文字の大きさ
大
中
小
200 / 258
第7章 新国テンプルム
第367話 神獣の誕生
「くっ……! 本当にしぶといでしゅね、ここまでタコ殴りにしてるというでしゅのに、まだまだこれほど元気とは……」
「というより、こやつにはちっとも効いてるようには見えぬぞ。剣でも魔法でも、ダメージを与えられぬのではないのか!?」
ドマさんとゼルマは、『神速の騎士』の効果で劇的に強くなっているので、一方的に『赤き天馬』――『炎駒』に攻撃を加えているが、その『炎駒』にはまるで効いてる様子はない。
どういうことなんだ? 冷却魔法じゃないと、ダメージを与えられないのか?
ちょっと使ってみるか……。
「氷界召喚、『絶対凍結地獄』っ!」
『界域魔法』なので結構強力なんだけど、コレくらいの魔法じゃないと、『炎駒』相手には効果が確かめられない。
殺さないように、なるべく威力を絞って撃ってみたけど……。
「グァフーウッッ!」
凍結波は『炎駒』に届く前に、身体から噴き出す炎で四方に散った。
見た感じでは、『炎駒』はノーダメージっぽいな。恐らく、最大の威力で撃ってもあまり効かないように思う。
『神の炎』に守られているから、攻撃が無効になってしまうのか?
「小僧の冷却魔法でもダメなのか!? これでは倒す方法が分からぬ!」
「くやしいでしゅが、諦めて退散するしか……」
僕の魔法すら効かなかったが、『炎駒』の防衛能力が高いのかというと、これまた何か違和感がある。
さらに付け加えるなら、『炎駒』の攻撃は非常に雑で、やたらめったら暴れているだけのような状態だ。特殊攻撃を使うような素振りすらない。
危険な攻撃をしてきたら、僕が2人を守ろうと警戒もしていたんだけど、この怪物には不釣り合いなほど攻撃能力が拙い。
これならたとえ『神速の騎士』を使わなくても、ゼルマとドマさんなら問題なく戦えるような気がする。
これほどのタフさを持ちながら、アンバランスな戦闘方法。
この異界の主かと思えば、特にそれらしい行動もない。
どうにも違和感だらけだ。
……ちょっとまてよ。
『炎駒』を包み込んでいるのは、解析では『神の炎』となっているけど、この『炎駒』は『神獣』ではない。むしろ、凶悪な魔獣だ。
それが神聖な『神の炎』に守られているというのは、どうも引っ掛かる。
ひょっとして、まさかと思うけど……。
僕は1つの結論に達した。
……試してみるか。
「万象原点に帰せ、『虚無への回帰』!」
これは様々な効果を消す、超強力な『解除魔法』だ。
僕の推測が正しければ、これを『炎駒』に放つことで、何か変化があるはず!
「グッフーウ……!」
『炎駒』の動きが少しずつ大人しくなってきたかと思うと、身体から吹き出ていた炎が徐々に消えていった。
これは通常ではありえないことだ。
何故かというと、『虚無への回帰』では攻撃魔法の炎が消せないほか、自らの能力で燃え上がっているような場合も無効にできないからだ。
例えば火の精霊『火蜥蜴』とか『燃えさかる毒蛾』の炎などには効かない。
しかし、呪いや封印、バフ・デバフなどによる炎は無効化できる。『炎駒』の炎は、その類いのモノだった。
「なんと! 『赤き天馬』の炎を消すとは……凄いではないか小僧! よし、いけるぞ!」
「これなら直接剣をたたき込めるでしゅ! 喰らえっ!」
「待って2人とも! 攻撃はしないで!」
「な、なぜ止める!?」
「そうでしゅ、このチャンスを逃すわけには……な、なんでしゅか!?」
炎の消えた『炎駒』は、ゆっくりと地に膝をつけるように、4本の足を折り曲げていく。
広げていた翼も折りたたみ、そのまま座り込むような姿勢になって、静かに動かなくなった。
解析では……『炎駒』は死んでしまった。
「これは……火の能力を失って、死んでしまったということでしゅか?」
「分かりません。ただあの炎は、コイツが自分で出していたわけじゃなかったんです」
「意味が分からぬ。自分で出していないのなら、誰かに火を付けられたとでもいうのか?」
「そう、ゼルマが言ったとおり、あれは他者によって『炎駒』に刻まれた火の封印――『断罪の炎』だったんだと思う」
「「断罪の炎っ!?」」
僕はゼルマとドマさんに、『赤き天馬』――『炎駒』の真相を教えることにした。
人類に語り継がれている伝説では、『炎駒』は恐ろしい怪物で、最後には神様に反逆して天罰を受けたという。
吸血鬼の言い伝えでは、『赤き天馬』は凶悪な魔獣で、のちに神の僕になったということだった。
どちらにも共通しているのは、元々魔獣で、のちに神様と関係していること。
恐らく、『炎駒』は魔獣として大暴れしたあと、どういういきさつかは分からないけど『神の炎』に灼かれ、その姿を吸血鬼は『神獣に昇格』したと勘違いしたんだ。
もしくは、どこかでねじ曲がって伝わってしまったんだろう。真紅に燃え上がる姿は、神々しく見えないこともないからね。
この異界は、その『炎駒』を封印していた場所なんだ。
数千年にわたって、不死のまま灼かれ続ける神罰……呪いともいえるようなこの行為を、誰がやったのかは分からない。
神様自ら罰を下したのか、それとも神に代わって裁く存在がいるのか……いずれにせよ、確かめるのは難しいだろう。
『神の炎』に包まれていたから、『炎駒』にはほとんど攻撃も効かなかった。
『炎駒』の攻撃が稚拙だったのも、ただ炎が苦しくて暴れていただけだったんだ。
『虚無への回帰』によって、『炎駒』はその地獄の責め苦からようやく解放された。
死んでしまった理由は、自らを灼く『神の炎』が、不死の源にもなっていたのかもしれない。
凶暴な魔獣だったとはいえ、朽ちたその姿を憐れに思った。
「残念だけど、神聖な存在じゃなかったみたいですね。ドマさん、また別なところを探してみましょう」
「そうでしゅね……今度は見つかると……な、なんでしゅかこれ!?」
「なんと、これはいったい……!?」
ドマさんとゼルマが、『炎駒』を見て驚きの声を上げる。
死んだはずの『炎駒』が、突然輝き始めたのだ。
焼けた背中が2つに割れ、その中からゆっくりと紅蓮に輝く天馬が現れていく。
これは……まるで不死鳥のようだ。
炎が消えたことにより浄化され、新たに再生した……ってこと?
復活した『炎駒』は、凄い神聖力を放ち出す。
そう、今度こそ本当に神の使徒――神獣『炎駒』に生まれ変わったんだ!
「こ、これなら大丈夫でしゅ! 神聖なる存在『炎駒』よ、あたいにその力を少しだけ分けてもらえないでしゅか?」
「クオオオオオン」
『炎駒』は首を一度縦に振って、そのまま頭を差し出すようにする。
「OKみたいですよ、ドマさん」
「で、では……『分霊珠』よ、清き魂をその器に収めたまえ」
ドマさんが『分霊珠』を使うと、『炎駒』の魂のほんの一部がその中へと収まった。
ちなみに、1つの魂から分けてもらえるのは1つのみなので、僕の『分霊珠』に『炎駒』から魂を分けてもらうことはできないようだ。
その代わり、僕は『炎駒』のことを召喚して、1日1回のみだけどその力を行使できるようになっていた。
『炎駒』の能力は炎の攻撃もさることながら、凄いのは大勢の怪我を一気に治療可能なこと。
死者を生き返らせるのは無理だけど、どんな重傷でも、どんなに人数がいても、全て完治させることができるらしい。
1日1回の制限があるとはいえ、とんでもない能力だ。
心強い力を手に入れて、僕も大満足である。
「これで一族の悲願『魔剣ダーインスレイヴ』が完成するでしゅ!」
ドマさんは、僕があげたアイテムボックスから『火緋色鋼の剣』を取り出し、『炎駒』の魂が入った『分霊珠』をはめ込む。
すると、『火緋色鋼の剣』に命が吹きこまれ、特殊な能力を秘めた剣となった。
「やっと……やっと完成したでしゅ! あたいの最高傑作でしゅ!」
「ドマさん、でもこれ『魔剣』というか、『聖剣』ですよね?」
「『魔剣』のほうがカッコイイから『魔剣』なのでしゅ!」
ああ、そういう美的センスですか。
別にどっちでもいいとは思うけどね。
でも本当に凄い剣をドマさんは作り上げた。僕の『冥霊剣』よりはさすがに劣るけど、人工的な物としては史上最高の剣だと思う。
『冥霊剣』に関しては少々反則気味だから、比較対象にするのはちょっとなあ……神様が作った最高傑作『不滅なる神剣』にも匹敵するほどの剣だからね。
ドマさんにはなるべく見せないように気を付けよう。
「今回は全てゼルマのおかげだよ。ドマさんの願いも叶ったし、『炎駒』も救ってあげることができた。ゼルマ、ありがとう」
「そ、そうか、ワシは役に立ったか! なら褒美というわけではないが、そ、その、ワシと……」
「待つでしゅ! 坊主はあたいがもらうでしゅ!」
えっ? 僕をもらうってなんのこと?
「我がギンガイム一族の掟では、異性とは共同作業ができないのでしゅ。でも坊主とは『魔剣ダーインスレイヴ』を作ってしまったでしゅ。こうなったら、坊主には伴侶になってもらうしかないでしゅ!」
「ええっ、な、なんでですか!?」
「婚姻相手となら、共同作業をしてもいいからでしゅ。もはやお前と夫婦になる以外、掟を守る方法はないでしゅ」
な……なんでそうなるの?
まずいぞ、これでもかというくらい眷女からさんざん釘を刺されたのに、またこんな状況になっちゃうなんて……。
「小僧、貴様そうやって女をてごめにしてきたということか……」
もしもしゼルマラージャさん、あなた今まで何を見てきたんですか?
僕はドマさんをてごめになんてしてないし、そもそも口説いてすらいないでしょ!
強引に婚姻を迫られてるだけですよ?
「ドワーフよ、残念だが貴様の思い通りにはさせぬぞ」
「吸血鬼、お前とはここで決着を付けねばならないようでしゅね」
「ふん、ワシと決着を付けたところでどうにもならぬぞ。貴様は知らぬようだが、この小僧にはほかに女が山ほどいるからな。お前のようなチビ娘に出番などないわ」
「そ、そんなわけないでしゅ! こんな坊主がモテるなど……」
「こやつはあのテンプルムの国王だぞ? 知らんのか?」
「て……テンプルム国王!? 坊主、本当でしゅか!?」
あちゃーバレちゃった。
別に隠そうとは思ってなかったんだけどね。ドマさんが興味なかったみたいだから、わざわざ言わなくてもいいかなと……。
僕はドマさんの言葉に頷く。
「こ……国王? それであんなにお金を持っていたのでしゅか! それにこの数々の力……もう絶対に坊主を逃すわけにはいかなくなったでしゅ!」
「ワシの忠告が聞こえなかったのかドワーフ? こやつには女が……」
「何人いようとも関係ないでしゅ! 絶対にあたいのモノにするでしゅ!」
「え~っ!? いや、ドマさん、僕にはその……」
「坊主、年上は嫌いでしゅか?」
「と、年上? そ、そうですよ、僕とドマさんでは年齢差が……」
まあドマさんは年上なのか年下なのか分からないような存在だけど。
「80歳くらいの年齢差なんて誤差でしゅ、あたいは気にしないでしゅ」
「確かに80歳など些細な差だな。くっ、ワシもせめて4000歳ほど若かったら……」
80歳って結構スゴイ年齢差だと思うんですが?
でもフラウとは170歳差があるし、ゼルマとは5000歳差か。もうワケが分からないな。
それにしても、ゼルマと初めて会ったときは、その身に悲痛な想いを漂わせていたけど、今では見違えるように元気になった。
ヴァンルーグのことは簡単には忘れられないだろうけど、また生きる目的を見つけて、幸せに過ごしてほしいと思う。
それがヴァンルーグの願いでもあるだろうし。
「ええい聞き分けのないドワーフだ、こうなったら力ずくで……」
「望むところでしゅ! キッチリ白黒付けてやるでしゅ!」
とりあえず、『炎駒』が神獣となったことで、この異界は封印としての役目を終えたようだ。
『迷いの森』は消え失せ、『炎駒』は神獣界へと還った。
僕たちも無事目的を達成したので、今にも取っ組み合いしそうな2人をなだめて、テンプルムへと帰るのだった。
「というより、こやつにはちっとも効いてるようには見えぬぞ。剣でも魔法でも、ダメージを与えられぬのではないのか!?」
ドマさんとゼルマは、『神速の騎士』の効果で劇的に強くなっているので、一方的に『赤き天馬』――『炎駒』に攻撃を加えているが、その『炎駒』にはまるで効いてる様子はない。
どういうことなんだ? 冷却魔法じゃないと、ダメージを与えられないのか?
ちょっと使ってみるか……。
「氷界召喚、『絶対凍結地獄』っ!」
『界域魔法』なので結構強力なんだけど、コレくらいの魔法じゃないと、『炎駒』相手には効果が確かめられない。
殺さないように、なるべく威力を絞って撃ってみたけど……。
「グァフーウッッ!」
凍結波は『炎駒』に届く前に、身体から噴き出す炎で四方に散った。
見た感じでは、『炎駒』はノーダメージっぽいな。恐らく、最大の威力で撃ってもあまり効かないように思う。
『神の炎』に守られているから、攻撃が無効になってしまうのか?
「小僧の冷却魔法でもダメなのか!? これでは倒す方法が分からぬ!」
「くやしいでしゅが、諦めて退散するしか……」
僕の魔法すら効かなかったが、『炎駒』の防衛能力が高いのかというと、これまた何か違和感がある。
さらに付け加えるなら、『炎駒』の攻撃は非常に雑で、やたらめったら暴れているだけのような状態だ。特殊攻撃を使うような素振りすらない。
危険な攻撃をしてきたら、僕が2人を守ろうと警戒もしていたんだけど、この怪物には不釣り合いなほど攻撃能力が拙い。
これならたとえ『神速の騎士』を使わなくても、ゼルマとドマさんなら問題なく戦えるような気がする。
これほどのタフさを持ちながら、アンバランスな戦闘方法。
この異界の主かと思えば、特にそれらしい行動もない。
どうにも違和感だらけだ。
……ちょっとまてよ。
『炎駒』を包み込んでいるのは、解析では『神の炎』となっているけど、この『炎駒』は『神獣』ではない。むしろ、凶悪な魔獣だ。
それが神聖な『神の炎』に守られているというのは、どうも引っ掛かる。
ひょっとして、まさかと思うけど……。
僕は1つの結論に達した。
……試してみるか。
「万象原点に帰せ、『虚無への回帰』!」
これは様々な効果を消す、超強力な『解除魔法』だ。
僕の推測が正しければ、これを『炎駒』に放つことで、何か変化があるはず!
「グッフーウ……!」
『炎駒』の動きが少しずつ大人しくなってきたかと思うと、身体から吹き出ていた炎が徐々に消えていった。
これは通常ではありえないことだ。
何故かというと、『虚無への回帰』では攻撃魔法の炎が消せないほか、自らの能力で燃え上がっているような場合も無効にできないからだ。
例えば火の精霊『火蜥蜴』とか『燃えさかる毒蛾』の炎などには効かない。
しかし、呪いや封印、バフ・デバフなどによる炎は無効化できる。『炎駒』の炎は、その類いのモノだった。
「なんと! 『赤き天馬』の炎を消すとは……凄いではないか小僧! よし、いけるぞ!」
「これなら直接剣をたたき込めるでしゅ! 喰らえっ!」
「待って2人とも! 攻撃はしないで!」
「な、なぜ止める!?」
「そうでしゅ、このチャンスを逃すわけには……な、なんでしゅか!?」
炎の消えた『炎駒』は、ゆっくりと地に膝をつけるように、4本の足を折り曲げていく。
広げていた翼も折りたたみ、そのまま座り込むような姿勢になって、静かに動かなくなった。
解析では……『炎駒』は死んでしまった。
「これは……火の能力を失って、死んでしまったということでしゅか?」
「分かりません。ただあの炎は、コイツが自分で出していたわけじゃなかったんです」
「意味が分からぬ。自分で出していないのなら、誰かに火を付けられたとでもいうのか?」
「そう、ゼルマが言ったとおり、あれは他者によって『炎駒』に刻まれた火の封印――『断罪の炎』だったんだと思う」
「「断罪の炎っ!?」」
僕はゼルマとドマさんに、『赤き天馬』――『炎駒』の真相を教えることにした。
人類に語り継がれている伝説では、『炎駒』は恐ろしい怪物で、最後には神様に反逆して天罰を受けたという。
吸血鬼の言い伝えでは、『赤き天馬』は凶悪な魔獣で、のちに神の僕になったということだった。
どちらにも共通しているのは、元々魔獣で、のちに神様と関係していること。
恐らく、『炎駒』は魔獣として大暴れしたあと、どういういきさつかは分からないけど『神の炎』に灼かれ、その姿を吸血鬼は『神獣に昇格』したと勘違いしたんだ。
もしくは、どこかでねじ曲がって伝わってしまったんだろう。真紅に燃え上がる姿は、神々しく見えないこともないからね。
この異界は、その『炎駒』を封印していた場所なんだ。
数千年にわたって、不死のまま灼かれ続ける神罰……呪いともいえるようなこの行為を、誰がやったのかは分からない。
神様自ら罰を下したのか、それとも神に代わって裁く存在がいるのか……いずれにせよ、確かめるのは難しいだろう。
『神の炎』に包まれていたから、『炎駒』にはほとんど攻撃も効かなかった。
『炎駒』の攻撃が稚拙だったのも、ただ炎が苦しくて暴れていただけだったんだ。
『虚無への回帰』によって、『炎駒』はその地獄の責め苦からようやく解放された。
死んでしまった理由は、自らを灼く『神の炎』が、不死の源にもなっていたのかもしれない。
凶暴な魔獣だったとはいえ、朽ちたその姿を憐れに思った。
「残念だけど、神聖な存在じゃなかったみたいですね。ドマさん、また別なところを探してみましょう」
「そうでしゅね……今度は見つかると……な、なんでしゅかこれ!?」
「なんと、これはいったい……!?」
ドマさんとゼルマが、『炎駒』を見て驚きの声を上げる。
死んだはずの『炎駒』が、突然輝き始めたのだ。
焼けた背中が2つに割れ、その中からゆっくりと紅蓮に輝く天馬が現れていく。
これは……まるで不死鳥のようだ。
炎が消えたことにより浄化され、新たに再生した……ってこと?
復活した『炎駒』は、凄い神聖力を放ち出す。
そう、今度こそ本当に神の使徒――神獣『炎駒』に生まれ変わったんだ!
「こ、これなら大丈夫でしゅ! 神聖なる存在『炎駒』よ、あたいにその力を少しだけ分けてもらえないでしゅか?」
「クオオオオオン」
『炎駒』は首を一度縦に振って、そのまま頭を差し出すようにする。
「OKみたいですよ、ドマさん」
「で、では……『分霊珠』よ、清き魂をその器に収めたまえ」
ドマさんが『分霊珠』を使うと、『炎駒』の魂のほんの一部がその中へと収まった。
ちなみに、1つの魂から分けてもらえるのは1つのみなので、僕の『分霊珠』に『炎駒』から魂を分けてもらうことはできないようだ。
その代わり、僕は『炎駒』のことを召喚して、1日1回のみだけどその力を行使できるようになっていた。
『炎駒』の能力は炎の攻撃もさることながら、凄いのは大勢の怪我を一気に治療可能なこと。
死者を生き返らせるのは無理だけど、どんな重傷でも、どんなに人数がいても、全て完治させることができるらしい。
1日1回の制限があるとはいえ、とんでもない能力だ。
心強い力を手に入れて、僕も大満足である。
「これで一族の悲願『魔剣ダーインスレイヴ』が完成するでしゅ!」
ドマさんは、僕があげたアイテムボックスから『火緋色鋼の剣』を取り出し、『炎駒』の魂が入った『分霊珠』をはめ込む。
すると、『火緋色鋼の剣』に命が吹きこまれ、特殊な能力を秘めた剣となった。
「やっと……やっと完成したでしゅ! あたいの最高傑作でしゅ!」
「ドマさん、でもこれ『魔剣』というか、『聖剣』ですよね?」
「『魔剣』のほうがカッコイイから『魔剣』なのでしゅ!」
ああ、そういう美的センスですか。
別にどっちでもいいとは思うけどね。
でも本当に凄い剣をドマさんは作り上げた。僕の『冥霊剣』よりはさすがに劣るけど、人工的な物としては史上最高の剣だと思う。
『冥霊剣』に関しては少々反則気味だから、比較対象にするのはちょっとなあ……神様が作った最高傑作『不滅なる神剣』にも匹敵するほどの剣だからね。
ドマさんにはなるべく見せないように気を付けよう。
「今回は全てゼルマのおかげだよ。ドマさんの願いも叶ったし、『炎駒』も救ってあげることができた。ゼルマ、ありがとう」
「そ、そうか、ワシは役に立ったか! なら褒美というわけではないが、そ、その、ワシと……」
「待つでしゅ! 坊主はあたいがもらうでしゅ!」
えっ? 僕をもらうってなんのこと?
「我がギンガイム一族の掟では、異性とは共同作業ができないのでしゅ。でも坊主とは『魔剣ダーインスレイヴ』を作ってしまったでしゅ。こうなったら、坊主には伴侶になってもらうしかないでしゅ!」
「ええっ、な、なんでですか!?」
「婚姻相手となら、共同作業をしてもいいからでしゅ。もはやお前と夫婦になる以外、掟を守る方法はないでしゅ」
な……なんでそうなるの?
まずいぞ、これでもかというくらい眷女からさんざん釘を刺されたのに、またこんな状況になっちゃうなんて……。
「小僧、貴様そうやって女をてごめにしてきたということか……」
もしもしゼルマラージャさん、あなた今まで何を見てきたんですか?
僕はドマさんをてごめになんてしてないし、そもそも口説いてすらいないでしょ!
強引に婚姻を迫られてるだけですよ?
「ドワーフよ、残念だが貴様の思い通りにはさせぬぞ」
「吸血鬼、お前とはここで決着を付けねばならないようでしゅね」
「ふん、ワシと決着を付けたところでどうにもならぬぞ。貴様は知らぬようだが、この小僧にはほかに女が山ほどいるからな。お前のようなチビ娘に出番などないわ」
「そ、そんなわけないでしゅ! こんな坊主がモテるなど……」
「こやつはあのテンプルムの国王だぞ? 知らんのか?」
「て……テンプルム国王!? 坊主、本当でしゅか!?」
あちゃーバレちゃった。
別に隠そうとは思ってなかったんだけどね。ドマさんが興味なかったみたいだから、わざわざ言わなくてもいいかなと……。
僕はドマさんの言葉に頷く。
「こ……国王? それであんなにお金を持っていたのでしゅか! それにこの数々の力……もう絶対に坊主を逃すわけにはいかなくなったでしゅ!」
「ワシの忠告が聞こえなかったのかドワーフ? こやつには女が……」
「何人いようとも関係ないでしゅ! 絶対にあたいのモノにするでしゅ!」
「え~っ!? いや、ドマさん、僕にはその……」
「坊主、年上は嫌いでしゅか?」
「と、年上? そ、そうですよ、僕とドマさんでは年齢差が……」
まあドマさんは年上なのか年下なのか分からないような存在だけど。
「80歳くらいの年齢差なんて誤差でしゅ、あたいは気にしないでしゅ」
「確かに80歳など些細な差だな。くっ、ワシもせめて4000歳ほど若かったら……」
80歳って結構スゴイ年齢差だと思うんですが?
でもフラウとは170歳差があるし、ゼルマとは5000歳差か。もうワケが分からないな。
それにしても、ゼルマと初めて会ったときは、その身に悲痛な想いを漂わせていたけど、今では見違えるように元気になった。
ヴァンルーグのことは簡単には忘れられないだろうけど、また生きる目的を見つけて、幸せに過ごしてほしいと思う。
それがヴァンルーグの願いでもあるだろうし。
「ええい聞き分けのないドワーフだ、こうなったら力ずくで……」
「望むところでしゅ! キッチリ白黒付けてやるでしゅ!」
とりあえず、『炎駒』が神獣となったことで、この異界は封印としての役目を終えたようだ。
『迷いの森』は消え失せ、『炎駒』は神獣界へと還った。
僕たちも無事目的を達成したので、今にも取っ組み合いしそうな2人をなだめて、テンプルムへと帰るのだった。
感想 679
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakuraiクラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第五章リード王国編
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisanバーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。