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激邪魔!私に嫉妬する王太子!

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あのグレイソン様の告白から数日が経ってしまった。
あの後彼から返答を求められたけれど私はうやむやにしてしまった。
だってまさか彼から告白をされるなんて…!!
などと、私が1人顔を赤くしていると叫び声…というか歓声が響き渡る。

「一体何の騒ぎ…?」
私は気になってしまい人混みの中を少しずつ進む。
やっと騒ぎの原因である王太子であるレイモンド様がいた。
けれど私の目に映ったのはレイモンド殿下ではなく彼の近くにいる私の元婚約者のマシュー様だった。
「マシュー様…」
つい言葉に出てしまう声を私は手で口を覆い隠した。
王太子である彼の正式な婚約者であるマシュー様の名前を呼んでしまうなんて。
なんと殿下は半端なく嫉妬深いらしい。
まぁ、ただの噂なのだけれど…。
「けれど、もし元婚約者である私が名前を呼んだとなるときっと」

殺されるかしら

私がふいにそう思った時私の前に大きな影が映った。
「お前今マシューと呼んだな?」
なんという地獄耳。
あんなに騒がれていたのに私の声が聞こえるなど…それにあまり距離も近いわけではなかったのに。
「呼んでませんわ」
私はいかにも涼しくそう言う。
「お前は…マシューに捨てられた令嬢だな?」
そう言われ私は少し頭にくる。
少し口が悪くしまうけれど正直あなたがいない時は私達はうまく行っていた。気弱だけれど優しい彼を愛していなかったわけではない。
幼い時からずっとそばにいて情はあるし何より彼となら政略結婚だとしても良い家庭が築けるとそう思っていた。
だから恨んでいないと言えば嘘になる。けれど相手はこの国の王太子でマシュー様のことを溺愛しておられる。マシュー様の幸せを思っての行動だったのだが…
「捨てられた?」
その言葉に私はとてもむかむかしていますわ。
えぇ、世間的には捨てられたように見えますわよね?けれど違いますわ。私はあなた方の為に身を引いて差し上げたのよ?
「あぁ。マシューは君ではなく俺を選んだからな」
「あら…殿下。貴方の愛しのマシュー様がいらっしゃいますけれど、そんな彼の昔からの幼馴染である私を貶しますの?」
そう…もう視界の端には映っている。
私の元婚約者が。
「アリアナ…!」
殿下よりも私の元に来るマシュー様に少し感激しましたわ。
「マシュー?」
殿下が愛しの目をマシュー様に向ける。
「アリアナに何もしてない?」
私の前に立ち殿下にそう聞くマシュー様は何処か大きくなられたかしら?なんだか…
「アリアナ…ごめん…。また迷惑をかけて…君の前には現れないつもりだったのに…」
「あら、それは無理ですわ。貴方様は殿下の婚約者ですもの。お目にかかる時は必ずありますわ」
私がそう言うとマシュー様は控えめに笑う。
「そうだね…けど本当に迷惑をかけるつもりじゃなかったんだ……ごめんね」
あら、また昔のおどおどマシュー様に戻ってしまったわ。なんて事を考えていると殿下がマシュー様を抱き寄せる。
「俺の婚約者だ」
私を睨みつけながらそう言う彼に私は優雅に微笑む。
「えぇ」
「…俺の!婚約者だ!」
「そうですわね」
少しだけ嬉しそうなのが表情に出るマシュー様を見て私も心からの笑みが出る。
「マシュー様。貴方のお名前まだ呼んでも宜しくて?」
「…そんな事ならいくらでも」
「ふふ…貴方は相変わらずお優しいのね」
「……アリアナ?」
「…殿下、私はマシュー様に恋をしたことはございませんわ。たしかに婚約者として彼の幸せは私も願っております。けれど彼の幸せは私ではなく貴方と共に一生を過ごす事…」
言葉にした時何故か胸が痛む。
あぁ、そう…私
「私に妬みを言う暇があればマシュー様ともっと楽しい事をなされたら?」
つい嫌味を言ってしまうのは許してほしい。
だって婚約破棄も素直に受け入れ今もまだ怒りも起こらない私にもこれぐらいは言いたくなってしまったから。
「…そうだな。アリアナ嬢の言う通りか」
そう言いながら殿下はマシュー様をまた抱き寄せ歩みを進めようとする。
マシュー様は私に微笑むと背を向け歩き始めた。
「…マシュー様…!」
私がそう叫ぶと彼は振り返る。
あぁ…そう、貴方は誰の言葉にも振り返る。だから、
だからその優しさがきっと
「私…貴方よりも幸せになりますわ」
私がそう言うと彼は少し驚いた顔をしてからまた微笑んだ。
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