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第7章 新国テンプルム
第373話 魔導国イオ② -Another side-
「マグナ、皆の者、大丈夫か!?」
「姉さん、遅くなってゴメン!」
「サクヤ様! シェナ!」
完全に弱気になってしまったマグナたち一団のもとに、心強い援軍が到着した。
妹シェナが、イオ国の姫――かつてユーリとの戦いで『闇の炎王』を召喚したサクヤを連れて現れたのだった。
サクヤには以前ほどの召喚力は無くなったとはいえ、『鬼巫女』の称号はSSSランク、人類では最強レベルだ。
その能力で喚び出す上位精霊は、当然人類では太刀打ちできないほど強力であり、いくら12騎士でもそう簡単には敵わないはず。
マグナの心に希望の光が生まれた。
「これ以上好きにはさせぬぞ! ヤツらを焼き尽くせ、『蒼白に輝く大火竜』っ!」
サクヤが喚び出したのは、奇しくも『至高の召喚士』ラスティマが喚び出した精霊と同じだった。
その超高熱の火竜が、12騎士たちへ襲い掛かる。
「こいつはスゲーな。ただの人間が、『亜天使』であるラスティマに匹敵するほどの召喚をするとは」
「さすがイオの巫女姫といったところか。噂じゃ精霊の王すら喚べると聞いたぜ? さてどうする?」
「キシャシャ、あの程度どうする必要もなかろう。喰らったところで大したことはない」
「まあオレに任せろ。『終焉へいざなう光の道』!」
中肉中背の男――12騎士序列9位のホビアルが魔法を放つと、それは光の帯となって『蒼白に輝く大火竜』に直撃する。
すると、一瞬で蒸発したように、『蒼白に輝く大火竜』は姿を消して精霊界へと還った。
実はこのホビアルは、12騎士随一の魔力を持っていた。
なので、手強い精霊相手でも、この程度は容易いことだった。
「わ……わらわの精霊が一撃で!? これほど簡単にやられてしまうのか!?」
「いくらなんでもおかしいわ! 帝国の12騎士とはいえ、こんなに強いなんて……姉さん、何か手はないの!?」
「いや……もう残されてるのはアレしか……」
マグナには最終手段しか思い浮かばなかったが、それを後押しするように、宰相のヘンデレックが駆け付ける。
「すまぬ、待たせたなマグナ! 皆よくぞ持ち堪えてくれた。ガイルウ陛下より新型戦器の使用許可が出たぞ」
「ヘンデレック! まさか使うのか、魔導大砲を!?」
「ああ、今こそそのときであろう。周辺住民はすでに避難済みだ」
それはイオが開発した魔導兵器――『超魔導加速雷砲』の発動を意味していた。
マグナもそれ以外の手を思いつかなかったが、この兵器は元々『憤怒の魔神』や巨大魔獣など、人間では到底敵わない相手用に開発した物だ。
この状況で、果たして使用して良いものか……?
さらに、射出の衝撃波で周囲の建造物は大きく破壊される。余波で被害者が出るかもしれない。
マグナは考えを巡らせ一瞬躊躇したが、しかし、もはやこれしか手がないと結論を出す。
そう決断したのなら、迷いは無用だ。敵に回避行動を取られる前に、素早く発射せねばならない。
ヘンデレックの指示により、王城の塔にその巨大な『超魔導加速雷砲』が姿を現し、12騎士たちに狙いを定める。
もちろん魔力は充填済みだ。
「よし、私に同調させろ! ターゲットをロックオンする!」
より正確に撃つため、地上のヘンデレックが照準を合わせ、それに魔導砲を同調させる。
そして周りの魔道士たちは、射出によって起こる衝撃波に備えた。
「なんだありゃ? あいつら何してやがんだ?」
「む、奥の手というヤツか。見たことのない魔導機だ、撃たすのは危険かもしれん」
「まあ待てホビアル、情報収集も重要だろ? 魔導大国のイオが開発した秘密兵器、どれほどのモノなのか見てみるのも一興だぜ」
「ふむ、儂も興味あるところじゃ」
12騎士たちが様子を窺う中、全ての発射準備が整う。
その不穏な空気に、慎重派――この任務のリーダーであるホビアルが攻撃を仕掛けようとした瞬間、巨砲が火を噴いた。
「いっけええええええええええええっっっ!」
マグナの気合いとともに撃ち出された巨大金属球が、衝撃波と稲妻を散らしながら音速を超えて12騎士たちに迫る。
ただの物理的な攻撃ではなく、膨大な魔力に包まれた超エネルギー弾だ。
よってその命中範囲はかなり広く、敵4人をまとめて粉砕可能だった。
まさに電光石火! 回避不能の砲弾が、見事12騎士たちに直撃した――ただし、その直径2mの金属球は、フエルサの右腕によってピタリと止められていたが。
フエルサは、12騎士最強のパワーを持っていたのだった。
「しょせんこの程度か。つまらんな」
「そんな馬鹿な……! 魔力で超加速されたアダマンタイト金属球を、片手で受け止めるとは……」
その目で実際見たにも拘わらず、ヘンデレックは現実を受け入れることができなかった。
魔王相手ですら、ダメージを与えられる自信はあった。
それが、人間相手に無力とは……。
いや、ガイルウ陛下は、こいつらのことを人間でも悪魔でもない存在だと言っていた。
ではいったい何者なのだ?
ヘンデレックは神に見放されたような気分になる。
「こうなったら、わらわの真の力で『闇の炎王』を……!」
「だめですサクヤ様! 無理な召喚は身体に大きな負荷が掛かって、全身の血管が……心臓が破裂してしまいます!」
「ではどうすれば……」
「お父上のガイルウ陛下と一緒に、『転移水晶』でテンプルムへ避難してください。そしてユーリをここに……」
そこまで言って、マグナは次の言葉が出せなくなる。
実はユーリから『転移水晶』を1つだけ受け取っていた。
これはどうしても移動に必要なときか、もしくは緊急脱出用にずっと取っておいたものだ。
現在はガイルウ国王に預けているが、それを使ってサクヤたちには避難してもらおうと考えた。
しかし、このイオにユーリを呼ぶことは躊躇われた。
あのユーリとて、この4人を一度に相手したら危険と感じたからだ。
こんなところでユーリを失うわけにはいかない。
対策なしにいきなり戦うのではなく、時間を掛けて準備を整えて、絶対に負けない態勢で挑むべきだ。
そう瞬時に結論を出し、サクヤにはユーリの救援を頼むことをやめた。
「サクヤ様、いま見たことをあのユーリに伝えてください。あいつなら、きっとこの化け物たちを倒す対策をしてくれるはずです。イオのことはお任せください」
「い、いやじゃ、わらわもここに残る!」
「サクヤ様、姉さんの言う通りにしてください。もしサクヤ様を人質にでも取られたら、ユーリは戦えなくなります」
「でもお前たちは……」
「アタシたちなら大丈夫です。人質にされるヘマなんてしませんので安心してください。サクヤ様とユーリだけが頼りなんです」
そうは言いつつも、マグナもシェナも命を捨てるつもりだった。
サクヤがここを離れたら、時間を稼ぐために一気に12騎士へ攻撃を仕掛ける。
玉砕覚悟なら、1人くらいは道連れにできるかもしれない……。
「わかった、必ず助けに来るから、皆絶対に死ぬでないぞ!」
「もちろんです、ではサクヤ様、ユーリによろしく」
サクヤが後ろを向いて駆けだした瞬間、マグナとシェナのすぐ横を光が通り抜けた。
12騎士最速のレントが、2人の間を駆け抜けたのだ。
「おっとお姫さん、勝手に退場するのは困るぜ」
「がっ……! ふぅ…………」
「サクヤ様っ!?」
レントに腹部を強打され、サクヤは気を失ってしまった。
それを見て駆けだそうとしたベルニカ姉妹を、後方から一気に接近したフエルサが捕まえ、片手に1人ずつ首を掴んで持ち上げる。
「きゃあああっ」
「あぐううっ!」
「降伏しろ。首の骨を砕かれたいか?」
「くっ……お前たちのようなヤツらに屈するなんて絶対イヤだね」
「そ、そうよ、殺したいなら殺しなさい!」
自分たちは人質としての価値が高い。
利用されることでユーリがピンチになるくらいなら、ここで死んだほうがマシだ。
マグナたちは覚悟を決める。
「確かお前ら『ナンバーズ』のベルニカ姉妹だな。噂通り気の強い女たちだぜ。素直に降参しねえと、本当に首を折るぜ」
「いいからやれよ、腰抜け野郎っ」
「クソ生意気な……ほれ」
「ぐあああああっ」
マグナとシェナの首が、今にもゴキリと鳴りそうなほどに締め上げられる。
このままいくと、あと十秒も経たないうちに首は砕かれるだろう。
ギシギシと頸骨がずれるような感覚が2人を襲い続け、そしてあと少しの力で全てが終わる。
「くっ……も、もう一度ユーリに会いたかったぜ」
「ふふ、生まれ変わっても、ユーリと出会いたいわ……」
「は~、仕方ねえ……死ね」
マグナたちの命の灯火が消えゆく刹那、首を締め上げていたフエルサの両腕が宙に飛んだ。
もちろん、ユーリの一太刀だった。
「姉さん、遅くなってゴメン!」
「サクヤ様! シェナ!」
完全に弱気になってしまったマグナたち一団のもとに、心強い援軍が到着した。
妹シェナが、イオ国の姫――かつてユーリとの戦いで『闇の炎王』を召喚したサクヤを連れて現れたのだった。
サクヤには以前ほどの召喚力は無くなったとはいえ、『鬼巫女』の称号はSSSランク、人類では最強レベルだ。
その能力で喚び出す上位精霊は、当然人類では太刀打ちできないほど強力であり、いくら12騎士でもそう簡単には敵わないはず。
マグナの心に希望の光が生まれた。
「これ以上好きにはさせぬぞ! ヤツらを焼き尽くせ、『蒼白に輝く大火竜』っ!」
サクヤが喚び出したのは、奇しくも『至高の召喚士』ラスティマが喚び出した精霊と同じだった。
その超高熱の火竜が、12騎士たちへ襲い掛かる。
「こいつはスゲーな。ただの人間が、『亜天使』であるラスティマに匹敵するほどの召喚をするとは」
「さすがイオの巫女姫といったところか。噂じゃ精霊の王すら喚べると聞いたぜ? さてどうする?」
「キシャシャ、あの程度どうする必要もなかろう。喰らったところで大したことはない」
「まあオレに任せろ。『終焉へいざなう光の道』!」
中肉中背の男――12騎士序列9位のホビアルが魔法を放つと、それは光の帯となって『蒼白に輝く大火竜』に直撃する。
すると、一瞬で蒸発したように、『蒼白に輝く大火竜』は姿を消して精霊界へと還った。
実はこのホビアルは、12騎士随一の魔力を持っていた。
なので、手強い精霊相手でも、この程度は容易いことだった。
「わ……わらわの精霊が一撃で!? これほど簡単にやられてしまうのか!?」
「いくらなんでもおかしいわ! 帝国の12騎士とはいえ、こんなに強いなんて……姉さん、何か手はないの!?」
「いや……もう残されてるのはアレしか……」
マグナには最終手段しか思い浮かばなかったが、それを後押しするように、宰相のヘンデレックが駆け付ける。
「すまぬ、待たせたなマグナ! 皆よくぞ持ち堪えてくれた。ガイルウ陛下より新型戦器の使用許可が出たぞ」
「ヘンデレック! まさか使うのか、魔導大砲を!?」
「ああ、今こそそのときであろう。周辺住民はすでに避難済みだ」
それはイオが開発した魔導兵器――『超魔導加速雷砲』の発動を意味していた。
マグナもそれ以外の手を思いつかなかったが、この兵器は元々『憤怒の魔神』や巨大魔獣など、人間では到底敵わない相手用に開発した物だ。
この状況で、果たして使用して良いものか……?
さらに、射出の衝撃波で周囲の建造物は大きく破壊される。余波で被害者が出るかもしれない。
マグナは考えを巡らせ一瞬躊躇したが、しかし、もはやこれしか手がないと結論を出す。
そう決断したのなら、迷いは無用だ。敵に回避行動を取られる前に、素早く発射せねばならない。
ヘンデレックの指示により、王城の塔にその巨大な『超魔導加速雷砲』が姿を現し、12騎士たちに狙いを定める。
もちろん魔力は充填済みだ。
「よし、私に同調させろ! ターゲットをロックオンする!」
より正確に撃つため、地上のヘンデレックが照準を合わせ、それに魔導砲を同調させる。
そして周りの魔道士たちは、射出によって起こる衝撃波に備えた。
「なんだありゃ? あいつら何してやがんだ?」
「む、奥の手というヤツか。見たことのない魔導機だ、撃たすのは危険かもしれん」
「まあ待てホビアル、情報収集も重要だろ? 魔導大国のイオが開発した秘密兵器、どれほどのモノなのか見てみるのも一興だぜ」
「ふむ、儂も興味あるところじゃ」
12騎士たちが様子を窺う中、全ての発射準備が整う。
その不穏な空気に、慎重派――この任務のリーダーであるホビアルが攻撃を仕掛けようとした瞬間、巨砲が火を噴いた。
「いっけええええええええええええっっっ!」
マグナの気合いとともに撃ち出された巨大金属球が、衝撃波と稲妻を散らしながら音速を超えて12騎士たちに迫る。
ただの物理的な攻撃ではなく、膨大な魔力に包まれた超エネルギー弾だ。
よってその命中範囲はかなり広く、敵4人をまとめて粉砕可能だった。
まさに電光石火! 回避不能の砲弾が、見事12騎士たちに直撃した――ただし、その直径2mの金属球は、フエルサの右腕によってピタリと止められていたが。
フエルサは、12騎士最強のパワーを持っていたのだった。
「しょせんこの程度か。つまらんな」
「そんな馬鹿な……! 魔力で超加速されたアダマンタイト金属球を、片手で受け止めるとは……」
その目で実際見たにも拘わらず、ヘンデレックは現実を受け入れることができなかった。
魔王相手ですら、ダメージを与えられる自信はあった。
それが、人間相手に無力とは……。
いや、ガイルウ陛下は、こいつらのことを人間でも悪魔でもない存在だと言っていた。
ではいったい何者なのだ?
ヘンデレックは神に見放されたような気分になる。
「こうなったら、わらわの真の力で『闇の炎王』を……!」
「だめですサクヤ様! 無理な召喚は身体に大きな負荷が掛かって、全身の血管が……心臓が破裂してしまいます!」
「ではどうすれば……」
「お父上のガイルウ陛下と一緒に、『転移水晶』でテンプルムへ避難してください。そしてユーリをここに……」
そこまで言って、マグナは次の言葉が出せなくなる。
実はユーリから『転移水晶』を1つだけ受け取っていた。
これはどうしても移動に必要なときか、もしくは緊急脱出用にずっと取っておいたものだ。
現在はガイルウ国王に預けているが、それを使ってサクヤたちには避難してもらおうと考えた。
しかし、このイオにユーリを呼ぶことは躊躇われた。
あのユーリとて、この4人を一度に相手したら危険と感じたからだ。
こんなところでユーリを失うわけにはいかない。
対策なしにいきなり戦うのではなく、時間を掛けて準備を整えて、絶対に負けない態勢で挑むべきだ。
そう瞬時に結論を出し、サクヤにはユーリの救援を頼むことをやめた。
「サクヤ様、いま見たことをあのユーリに伝えてください。あいつなら、きっとこの化け物たちを倒す対策をしてくれるはずです。イオのことはお任せください」
「い、いやじゃ、わらわもここに残る!」
「サクヤ様、姉さんの言う通りにしてください。もしサクヤ様を人質にでも取られたら、ユーリは戦えなくなります」
「でもお前たちは……」
「アタシたちなら大丈夫です。人質にされるヘマなんてしませんので安心してください。サクヤ様とユーリだけが頼りなんです」
そうは言いつつも、マグナもシェナも命を捨てるつもりだった。
サクヤがここを離れたら、時間を稼ぐために一気に12騎士へ攻撃を仕掛ける。
玉砕覚悟なら、1人くらいは道連れにできるかもしれない……。
「わかった、必ず助けに来るから、皆絶対に死ぬでないぞ!」
「もちろんです、ではサクヤ様、ユーリによろしく」
サクヤが後ろを向いて駆けだした瞬間、マグナとシェナのすぐ横を光が通り抜けた。
12騎士最速のレントが、2人の間を駆け抜けたのだ。
「おっとお姫さん、勝手に退場するのは困るぜ」
「がっ……! ふぅ…………」
「サクヤ様っ!?」
レントに腹部を強打され、サクヤは気を失ってしまった。
それを見て駆けだそうとしたベルニカ姉妹を、後方から一気に接近したフエルサが捕まえ、片手に1人ずつ首を掴んで持ち上げる。
「きゃあああっ」
「あぐううっ!」
「降伏しろ。首の骨を砕かれたいか?」
「くっ……お前たちのようなヤツらに屈するなんて絶対イヤだね」
「そ、そうよ、殺したいなら殺しなさい!」
自分たちは人質としての価値が高い。
利用されることでユーリがピンチになるくらいなら、ここで死んだほうがマシだ。
マグナたちは覚悟を決める。
「確かお前ら『ナンバーズ』のベルニカ姉妹だな。噂通り気の強い女たちだぜ。素直に降参しねえと、本当に首を折るぜ」
「いいからやれよ、腰抜け野郎っ」
「クソ生意気な……ほれ」
「ぐあああああっ」
マグナとシェナの首が、今にもゴキリと鳴りそうなほどに締め上げられる。
このままいくと、あと十秒も経たないうちに首は砕かれるだろう。
ギシギシと頸骨がずれるような感覚が2人を襲い続け、そしてあと少しの力で全てが終わる。
「くっ……も、もう一度ユーリに会いたかったぜ」
「ふふ、生まれ変わっても、ユーリと出会いたいわ……」
「は~、仕方ねえ……死ね」
マグナたちの命の灯火が消えゆく刹那、首を締め上げていたフエルサの両腕が宙に飛んだ。
もちろん、ユーリの一太刀だった。
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フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!