マジック サーヴァント マイスター

すあま

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第75話 ビリから始める真っ当冒険者への㊙︎特訓術④

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読みに来てくださりありがとうございます。私事で長らくお待たせしています事、深くお詫び申し上げます。この物語だけは完結させたいので応援のほど、よろしくお願いします。
それでは、お楽しみください。


 ◆

デコグリフ教国 クランデリア自治領
 馬車広場 停留場

 馬車の手配までを終えたジェシーは、キャシーに三人に夢で流す、経験の要点を纏めアップさせる為に地面に枝で教えるべき項目を落書きしていた。そこへようやく三人がへばりながら駆け付けて来た。

「姐さん、はぁ、はぁ、俺、はぁ、ら」
「やり、はぁ、はぁ、きり、はぁ」
「ました、はぁ、ぜ」
「もう限界」

 魔法使いであるアンディは汚れるのも構わず、その場に仰向けに寝転がる。

「お疲れさん。ほれ、飲んどけ」

 ジェシーがポーチより大きな腰巻きバッグから350ml程の大きさの黒紫の瓶を三人に投げて寄越す。三人ともどうにか落とさず受け取ったが奇妙な違和感を覚える。

『急に投げないでください。動体視力補助が間に合わなかったら台無しにしてましたよ』
『おいおい、これくらい補助なしでやって貰わないと、この先思いやられるけどな』
「あ、姐さん、ありがとうごぜえやす」
「いただきます」
「いただきやす」

 アンディは仰向けから安座でかしこまって二人はしゃがんで栓を口で抜くと一口呑んだ。

「すっぺぇ! のにうめぇ!?」
「ワインじゃねぇ!?」
「姐さん?」
「ワインビネガーだ。筋肉痛に効くぞ」
『正しくは、体内の疲労物質の除去に効率良く酢がききます。活性酸素の除去にも最適で、これを飲んでから一眠りすれば、代謝が上がります』
「はぁ……?」

 三人は雁首揃えてまるで宇宙人でも見る様な顔で話を取り敢えず鵜呑みにした。

「よし、馬車に乗れ。もう時間はないぞ、行きにお前たちの仕事の完了だけ報告に行く。報酬はこれからのクエストを完了してからだ、モタモタするな、ほら、早く!」
「そんな、姐さん、せめて着替えを」
「馬車ん中でやれ、ほら!」

 大の大人が馬車に急かされ乗る。

「この馬車敷物がやわらけぇ」
「ひゅ~♪」
「こりゃ、長距離も楽だな」

「早く着替えろ、少し予定より遅れて居る。すぐに出発だ」

幌が閉じられる。疲れた体でそれぞれ着替えていると頭にキャシーから、詠唱が届く。

インザネーモブキャサリンキャサリンのの名においてアイプレイトゥークロノス ゴッドブダイ時間の神クロノスに願い奉るアジャスザアクセラレーションベネフィットゥーワンポイン トゥウ加速の恩恵を1.2に調整する
コール! メタボリズム アクセラレーション代謝加速
コール! エンハンスド セル アクティビティ細胞活性強化
コール! アクセラレーション マッスル ウルトラ リカバリー筋肉超回復加速
コール! スキル メモリー シェアリング技能記憶共有化
コール! エンハンスド メモリー コンソリデーション記憶定着強化
彼らに安らかなる癒しを与え給え、センドトゥー テンドール アンディ モンシア、
スーパー エフィシェント スリープ超効率化睡眠!!』
『なっスリープ!?』『ちょっ待っ』『チャック位閉めさせろ!』

 深い眠りに誘われる魔法を三人の魔力が勝手に吸い取られ、平等に分配されるところを強制的に実行された。故にドサドサドサッと三人が敷いてあったマットの上に倒れた。

『よし、出発する。5分もすればそっちに着く』
『乗ったら、どっちが先に寝ておく?』
『キャシーで良いよ。アウェイク目覚めよがあれば睡眠時間も思いのままだからな』
『ありがと。分かったよ』
『なんだ、待てなかったのか?すぐに合流したかったんだよ』
「『それに、たとえ寝かしつけてるとしても、むくつけき漢どもの中にジェシーを一人で置いておきたくなかったからね』」
「『バッカ、いつも護られてる奴の台詞じゃねーよ』」

 繋がっている為、心の機微も伝わってしまうジェシーの気持ちを知りながら、キャシーは揶揄うように本心を伝え、頬を赤らめるジェシーを愛でる。ジェシーは、隠すことが出来るのに隠さずに本心を伝えてくるキャシーに照れながらも自分の方が強い事実を突きつけながら返す。いつもの二人のやりとりだった。

「今日は、"品"良くしなきゃだね」
「このおじさんたちの成長が終わるまでだ」

前世とトータルで考えれば歳下になる三人を指しながらジェシーは、馬の足を緩やかにしていく。

「『やぁ、久しぶりだね。今回もまた、頼むよ』」
「ブルルルルッ(任せろ)」「ひひひひんっ(今度は何処へ行くんだ?)」

「『ゴブリン狩りだよ。キャシーのおかげで馬まで仲間だ。旅程も捗る』」
「『馬しか使えないスキルも覚えちゃうけどね』」
「『他の馬にも使えるようになるなら、"四足疾駆"も"地ならし踏み潰し"も長い目で見れば悪くない必要経費さ』」

 見事なまでに停車の余韻も無く止まった馬車の御者席からジェシーが左手をキャシーに差し出す。やや、高めの位置の手にジャンプしながら掴むとジェシーが事も無げに自身の頭上まで振り上げ、曲芸の様にくるりとキャシーが回るとジェシーの右にすとんと収まった。

「まだ、音が出るね」
「意地悪。足から着地すれば音なんか出ないもん」
「まぁ、寝ておきな。軽業の記憶はシェアリングするの?」
「一応実力差は見せつけないとね。最初だけシェアしてあとは彼らの努力に丸投げ」
「そっか、おやすみ」
「おやすみ、オートシェアリング、セルフスリープ」

 御者席の狭い上に器用にジェシーの膝を枕にキャシーは眠りについた。

 ◆

「アウェイク」

 ぐごごごぎゅるるるるるぅぅうぅうぅぅ……

 キャシーが可憐な声で珍しく口に出して詠唱したが、丁度誰とも知れない物凄い腹の音が鳴ったため、三人は呪文では無く、その音で目を覚ましたと思った。直後来た壮絶な空腹感で怠い身体を横たえたまま、呟いた。
「「「腹減った…」」」
「お前らも起きたのか」
 テンドールが首だけで二人を確認する。
「なんか、頭の痛くない二日酔いですね」
 アンディは動きたくないのか目も閉じたままだ。
「ワインビネガーで酔い潰れたわけじゃあるまいし……けど怠いな」
 モンシアは、中途半端に閉められたチャックを閉めながら宣う。

「『みんな起きました? もうすぐ目的地に到着します』」

 キャシーの声が頭に直接と耳から同時に入ってくる。半ば慣れ始めたが、前側の幌が捲られ、キャシーが三人に顔を出す。

「焦げ付き案件のゴブリン狩りだから油断しない様に頑張りましょう」
「油断?作ったって言う武器でどうにかなるんじゃ無かったのか?」
「あくまで保険程度の……罠みたいなモノですから、それに頼らず己の肉体で頑張ってください」
「なんだなんだ? 楽勝なんじゃないのか?」
「一匹一匹は大した強さではないのですが数が多いと思われます。まだ村があるのが不思議なくらいと覚悟しておいてください。長丁場になるので」
「マジかよ」
「コレでも前から周到に準備し、出来るだけ急いだ方です。先ずは、その箱の中の包みを開いて腹を満たしてください。干し肉のワインビネガーびたしの炙り焼きをメインに干し魚、味変にチーズとヒールポーションの原料の薬草ハーブ粉と塩を用意しました」
「うお、ホントにこれ保存食かよ」
「食べて精をつけてください」
「ありがてぇ」
『そこは、「いただきます」と食べ物になってくれた命に感謝するように』
『御者は!?』『まさかこの景色』「姐御自ら御者を!?』
『信頼されてるからなこう言うレンタルサービスを受けられるんだよ』
『すげぇ、夢見た冒険者と俺ら居るんだな』

 『クエストの成功を重ね信頼を得て、人々の役に立つ冒険者』と言う理想像は、冒険者なら誰もが駆け出しの頃に見る夢だ。しかしその成功の道にたどり着けるのは、残念ながら3割を切る。
冒険者を育成する制度はあるにはあるがそれでもキャシーの弓矢が上達に至らない現実を見れば、推して知るべしである。
簡単に言うなら、女性であることも理由だが、軍隊の様に計算された戦略が学べる環境下でない上、人間関係のパワーバランスやそもそもパーティー連携の大切さが浸透していないなど複雑に絡み合った事情がある。
その上、領地陣営が破落戸ならずものにしか慣れない者の再利用システムが冒険者ギルドの経営である。もともと、『役立たずの人間が3割の生産性を出している』のだから、3割は黒字経営で成功の部類だった。それ故、テンドール達のように迷ってるだけのならず者がいつまでもまともな冒険者になれないのだが。

『姐御、キャサリン嬢、ありがとうございます』
『それは兎も角たべよう。同じ物を私達もコッチに用意済みだ。今度から町で調味料を探しておくと良い。いただきます』

 3人も2人にならって、食べ物に感謝する気持ちを感じ、続く

「いただきます」


_____
筆者の情報伝達の力量不足なのですが、デコグリフ教は女性の扱いを表向きには男尊女卑を否定し、かなり丁寧にしていますが、女性の同性愛者は認めていのうべきと偏った概念を持ちそれに疑問を抱くことすらありません。
 

____
いつもお読みいただきありがとうございます。
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