー……」
サブ治主導を超えてアイルスの本音が思わず口から出てドン引き表現してしまう。
動向を観察する為通常時間まで戻していたG.I.Aは予測はしていたが、どうにも外野が多すぎて思うように展開できずにいるオリジナル達を尻目に天使を解体するか、どの様に教会に目をつけられないかを再び加速時間へ入り検討した。
____
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