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第7章 新国テンプルム
第355話 不穏な邂逅④
僕の血を飲んだことにより、『陽の覚醒者』という特異体質になってしまったゼルマラージャ。
とはいえ、『陽の覚醒者』にデメリットは無さそうなので、彼女が不機嫌なのがどうも理解できないんだけど、わざわざ僕のところまで難癖つけにやってきたのだろうか?
怒らせると怖いから、慎重になんの用か聞いてみよう。
「あの……気を悪くしないでほしいんだけど、この前僕とは二度と会わないって言ってたのに、どうしてそちらから来たんでしょうか?」
「う……うるさい! ち、ちと腹が……って……っただけだ」
「え? なんですか? 声が小さくてよく……」
「腹が減ったのだ! また貴様の血を飲ませろ!」
え~~~~~~~……………………。
僕のせいで『陽の覚醒者』がどうたらこうたらって文句言ってたクセに、結局僕の血を飲みに来たんじゃないか……!
素直に言ってくれただけマシかもしれないけど。
「なんだその顔は!? ワシをこんな身体にしたんだから、責任取るのが当然であろう!」
他人に聞かれたら誤解されそうなことを大声で言う吸血姫。
それを受けて、また眷女たちが近くにいるんじゃないかとつい見回してしまった。
かなりビビってるな僕……。
まあとりあえず、ゼルマラージャと再会できたのはありがたい。
ただ、こんな所でウロウロしているとまた何があるか分からないので、別の場所に移動することにしよう。
「場所を変えるよ」
人目に付かないところに移動してから、『空間転移』でまたテンプルム近辺の草原へと転移した。
そして、先日同様ゼルマラージャに指先から血を飲ませてあげる。
「うーむ、やはり貴様の血は特殊だ。一口飲む度、身体中の細胞が100歳若返るような思いだ。魔力も限界を超えて漲っていく」
『神の血』かどうかは分からないけど、僕は通常の人間じゃおよそ到達できないほど強化されてるから、その影響なのかも?
満足するまで僕の血を飲んだゼルマラージャは、また余韻を味わうかのように僕の指を舐め続ける。
「ところで、吸血鬼という種族は、人間の血が飲めなかったら死んじゃうのかい?」
僕は吸血鬼について疑問に思っていることを聞いてみた。
「いや、血を飲まずとも、食料のみで生命は維持できる。しかし、吸血鬼として強大なパワーを出すには血が不可欠だ。なので定期的に人間を襲ったりするが、我らにも危険は伴うので、無闇に襲うことはない。時たま異常に血に飢えることはあるがな」
やっぱりそうなんだ。
人間界でも同じような情報は伝わってるけど、吸血鬼の体質については、未だ解明されてないことが多い状況だ。
「ワシからも1つ聞かせてもらおう。貴様はヴァン……ヴァンルーグの血族、もしくは、そ、その……生まれ変わり……ということはないのか?」
「僕が勇者ヴァンルーグの生まれ変わり?」
「ワシが地上に出たとき、あの城から……貴様からヴァンの気と同じモノを感じた。てっきりヴァン本人かと思ってしまったほどだ。貴様がヴァンと無関係とは思えんのだが……」
なるほど、僕のことを『勇者』と間違えた理由はそれか。
言い終えたゼルマラージャは、真っ赤な顔をしてうつむいている。
吸血鬼として、これはなかなかレアな表情ではないだろうか。こうしていれば、素直で可愛いのに……。
ただ、僕とヴァンルーグは特に関係ないような気はする。僕の家系が勇者の血族なんて聞いたことないし。
ヴァンルーグには子供は居なかったみたいだから、もし血の繋がりがあるとしたら直系の子孫じゃなくて遠い親戚みたいな感じだろうけど、しかしそこまで含めてしまったら、該当する人はもっといるんじゃないだろうか。
生まれ変わりについては、さすがに神様にでも聞いてみないと分からないところだが、ゼルマラージャには申し訳ないけど、恐らく僕はヴァンルーグの生まれ変わりではないと思う。
まあ何かのきっかけで、僕の中に眠るヴァンルーグの記憶が蘇るという可能性も0ではないけど。
でも吸血鬼なのに、生まれ変わりなんていう非現実的なこと信じてるんだな。
どうしても、もう一度ヴァンルーグに会いたいんだろうな……その純な想いには、同情を禁じ得ないところだ。
「キミには申し訳ないけど、僕はヴァンルーグとは無関係な気がするよ」
「…………そうか。ククッ、ワシとしたことが、つまらぬことを聞いてしまったな。考えてみれば、貴様のような女たらしがヴァンの生まれ変わりであるはずがない」
「ええっ、僕が女たらし!? 全然ちが……」
「ふん、先ほど大勢の女にチヤホヤされとったのを見たぞ。和気あいあいと楽しそうだったではないか」
ア、アレが楽しそうに見えたのか!?
いや、吸血鬼のコミュニケーションは人間とは違うので、ひょっとしたらああいうのが楽しいのかもしれない……よく分からないけど。
「あんなに女を侍らせて、全くもって貴様は『勇者』として恥ずかしくないのか? ヴァンは一途な男であったぞ」
「い、いや、だから、僕は『勇者』じゃないし……っていうか、別に僕は大勢の女性に手を出してるわけじゃ……」
「貴様っ、クズ男のような言い訳をしおって!」
あれ、吸血鬼でも男女交際に関してはそういうのが一般常識なの?
てっきり、人間とは全然違う道徳観だと思ってたのに。
ゼルマラージャが言う通り、我ながら今のはちょっと責任逃れの発言だったかもしれない。
眷女たちが揉めるのは僕が原因だもんね……うう、不誠実な男ですみません。
しかし、吸血鬼に正論でお説教された人なんて、多分僕くらいしかいないだろうな。ちょっと凹む。
「小僧、手間を取らせたな。貴様などに何かを期待してしまうとは、ワシも耄碌したものだ。では今度こそ本当にさらばだ。貴様がヴァンと無関係ならば、もう二度と会うことも……」
「ああ待って! キミさえ良かったら、この国に住んでみてはどうかな……?」
「なんだと!? 吸血鬼であるこのワシに、人間の国で暮らせというのか? バカを言うでない、そんなことできるわけ……」
「ここに居れば、僕の血が飲み放題だよ?」
吸血鬼に対してこの勧誘の仕方、人間として合ってるのかな?
自分でも自信がないぞ。
「う……自惚れるなっ! 貴様の血など……………………そ、そうだな、仕方ない、うむ、大変不本意ではあるが、貴様がそれほど言うなら住んでやってもいい」
別にそれほど強く誘ってはいないんだけど、ゼルマラージャが承諾してくれたなら、細かいこと言うのはやめておこう。
多分この子、面倒くさい性格してそうだし。
「決まりだね。じゃあキミが暮らせるように準備してあげるから、少し待ってて」
「お、おう、よろしく頼むぞ」
ゼルマラージャは日中も平気で動けるし、静かなところに住居を用意してあげれば、問題なく暮らせるだろう。
一応、メジェールたちには内緒にしたほうがいいのかなあ……国内に魔族を住まわせるのは、きっといい顔しないだろうし。
少し罪悪感はあるけど、みんなには折を見て話すことにしよう。
P.S.
王宮に戻ってから、無邪気に果物をほおばるアピを見て癒やされる僕でした。
***********************************
次の更新は1週間後くらいになる予定です。
その後も不定期更新となりますので、どうか御了承いただければ幸いです。
とはいえ、『陽の覚醒者』にデメリットは無さそうなので、彼女が不機嫌なのがどうも理解できないんだけど、わざわざ僕のところまで難癖つけにやってきたのだろうか?
怒らせると怖いから、慎重になんの用か聞いてみよう。
「あの……気を悪くしないでほしいんだけど、この前僕とは二度と会わないって言ってたのに、どうしてそちらから来たんでしょうか?」
「う……うるさい! ち、ちと腹が……って……っただけだ」
「え? なんですか? 声が小さくてよく……」
「腹が減ったのだ! また貴様の血を飲ませろ!」
え~~~~~~~……………………。
僕のせいで『陽の覚醒者』がどうたらこうたらって文句言ってたクセに、結局僕の血を飲みに来たんじゃないか……!
素直に言ってくれただけマシかもしれないけど。
「なんだその顔は!? ワシをこんな身体にしたんだから、責任取るのが当然であろう!」
他人に聞かれたら誤解されそうなことを大声で言う吸血姫。
それを受けて、また眷女たちが近くにいるんじゃないかとつい見回してしまった。
かなりビビってるな僕……。
まあとりあえず、ゼルマラージャと再会できたのはありがたい。
ただ、こんな所でウロウロしているとまた何があるか分からないので、別の場所に移動することにしよう。
「場所を変えるよ」
人目に付かないところに移動してから、『空間転移』でまたテンプルム近辺の草原へと転移した。
そして、先日同様ゼルマラージャに指先から血を飲ませてあげる。
「うーむ、やはり貴様の血は特殊だ。一口飲む度、身体中の細胞が100歳若返るような思いだ。魔力も限界を超えて漲っていく」
『神の血』かどうかは分からないけど、僕は通常の人間じゃおよそ到達できないほど強化されてるから、その影響なのかも?
満足するまで僕の血を飲んだゼルマラージャは、また余韻を味わうかのように僕の指を舐め続ける。
「ところで、吸血鬼という種族は、人間の血が飲めなかったら死んじゃうのかい?」
僕は吸血鬼について疑問に思っていることを聞いてみた。
「いや、血を飲まずとも、食料のみで生命は維持できる。しかし、吸血鬼として強大なパワーを出すには血が不可欠だ。なので定期的に人間を襲ったりするが、我らにも危険は伴うので、無闇に襲うことはない。時たま異常に血に飢えることはあるがな」
やっぱりそうなんだ。
人間界でも同じような情報は伝わってるけど、吸血鬼の体質については、未だ解明されてないことが多い状況だ。
「ワシからも1つ聞かせてもらおう。貴様はヴァン……ヴァンルーグの血族、もしくは、そ、その……生まれ変わり……ということはないのか?」
「僕が勇者ヴァンルーグの生まれ変わり?」
「ワシが地上に出たとき、あの城から……貴様からヴァンの気と同じモノを感じた。てっきりヴァン本人かと思ってしまったほどだ。貴様がヴァンと無関係とは思えんのだが……」
なるほど、僕のことを『勇者』と間違えた理由はそれか。
言い終えたゼルマラージャは、真っ赤な顔をしてうつむいている。
吸血鬼として、これはなかなかレアな表情ではないだろうか。こうしていれば、素直で可愛いのに……。
ただ、僕とヴァンルーグは特に関係ないような気はする。僕の家系が勇者の血族なんて聞いたことないし。
ヴァンルーグには子供は居なかったみたいだから、もし血の繋がりがあるとしたら直系の子孫じゃなくて遠い親戚みたいな感じだろうけど、しかしそこまで含めてしまったら、該当する人はもっといるんじゃないだろうか。
生まれ変わりについては、さすがに神様にでも聞いてみないと分からないところだが、ゼルマラージャには申し訳ないけど、恐らく僕はヴァンルーグの生まれ変わりではないと思う。
まあ何かのきっかけで、僕の中に眠るヴァンルーグの記憶が蘇るという可能性も0ではないけど。
でも吸血鬼なのに、生まれ変わりなんていう非現実的なこと信じてるんだな。
どうしても、もう一度ヴァンルーグに会いたいんだろうな……その純な想いには、同情を禁じ得ないところだ。
「キミには申し訳ないけど、僕はヴァンルーグとは無関係な気がするよ」
「…………そうか。ククッ、ワシとしたことが、つまらぬことを聞いてしまったな。考えてみれば、貴様のような女たらしがヴァンの生まれ変わりであるはずがない」
「ええっ、僕が女たらし!? 全然ちが……」
「ふん、先ほど大勢の女にチヤホヤされとったのを見たぞ。和気あいあいと楽しそうだったではないか」
ア、アレが楽しそうに見えたのか!?
いや、吸血鬼のコミュニケーションは人間とは違うので、ひょっとしたらああいうのが楽しいのかもしれない……よく分からないけど。
「あんなに女を侍らせて、全くもって貴様は『勇者』として恥ずかしくないのか? ヴァンは一途な男であったぞ」
「い、いや、だから、僕は『勇者』じゃないし……っていうか、別に僕は大勢の女性に手を出してるわけじゃ……」
「貴様っ、クズ男のような言い訳をしおって!」
あれ、吸血鬼でも男女交際に関してはそういうのが一般常識なの?
てっきり、人間とは全然違う道徳観だと思ってたのに。
ゼルマラージャが言う通り、我ながら今のはちょっと責任逃れの発言だったかもしれない。
眷女たちが揉めるのは僕が原因だもんね……うう、不誠実な男ですみません。
しかし、吸血鬼に正論でお説教された人なんて、多分僕くらいしかいないだろうな。ちょっと凹む。
「小僧、手間を取らせたな。貴様などに何かを期待してしまうとは、ワシも耄碌したものだ。では今度こそ本当にさらばだ。貴様がヴァンと無関係ならば、もう二度と会うことも……」
「ああ待って! キミさえ良かったら、この国に住んでみてはどうかな……?」
「なんだと!? 吸血鬼であるこのワシに、人間の国で暮らせというのか? バカを言うでない、そんなことできるわけ……」
「ここに居れば、僕の血が飲み放題だよ?」
吸血鬼に対してこの勧誘の仕方、人間として合ってるのかな?
自分でも自信がないぞ。
「う……自惚れるなっ! 貴様の血など……………………そ、そうだな、仕方ない、うむ、大変不本意ではあるが、貴様がそれほど言うなら住んでやってもいい」
別にそれほど強く誘ってはいないんだけど、ゼルマラージャが承諾してくれたなら、細かいこと言うのはやめておこう。
多分この子、面倒くさい性格してそうだし。
「決まりだね。じゃあキミが暮らせるように準備してあげるから、少し待ってて」
「お、おう、よろしく頼むぞ」
ゼルマラージャは日中も平気で動けるし、静かなところに住居を用意してあげれば、問題なく暮らせるだろう。
一応、メジェールたちには内緒にしたほうがいいのかなあ……国内に魔族を住まわせるのは、きっといい顔しないだろうし。
少し罪悪感はあるけど、みんなには折を見て話すことにしよう。
P.S.
王宮に戻ってから、無邪気に果物をほおばるアピを見て癒やされる僕でした。
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