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第7章 新国テンプルム
第367話 神獣の誕生
「くっ……! 本当にしぶといでしゅね、ここまでタコ殴りにしてるというでしゅのに、まだまだこれほど元気とは……」
「というより、こやつにはちっとも効いてるようには見えぬぞ。剣でも魔法でも、ダメージを与えられぬのではないのか!?」
ドマさんとゼルマは、『神速の騎士』の効果で劇的に強くなっているので、一方的に『赤き天馬』――『炎駒』に攻撃を加えているが、その『炎駒』にはまるで効いてる様子はない。
どういうことなんだ? 冷却魔法じゃないと、ダメージを与えられないのか?
ちょっと使ってみるか……。
「氷界召喚、『絶対凍結地獄』っ!」
『界域魔法』なので結構強力なんだけど、コレくらいの魔法じゃないと、『炎駒』相手には効果が確かめられない。
殺さないように、なるべく威力を絞って撃ってみたけど……。
「グァフーウッッ!」
凍結波は『炎駒』に届く前に、身体から噴き出す炎で四方に散った。
見た感じでは、『炎駒』はノーダメージっぽいな。恐らく、最大の威力で撃ってもあまり効かないように思う。
『神の炎』に守られているから、攻撃が無効になってしまうのか?
「小僧の冷却魔法でもダメなのか!? これでは倒す方法が分からぬ!」
「くやしいでしゅが、諦めて退散するしか……」
僕の魔法すら効かなかったが、『炎駒』の防衛能力が高いのかというと、これまた何か違和感がある。
さらに付け加えるなら、『炎駒』の攻撃は非常に雑で、やたらめったら暴れているだけのような状態だ。特殊攻撃を使うような素振りすらない。
危険な攻撃をしてきたら、僕が2人を守ろうと警戒もしていたんだけど、この怪物には不釣り合いなほど攻撃能力が拙い。
これならたとえ『神速の騎士』を使わなくても、ゼルマとドマさんなら問題なく戦えるような気がする。
これほどのタフさを持ちながら、アンバランスな戦闘方法。
この異界の主かと思えば、特にそれらしい行動もない。
どうにも違和感だらけだ。
……ちょっとまてよ。
『炎駒』を包み込んでいるのは、解析では『神の炎』となっているけど、この『炎駒』は『神獣』ではない。むしろ、凶悪な魔獣だ。
それが神聖な『神の炎』に守られているというのは、どうも引っ掛かる。
ひょっとして、まさかと思うけど……。
僕は1つの結論に達した。
……試してみるか。
「万象原点に帰せ、『虚無への回帰』!」
これは様々な効果を消す、超強力な『解除魔法』だ。
僕の推測が正しければ、これを『炎駒』に放つことで、何か変化があるはず!
「グッフーウ……!」
『炎駒』の動きが少しずつ大人しくなってきたかと思うと、身体から吹き出ていた炎が徐々に消えていった。
これは通常ではありえないことだ。
何故かというと、『虚無への回帰』では攻撃魔法の炎が消せないほか、自らの能力で燃え上がっているような場合も無効にできないからだ。
例えば火の精霊『火蜥蜴』とか『燃えさかる毒蛾』の炎などには効かない。
しかし、呪いや封印、バフ・デバフなどによる炎は無効化できる。『炎駒』の炎は、その類いのモノだった。
「なんと! 『赤き天馬』の炎を消すとは……凄いではないか小僧! よし、いけるぞ!」
「これなら直接剣をたたき込めるでしゅ! 喰らえっ!」
「待って2人とも! 攻撃はしないで!」
「な、なぜ止める!?」
「そうでしゅ、このチャンスを逃すわけには……な、なんでしゅか!?」
炎の消えた『炎駒』は、ゆっくりと地に膝をつけるように、4本の足を折り曲げていく。
広げていた翼も折りたたみ、そのまま座り込むような姿勢になって、静かに動かなくなった。
解析では……『炎駒』は死んでしまった。
「これは……火の能力を失って、死んでしまったということでしゅか?」
「分かりません。ただあの炎は、コイツが自分で出していたわけじゃなかったんです」
「意味が分からぬ。自分で出していないのなら、誰かに火を付けられたとでもいうのか?」
「そう、ゼルマが言ったとおり、あれは他者によって『炎駒』に刻まれた火の封印――『断罪の炎』だったんだと思う」
「「断罪の炎っ!?」」
僕はゼルマとドマさんに、『赤き天馬』――『炎駒』の真相を教えることにした。
人類に語り継がれている伝説では、『炎駒』は恐ろしい怪物で、最後には神様に反逆して天罰を受けたという。
吸血鬼の言い伝えでは、『赤き天馬』は凶悪な魔獣で、のちに神の僕になったということだった。
どちらにも共通しているのは、元々魔獣で、のちに神様と関係していること。
恐らく、『炎駒』は魔獣として大暴れしたあと、どういういきさつかは分からないけど『神の炎』に灼かれ、その姿を吸血鬼は『神獣に昇格』したと勘違いしたんだ。
もしくは、どこかでねじ曲がって伝わってしまったんだろう。真紅に燃え上がる姿は、神々しく見えないこともないからね。
この異界は、その『炎駒』を封印していた場所なんだ。
数千年にわたって、不死のまま灼かれ続ける神罰……呪いともいえるようなこの行為を、誰がやったのかは分からない。
神様自ら罰を下したのか、それとも神に代わって裁く存在がいるのか……いずれにせよ、確かめるのは難しいだろう。
『神の炎』に包まれていたから、『炎駒』にはほとんど攻撃も効かなかった。
『炎駒』の攻撃が稚拙だったのも、ただ炎が苦しくて暴れていただけだったんだ。
『虚無への回帰』によって、『炎駒』はその地獄の責め苦からようやく解放された。
死んでしまった理由は、自らを灼く『神の炎』が、不死の源にもなっていたのかもしれない。
凶暴な魔獣だったとはいえ、朽ちたその姿を憐れに思った。
「残念だけど、神聖な存在じゃなかったみたいですね。ドマさん、また別なところを探してみましょう」
「そうでしゅね……今度は見つかると……な、なんでしゅかこれ!?」
「なんと、これはいったい……!?」
ドマさんとゼルマが、『炎駒』を見て驚きの声を上げる。
死んだはずの『炎駒』が、突然輝き始めたのだ。
焼けた背中が2つに割れ、その中からゆっくりと紅蓮に輝く天馬が現れていく。
これは……まるで不死鳥のようだ。
炎が消えたことにより浄化され、新たに再生した……ってこと?
復活した『炎駒』は、凄い神聖力を放ち出す。
そう、今度こそ本当に神の使徒――神獣『炎駒』に生まれ変わったんだ!
「こ、これなら大丈夫でしゅ! 神聖なる存在『炎駒』よ、あたいにその力を少しだけ分けてもらえないでしゅか?」
「クオオオオオン」
『炎駒』は首を一度縦に振って、そのまま頭を差し出すようにする。
「OKみたいですよ、ドマさん」
「で、では……『分霊珠』よ、清き魂をその器に収めたまえ」
ドマさんが『分霊珠』を使うと、『炎駒』の魂のほんの一部がその中へと収まった。
ちなみに、1つの魂から分けてもらえるのは1つのみなので、僕の『分霊珠』に『炎駒』から魂を分けてもらうことはできないようだ。
その代わり、僕は『炎駒』のことを召喚して、1日1回のみだけどその力を行使できるようになっていた。
『炎駒』の能力は炎の攻撃もさることながら、凄いのは大勢の怪我を一気に治療可能なこと。
死者を生き返らせるのは無理だけど、どんな重傷でも、どんなに人数がいても、全て完治させることができるらしい。
1日1回の制限があるとはいえ、とんでもない能力だ。
心強い力を手に入れて、僕も大満足である。
「これで一族の悲願『魔剣ダーインスレイヴ』が完成するでしゅ!」
ドマさんは、僕があげたアイテムボックスから『火緋色鋼の剣』を取り出し、『炎駒』の魂が入った『分霊珠』をはめ込む。
すると、『火緋色鋼の剣』に命が吹きこまれ、特殊な能力を秘めた剣となった。
「やっと……やっと完成したでしゅ! あたいの最高傑作でしゅ!」
「ドマさん、でもこれ『魔剣』というか、『聖剣』ですよね?」
「『魔剣』のほうがカッコイイから『魔剣』なのでしゅ!」
ああ、そういう美的センスですか。
別にどっちでもいいとは思うけどね。
でも本当に凄い剣をドマさんは作り上げた。僕の『冥霊剣』よりはさすがに劣るけど、人工的な物としては史上最高の剣だと思う。
『冥霊剣』に関しては少々反則気味だから、比較対象にするのはちょっとなあ……神様が作った最高傑作『不滅なる神剣』にも匹敵するほどの剣だからね。
ドマさんにはなるべく見せないように気を付けよう。
「今回は全てゼルマのおかげだよ。ドマさんの願いも叶ったし、『炎駒』も救ってあげることができた。ゼルマ、ありがとう」
「そ、そうか、ワシは役に立ったか! なら褒美というわけではないが、そ、その、ワシと……」
「待つでしゅ! 坊主はあたいがもらうでしゅ!」
えっ? 僕をもらうってなんのこと?
「我がギンガイム一族の掟では、異性とは共同作業ができないのでしゅ。でも坊主とは『魔剣ダーインスレイヴ』を作ってしまったでしゅ。こうなったら、坊主には伴侶になってもらうしかないでしゅ!」
「ええっ、な、なんでですか!?」
「婚姻相手となら、共同作業をしてもいいからでしゅ。もはやお前と夫婦になる以外、掟を守る方法はないでしゅ」
な……なんでそうなるの?
まずいぞ、これでもかというくらい眷女からさんざん釘を刺されたのに、またこんな状況になっちゃうなんて……。
「小僧、貴様そうやって女をてごめにしてきたということか……」
もしもしゼルマラージャさん、あなた今まで何を見てきたんですか?
僕はドマさんをてごめになんてしてないし、そもそも口説いてすらいないでしょ!
強引に婚姻を迫られてるだけですよ?
「ドワーフよ、残念だが貴様の思い通りにはさせぬぞ」
「吸血鬼、お前とはここで決着を付けねばならないようでしゅね」
「ふん、ワシと決着を付けたところでどうにもならぬぞ。貴様は知らぬようだが、この小僧にはほかに女が山ほどいるからな。お前のようなチビ娘に出番などないわ」
「そ、そんなわけないでしゅ! こんな坊主がモテるなど……」
「こやつはあのテンプルムの国王だぞ? 知らんのか?」
「て……テンプルム国王!? 坊主、本当でしゅか!?」
あちゃーバレちゃった。
別に隠そうとは思ってなかったんだけどね。ドマさんが興味なかったみたいだから、わざわざ言わなくてもいいかなと……。
僕はドマさんの言葉に頷く。
「こ……国王? それであんなにお金を持っていたのでしゅか! それにこの数々の力……もう絶対に坊主を逃すわけにはいかなくなったでしゅ!」
「ワシの忠告が聞こえなかったのかドワーフ? こやつには女が……」
「何人いようとも関係ないでしゅ! 絶対にあたいのモノにするでしゅ!」
「え~っ!? いや、ドマさん、僕にはその……」
「坊主、年上は嫌いでしゅか?」
「と、年上? そ、そうですよ、僕とドマさんでは年齢差が……」
まあドマさんは年上なのか年下なのか分からないような存在だけど。
「80歳くらいの年齢差なんて誤差でしゅ、あたいは気にしないでしゅ」
「確かに80歳など些細な差だな。くっ、ワシもせめて4000歳ほど若かったら……」
80歳って結構スゴイ年齢差だと思うんですが?
でもフラウとは170歳差があるし、ゼルマとは5000歳差か。もうワケが分からないな。
それにしても、ゼルマと初めて会ったときは、その身に悲痛な想いを漂わせていたけど、今では見違えるように元気になった。
ヴァンルーグのことは簡単には忘れられないだろうけど、また生きる目的を見つけて、幸せに過ごしてほしいと思う。
それがヴァンルーグの願いでもあるだろうし。
「ええい聞き分けのないドワーフだ、こうなったら力ずくで……」
「望むところでしゅ! キッチリ白黒付けてやるでしゅ!」
とりあえず、『炎駒』が神獣となったことで、この異界は封印としての役目を終えたようだ。
『迷いの森』は消え失せ、『炎駒』は神獣界へと還った。
僕たちも無事目的を達成したので、今にも取っ組み合いしそうな2人をなだめて、テンプルムへと帰るのだった。
「というより、こやつにはちっとも効いてるようには見えぬぞ。剣でも魔法でも、ダメージを与えられぬのではないのか!?」
ドマさんとゼルマは、『神速の騎士』の効果で劇的に強くなっているので、一方的に『赤き天馬』――『炎駒』に攻撃を加えているが、その『炎駒』にはまるで効いてる様子はない。
どういうことなんだ? 冷却魔法じゃないと、ダメージを与えられないのか?
ちょっと使ってみるか……。
「氷界召喚、『絶対凍結地獄』っ!」
『界域魔法』なので結構強力なんだけど、コレくらいの魔法じゃないと、『炎駒』相手には効果が確かめられない。
殺さないように、なるべく威力を絞って撃ってみたけど……。
「グァフーウッッ!」
凍結波は『炎駒』に届く前に、身体から噴き出す炎で四方に散った。
見た感じでは、『炎駒』はノーダメージっぽいな。恐らく、最大の威力で撃ってもあまり効かないように思う。
『神の炎』に守られているから、攻撃が無効になってしまうのか?
「小僧の冷却魔法でもダメなのか!? これでは倒す方法が分からぬ!」
「くやしいでしゅが、諦めて退散するしか……」
僕の魔法すら効かなかったが、『炎駒』の防衛能力が高いのかというと、これまた何か違和感がある。
さらに付け加えるなら、『炎駒』の攻撃は非常に雑で、やたらめったら暴れているだけのような状態だ。特殊攻撃を使うような素振りすらない。
危険な攻撃をしてきたら、僕が2人を守ろうと警戒もしていたんだけど、この怪物には不釣り合いなほど攻撃能力が拙い。
これならたとえ『神速の騎士』を使わなくても、ゼルマとドマさんなら問題なく戦えるような気がする。
これほどのタフさを持ちながら、アンバランスな戦闘方法。
この異界の主かと思えば、特にそれらしい行動もない。
どうにも違和感だらけだ。
……ちょっとまてよ。
『炎駒』を包み込んでいるのは、解析では『神の炎』となっているけど、この『炎駒』は『神獣』ではない。むしろ、凶悪な魔獣だ。
それが神聖な『神の炎』に守られているというのは、どうも引っ掛かる。
ひょっとして、まさかと思うけど……。
僕は1つの結論に達した。
……試してみるか。
「万象原点に帰せ、『虚無への回帰』!」
これは様々な効果を消す、超強力な『解除魔法』だ。
僕の推測が正しければ、これを『炎駒』に放つことで、何か変化があるはず!
「グッフーウ……!」
『炎駒』の動きが少しずつ大人しくなってきたかと思うと、身体から吹き出ていた炎が徐々に消えていった。
これは通常ではありえないことだ。
何故かというと、『虚無への回帰』では攻撃魔法の炎が消せないほか、自らの能力で燃え上がっているような場合も無効にできないからだ。
例えば火の精霊『火蜥蜴』とか『燃えさかる毒蛾』の炎などには効かない。
しかし、呪いや封印、バフ・デバフなどによる炎は無効化できる。『炎駒』の炎は、その類いのモノだった。
「なんと! 『赤き天馬』の炎を消すとは……凄いではないか小僧! よし、いけるぞ!」
「これなら直接剣をたたき込めるでしゅ! 喰らえっ!」
「待って2人とも! 攻撃はしないで!」
「な、なぜ止める!?」
「そうでしゅ、このチャンスを逃すわけには……な、なんでしゅか!?」
炎の消えた『炎駒』は、ゆっくりと地に膝をつけるように、4本の足を折り曲げていく。
広げていた翼も折りたたみ、そのまま座り込むような姿勢になって、静かに動かなくなった。
解析では……『炎駒』は死んでしまった。
「これは……火の能力を失って、死んでしまったということでしゅか?」
「分かりません。ただあの炎は、コイツが自分で出していたわけじゃなかったんです」
「意味が分からぬ。自分で出していないのなら、誰かに火を付けられたとでもいうのか?」
「そう、ゼルマが言ったとおり、あれは他者によって『炎駒』に刻まれた火の封印――『断罪の炎』だったんだと思う」
「「断罪の炎っ!?」」
僕はゼルマとドマさんに、『赤き天馬』――『炎駒』の真相を教えることにした。
人類に語り継がれている伝説では、『炎駒』は恐ろしい怪物で、最後には神様に反逆して天罰を受けたという。
吸血鬼の言い伝えでは、『赤き天馬』は凶悪な魔獣で、のちに神の僕になったということだった。
どちらにも共通しているのは、元々魔獣で、のちに神様と関係していること。
恐らく、『炎駒』は魔獣として大暴れしたあと、どういういきさつかは分からないけど『神の炎』に灼かれ、その姿を吸血鬼は『神獣に昇格』したと勘違いしたんだ。
もしくは、どこかでねじ曲がって伝わってしまったんだろう。真紅に燃え上がる姿は、神々しく見えないこともないからね。
この異界は、その『炎駒』を封印していた場所なんだ。
数千年にわたって、不死のまま灼かれ続ける神罰……呪いともいえるようなこの行為を、誰がやったのかは分からない。
神様自ら罰を下したのか、それとも神に代わって裁く存在がいるのか……いずれにせよ、確かめるのは難しいだろう。
『神の炎』に包まれていたから、『炎駒』にはほとんど攻撃も効かなかった。
『炎駒』の攻撃が稚拙だったのも、ただ炎が苦しくて暴れていただけだったんだ。
『虚無への回帰』によって、『炎駒』はその地獄の責め苦からようやく解放された。
死んでしまった理由は、自らを灼く『神の炎』が、不死の源にもなっていたのかもしれない。
凶暴な魔獣だったとはいえ、朽ちたその姿を憐れに思った。
「残念だけど、神聖な存在じゃなかったみたいですね。ドマさん、また別なところを探してみましょう」
「そうでしゅね……今度は見つかると……な、なんでしゅかこれ!?」
「なんと、これはいったい……!?」
ドマさんとゼルマが、『炎駒』を見て驚きの声を上げる。
死んだはずの『炎駒』が、突然輝き始めたのだ。
焼けた背中が2つに割れ、その中からゆっくりと紅蓮に輝く天馬が現れていく。
これは……まるで不死鳥のようだ。
炎が消えたことにより浄化され、新たに再生した……ってこと?
復活した『炎駒』は、凄い神聖力を放ち出す。
そう、今度こそ本当に神の使徒――神獣『炎駒』に生まれ変わったんだ!
「こ、これなら大丈夫でしゅ! 神聖なる存在『炎駒』よ、あたいにその力を少しだけ分けてもらえないでしゅか?」
「クオオオオオン」
『炎駒』は首を一度縦に振って、そのまま頭を差し出すようにする。
「OKみたいですよ、ドマさん」
「で、では……『分霊珠』よ、清き魂をその器に収めたまえ」
ドマさんが『分霊珠』を使うと、『炎駒』の魂のほんの一部がその中へと収まった。
ちなみに、1つの魂から分けてもらえるのは1つのみなので、僕の『分霊珠』に『炎駒』から魂を分けてもらうことはできないようだ。
その代わり、僕は『炎駒』のことを召喚して、1日1回のみだけどその力を行使できるようになっていた。
『炎駒』の能力は炎の攻撃もさることながら、凄いのは大勢の怪我を一気に治療可能なこと。
死者を生き返らせるのは無理だけど、どんな重傷でも、どんなに人数がいても、全て完治させることができるらしい。
1日1回の制限があるとはいえ、とんでもない能力だ。
心強い力を手に入れて、僕も大満足である。
「これで一族の悲願『魔剣ダーインスレイヴ』が完成するでしゅ!」
ドマさんは、僕があげたアイテムボックスから『火緋色鋼の剣』を取り出し、『炎駒』の魂が入った『分霊珠』をはめ込む。
すると、『火緋色鋼の剣』に命が吹きこまれ、特殊な能力を秘めた剣となった。
「やっと……やっと完成したでしゅ! あたいの最高傑作でしゅ!」
「ドマさん、でもこれ『魔剣』というか、『聖剣』ですよね?」
「『魔剣』のほうがカッコイイから『魔剣』なのでしゅ!」
ああ、そういう美的センスですか。
別にどっちでもいいとは思うけどね。
でも本当に凄い剣をドマさんは作り上げた。僕の『冥霊剣』よりはさすがに劣るけど、人工的な物としては史上最高の剣だと思う。
『冥霊剣』に関しては少々反則気味だから、比較対象にするのはちょっとなあ……神様が作った最高傑作『不滅なる神剣』にも匹敵するほどの剣だからね。
ドマさんにはなるべく見せないように気を付けよう。
「今回は全てゼルマのおかげだよ。ドマさんの願いも叶ったし、『炎駒』も救ってあげることができた。ゼルマ、ありがとう」
「そ、そうか、ワシは役に立ったか! なら褒美というわけではないが、そ、その、ワシと……」
「待つでしゅ! 坊主はあたいがもらうでしゅ!」
えっ? 僕をもらうってなんのこと?
「我がギンガイム一族の掟では、異性とは共同作業ができないのでしゅ。でも坊主とは『魔剣ダーインスレイヴ』を作ってしまったでしゅ。こうなったら、坊主には伴侶になってもらうしかないでしゅ!」
「ええっ、な、なんでですか!?」
「婚姻相手となら、共同作業をしてもいいからでしゅ。もはやお前と夫婦になる以外、掟を守る方法はないでしゅ」
な……なんでそうなるの?
まずいぞ、これでもかというくらい眷女からさんざん釘を刺されたのに、またこんな状況になっちゃうなんて……。
「小僧、貴様そうやって女をてごめにしてきたということか……」
もしもしゼルマラージャさん、あなた今まで何を見てきたんですか?
僕はドマさんをてごめになんてしてないし、そもそも口説いてすらいないでしょ!
強引に婚姻を迫られてるだけですよ?
「ドワーフよ、残念だが貴様の思い通りにはさせぬぞ」
「吸血鬼、お前とはここで決着を付けねばならないようでしゅね」
「ふん、ワシと決着を付けたところでどうにもならぬぞ。貴様は知らぬようだが、この小僧にはほかに女が山ほどいるからな。お前のようなチビ娘に出番などないわ」
「そ、そんなわけないでしゅ! こんな坊主がモテるなど……」
「こやつはあのテンプルムの国王だぞ? 知らんのか?」
「て……テンプルム国王!? 坊主、本当でしゅか!?」
あちゃーバレちゃった。
別に隠そうとは思ってなかったんだけどね。ドマさんが興味なかったみたいだから、わざわざ言わなくてもいいかなと……。
僕はドマさんの言葉に頷く。
「こ……国王? それであんなにお金を持っていたのでしゅか! それにこの数々の力……もう絶対に坊主を逃すわけにはいかなくなったでしゅ!」
「ワシの忠告が聞こえなかったのかドワーフ? こやつには女が……」
「何人いようとも関係ないでしゅ! 絶対にあたいのモノにするでしゅ!」
「え~っ!? いや、ドマさん、僕にはその……」
「坊主、年上は嫌いでしゅか?」
「と、年上? そ、そうですよ、僕とドマさんでは年齢差が……」
まあドマさんは年上なのか年下なのか分からないような存在だけど。
「80歳くらいの年齢差なんて誤差でしゅ、あたいは気にしないでしゅ」
「確かに80歳など些細な差だな。くっ、ワシもせめて4000歳ほど若かったら……」
80歳って結構スゴイ年齢差だと思うんですが?
でもフラウとは170歳差があるし、ゼルマとは5000歳差か。もうワケが分からないな。
それにしても、ゼルマと初めて会ったときは、その身に悲痛な想いを漂わせていたけど、今では見違えるように元気になった。
ヴァンルーグのことは簡単には忘れられないだろうけど、また生きる目的を見つけて、幸せに過ごしてほしいと思う。
それがヴァンルーグの願いでもあるだろうし。
「ええい聞き分けのないドワーフだ、こうなったら力ずくで……」
「望むところでしゅ! キッチリ白黒付けてやるでしゅ!」
とりあえず、『炎駒』が神獣となったことで、この異界は封印としての役目を終えたようだ。
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僕たちも無事目的を達成したので、今にも取っ組み合いしそうな2人をなだめて、テンプルムへと帰るのだった。
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