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第7章 新国テンプルム
第375話 新たな仲間
『重力魔法』で地面にへばりついている2騎士――ホビアルとサンシオンという男たちに、僕は歩み寄りながら話し掛ける。
「これで『魔王』の力を理解したか? 自分たちの非力さを思い知っただろう。いいか、僕が大陸南部を全て制圧したら、次は帝国の番だ。それまで首を洗って待ってるように、クラトラス皇帝に伝えておけ」
「ぐうっ……まさか、魔王軍の侵略がここまで進んでいたとは……! あの悪魔は、そんなこと一言も言ってなかったぞ!?」
あの悪魔? ってなんのことだ?
僕が知らないうちに、帝国はすでに悪魔と接触していたのか!?
「あの悪魔……とはどの悪魔だ?」
「き、貴様の配下の、悪魔グレモリーというヤツじゃ! ヤツが言うには、奪ったのはエーアスト近辺のみという話じゃったのに!」
「くっ、そうか、それすらお前の策略だったということか!」
まずい、なんのことかサッパリ分からない。
恐らく、グレモリーという悪魔が帝国に現れていたんだろうけど、そんな話は全然聞いてないからなあ。
適当にごまかさないと!
「あ、ああ、そいつは僕の部下だ。ヤツは今どうしてる?」
「ふふっ、皇帝陛下が始末したぞ。あんなヤツなど陛下の敵ではなかったわ。計画が上手くいかなくて残念だったな」
よかった、倒してくれてたのか。
まあこれくらい『亜天使』の力が強ければ、下っ端悪魔くらい当然倒せるだろうけど。
でも、油断してもらっては困るから、釘を刺しておかないと。
「あの程度の下っ端ザコ悪魔、殺されても痛くも痒くもないぞ」
「ザ、ザコ悪魔だったのか!? くそっ、ヤツは魔王軍第2司令官と言っていたのに、それも偽りだったとは……」
「ぐぬうっ、アレほどの大悪魔が、まさか下っ端とは思わんかったわ。儂らは慢心しすぎていたようじゃな……」
しまった、大悪魔だったのか! あんなヤツ敵じゃなかったなんて言うから、てっきり下級悪魔だと思っちゃったよ。
っていうか、魔王軍第2司令官って、ヴァクラース級じゃないの?
そんなヤツ倒せたんだ!? 帝国凄いな……僕以外では無理と思ってたよ。
なるほど、魔王軍から守ってやるなんて大言も、あながちうぬぼれではなかったんだな。
でも、この程度の強さじゃなあ……といいつつも、進化型の『亜天使』はスキルが融合しちゃってるから、イマイチ正確な強さが測れないんだけどね。
マグナさんたちがコイツらのこと強いって言ってたから、結構強いんだろうけど。
実はヴァクラースの強さも、いきなり即殺しちゃったんでどれくらい強かったのかよく分からないんだよね。
牙無魔たちがヴァクラースは超強かったと言ってたから、まあ強かったんだろう。
そのヴァクラースと同クラスの悪魔を簡単に倒したのなら、皇帝はかなり強いんだと思う。
とりあえず、これ以上会話するとニセ魔王ってことがバレちゃうかもしれないから、もう適当なこと言うのはやめておこう。
おっと、もう1つだけ聞きたいことがあったんだ。
「帝国にフォルスという男が行ったはずだが、そいつはどうしてる?」
「何故フォルスなどを気にする?」
「い、いや、なかなか手強い男だったからな。ちょっと気になって……」
「フォルス程度が手強い? 何が目的か知らんが、フォルスの行方は聞かされてない。生死も不明だ」
……ウソは言ってないようだ。
これ以上の追求は無理か。
「お前たちは殺さない。帝国に帰って、僕のことを報告してもらわないと困るからな。ただし、また面倒事を起こされても困る。大人しく帰るよう、少しのあいだ封印させてもらおう……『かりそめの聖棺』!」
「なっ、これはっ……!?」
「ま、まて、儂を……」
有無を言わさず、ホビアルとサンシオン、フエルサ、レントという4騎士を『空間魔法』で封印する。
これは次元牢系の一番下位の魔法で、短期間――最大30日ほど、この世界から隔離することができる。
牢獄として封じるだけじゃなく、味方を一時的に避難させる目的にも使え、解除するまでの期間も自由自在だ。
今回は2週間ほど、4騎士を封印することにした。
そして、この『かりそめの聖棺』を僕が作った10mのゴーレムに持たせて、歩いて帝国に届けさせることにする。
ちょうど封印が解除される頃に到着するよう、ゴーレムの進む速度を調節して送り出した。
彼らからの報告を聞いて、クラトラス皇帝が侵略を思いとどまってくれるのを祈るしかない。
全てを終えて後ろを振り返ると、気絶していたサクヤが目を覚ましていて、僕に飛びついてきた。
「ユーリ~っ、会いたかったぞ! またしてもわらわを、このイオを救ってくれるとは……!」
「久しぶりだねサクヤ。元気そうで何よりだよ。もうすっかり病気は良くなったようだね」
「おぬしのおかげじゃ。あれ以来一度も再発したことはない」
サクヤは心臓に疾患があったんだけど、僕が『万能薬』で治したのだった。
サクヤの後ろから、マグナさんとシェナさんも歩いて近付いてくる。
「ユーリ……まったくお前って男は、本当に凄いヤツだぜ。さすがに皇帝親衛隊4人相手じゃ分が悪いかと思ったが、あんなヤツらに負ける男じゃなかったよな。しばらく会ってない間に、すっかりお前の強さを忘れちまってたよ。っていうか、以前よりさらに強くなってないか?」
確かに、マグナさんたちと行動していたときと比べたら、十倍くらい強くなっているかも……いや、数十倍以上強くなってるか?
今なら『闇の炎王』すら、完全に僕の敵じゃないだろう。
「それにしても、ユーリってばまた『魔王』に戻っちゃったのね。『魔王の力を知れ!』とかカッコよかったわよ」
「ええっ!? いや、あれはその、帝国に対する……」
「クスクス、分かってるわよ。帝国が他国に侵攻しないように、『魔王』のフリして力を見せつけたんでしょ? あんなコトされたら、帝国だって迂闊な行動はできないでしょうからね」
「ああそうだな。『魔王ユーリ』に『首を洗って待ってろ』なんて言われちゃ、さすがの帝国も対策に追われるに違いない。侵略なんてしてる場合じゃないだろうな」
「そうなることを願ってます。じゃないと、本当に僕が帝国を潰さなくちゃいけなくなりますからね」
今回は勝ったけど、『亜天使』の力が不気味なだけに、僕1人では手に負えない可能性も充分ある。
自分の強さに慢心しないよう注意しなくちゃな。
「おっとユーリ、再会をもう少し楽しみたいところだが、怪我人が続出してるんでな。先に治療してくるから待っててくれ」
「あ、それなら僕に任せてください。炎駒よ、僕に力を貸してくれ!」
さっき喚び出した『炎駒』にもう一度来てもらう。
「おわあああ~っ!? なんだこのドデカい魔獣は!?」
「『炎駒』って、あの伝説の魔獣王『炎駒』のこと!?」
「す……凄い神聖力じゃ! ひょっとしてこれは『神獣』なのか!? こんなのは、わらわでも召喚できぬぞ!」
「何度も喚び出してゴメンね炎駒。この場にいる負傷者を全員治してほしいんだ」
炎駒には1日1回『神獣』としての力を行使してもらうことができるので、それをお願いする。
「クオオオン」
炎駒は一声返事をしたかと思うと全身が眩しく輝き出し、そのあたたかい治癒の光で、怪我を負った人たちの傷を全て治してくれたのだった。
もちろん、身体欠損も問題なく治っている。
僕が1人1人治していたらかなり時間が掛かっていただろうから、炎駒がいてくれて助かった。
「す……すんげええええ……『炎駒』にこんな力があったなんて知らなかったぜ」
よし、これで怪我人の治療はOKだ。
あとはこの破壊された街並みをなんとかしよう。
僕は『回帰魔法』を全開で発動させる。
「な、なんじゃこりゃあっ!? まるで時間が巻き戻るかのように、破壊された建物が直っていくぞ!?」
「こんなコトまでできるなんて……! ユーリってば、どんどん神様みたいになっていくのね……」
ほどなくして、街並みはほとんど元に戻った。
ただ植物には効果がない魔法なので、折れた街路樹などは直せなかったけど、これくらい修繕できればあとの復興はそう難しくないだろう。
「凄いぞユーリっ! おぬしは本物の救世主じゃ! わらわはもうおぬしのそばから離れぬからな! 今度こそ一緒に連れていってもらうぞ!」
「いや、サクヤ様、あなたはイオの姫君ですから……」
「マグナ、もうサクヤ様をその呪縛から解放してやれ」
そう言って近付いてきたのは、40代半ばほどの男性だった。
服装から察するに、イオ国の重鎮だろう。恐らく宰相かな?
以前の宰相はギュンターという、邪悪な野望を持った男だったけど、今度の人は誠実でとても聡明そうな人だ。
「テンプルム国王ユーリ陛下、お初にお目に掛かります、宰相のヘンデレックと申します。この度はなんとお礼を言ってよいか……」
「初めまして、テンプルム国の王ユーリです。皆さん無事のようで、本当に安心しました」
「ヘンデレック、サクヤ様を解放しろっていうのはどういうことだ?」
「サクヤ様はずっと病弱で自由がなかった。そして病気から回復されたあとも、イオ国の姫として縛られていた。もうこの辺でよいだろう。これからはサクヤ様には自由に生きてほしいのだ」
「じゃ、じゃあ、わらわはユーリのところへ行ってもいいのか!? やったーっ!」
「で、でもヘンデレック、サクヤ様がいなくては……」
「シェナ、このイオは大丈夫だ。私とガイルウ陛下に任せておけ」
「だけどヘンデレック……えっ、お前とガイルウ陛下に?」
「そうだ。我らだけでちゃんとやっていける。だからマグナ、シェナ、お前たちもユーリ陛下のもとへ行くがよい。付いていきたいのだろ?」
な、なんだ?
サクヤだけじゃなくて、マグナさんとシェナさんもテンプルムへ来るってことか?
それって大丈夫なの!?
「で、でも、アタシたち……」
「……姉さん、素直になりましょう。私、ずっとユーリのところに行きたいと思っていたわ。そばに居たいと……一緒に国を作っていきたいと」
「………………そうだな。別に意地張ってたわけじゃないけど、アタシはイオにいなくちゃダメなんだと思い込んでた。でも本心はユーリのそばに行きたかった。シェナの言うとおり、素直になるぜ」
「ということですユーリ陛下。ご迷惑をお掛けするかと思いますが、この姉妹もテンプルム国においていただけませんか。イオのことはご心配なく。宰相である私がなんとかします」
「迷惑だなんてとんでもありません、ベルニカ姉妹が来てくれたら心強いです。テンプルムもさらに発展するでしょう。心より歓迎いたします」
「わらわもだからな、ユーリ!」
「ああ、サクヤも大歓迎だよ」
サクヤが満面の笑顔でもう一度僕の首に飛びついた。
成り行きでサクヤとベルニカ姉妹がテンプルムに来ることになったけど、ウチが人材不足なのは間違いないのでありがたいところだ。
ただ、女難の面で考えると、またトラブルが増えそうな予感はするけど……。
どうか穏便に済みますように。
***********************************
『無限のスキルゲッター』の第2巻が6月下旬に発売されます。
2巻では、ユーリが人類最強クラスから異世界最強クラスへと成長していきます。
そしてなんと、web版では出てこなかった新キャラが登場します。
ほか、書籍版では合計2万字ほど改稿・加筆いたしました。特にドラゴン退治編はかなり改稿しましたので、リノたちも大活躍します。
web版よりも絶対に面白くなってますので、どうか是非よろしくお願いいたしますm(_ _)m
「これで『魔王』の力を理解したか? 自分たちの非力さを思い知っただろう。いいか、僕が大陸南部を全て制圧したら、次は帝国の番だ。それまで首を洗って待ってるように、クラトラス皇帝に伝えておけ」
「ぐうっ……まさか、魔王軍の侵略がここまで進んでいたとは……! あの悪魔は、そんなこと一言も言ってなかったぞ!?」
あの悪魔? ってなんのことだ?
僕が知らないうちに、帝国はすでに悪魔と接触していたのか!?
「あの悪魔……とはどの悪魔だ?」
「き、貴様の配下の、悪魔グレモリーというヤツじゃ! ヤツが言うには、奪ったのはエーアスト近辺のみという話じゃったのに!」
「くっ、そうか、それすらお前の策略だったということか!」
まずい、なんのことかサッパリ分からない。
恐らく、グレモリーという悪魔が帝国に現れていたんだろうけど、そんな話は全然聞いてないからなあ。
適当にごまかさないと!
「あ、ああ、そいつは僕の部下だ。ヤツは今どうしてる?」
「ふふっ、皇帝陛下が始末したぞ。あんなヤツなど陛下の敵ではなかったわ。計画が上手くいかなくて残念だったな」
よかった、倒してくれてたのか。
まあこれくらい『亜天使』の力が強ければ、下っ端悪魔くらい当然倒せるだろうけど。
でも、油断してもらっては困るから、釘を刺しておかないと。
「あの程度の下っ端ザコ悪魔、殺されても痛くも痒くもないぞ」
「ザ、ザコ悪魔だったのか!? くそっ、ヤツは魔王軍第2司令官と言っていたのに、それも偽りだったとは……」
「ぐぬうっ、アレほどの大悪魔が、まさか下っ端とは思わんかったわ。儂らは慢心しすぎていたようじゃな……」
しまった、大悪魔だったのか! あんなヤツ敵じゃなかったなんて言うから、てっきり下級悪魔だと思っちゃったよ。
っていうか、魔王軍第2司令官って、ヴァクラース級じゃないの?
そんなヤツ倒せたんだ!? 帝国凄いな……僕以外では無理と思ってたよ。
なるほど、魔王軍から守ってやるなんて大言も、あながちうぬぼれではなかったんだな。
でも、この程度の強さじゃなあ……といいつつも、進化型の『亜天使』はスキルが融合しちゃってるから、イマイチ正確な強さが測れないんだけどね。
マグナさんたちがコイツらのこと強いって言ってたから、結構強いんだろうけど。
実はヴァクラースの強さも、いきなり即殺しちゃったんでどれくらい強かったのかよく分からないんだよね。
牙無魔たちがヴァクラースは超強かったと言ってたから、まあ強かったんだろう。
そのヴァクラースと同クラスの悪魔を簡単に倒したのなら、皇帝はかなり強いんだと思う。
とりあえず、これ以上会話するとニセ魔王ってことがバレちゃうかもしれないから、もう適当なこと言うのはやめておこう。
おっと、もう1つだけ聞きたいことがあったんだ。
「帝国にフォルスという男が行ったはずだが、そいつはどうしてる?」
「何故フォルスなどを気にする?」
「い、いや、なかなか手強い男だったからな。ちょっと気になって……」
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これ以上の追求は無理か。
「お前たちは殺さない。帝国に帰って、僕のことを報告してもらわないと困るからな。ただし、また面倒事を起こされても困る。大人しく帰るよう、少しのあいだ封印させてもらおう……『かりそめの聖棺』!」
「なっ、これはっ……!?」
「ま、まて、儂を……」
有無を言わさず、ホビアルとサンシオン、フエルサ、レントという4騎士を『空間魔法』で封印する。
これは次元牢系の一番下位の魔法で、短期間――最大30日ほど、この世界から隔離することができる。
牢獄として封じるだけじゃなく、味方を一時的に避難させる目的にも使え、解除するまでの期間も自由自在だ。
今回は2週間ほど、4騎士を封印することにした。
そして、この『かりそめの聖棺』を僕が作った10mのゴーレムに持たせて、歩いて帝国に届けさせることにする。
ちょうど封印が解除される頃に到着するよう、ゴーレムの進む速度を調節して送り出した。
彼らからの報告を聞いて、クラトラス皇帝が侵略を思いとどまってくれるのを祈るしかない。
全てを終えて後ろを振り返ると、気絶していたサクヤが目を覚ましていて、僕に飛びついてきた。
「ユーリ~っ、会いたかったぞ! またしてもわらわを、このイオを救ってくれるとは……!」
「久しぶりだねサクヤ。元気そうで何よりだよ。もうすっかり病気は良くなったようだね」
「おぬしのおかげじゃ。あれ以来一度も再発したことはない」
サクヤは心臓に疾患があったんだけど、僕が『万能薬』で治したのだった。
サクヤの後ろから、マグナさんとシェナさんも歩いて近付いてくる。
「ユーリ……まったくお前って男は、本当に凄いヤツだぜ。さすがに皇帝親衛隊4人相手じゃ分が悪いかと思ったが、あんなヤツらに負ける男じゃなかったよな。しばらく会ってない間に、すっかりお前の強さを忘れちまってたよ。っていうか、以前よりさらに強くなってないか?」
確かに、マグナさんたちと行動していたときと比べたら、十倍くらい強くなっているかも……いや、数十倍以上強くなってるか?
今なら『闇の炎王』すら、完全に僕の敵じゃないだろう。
「それにしても、ユーリってばまた『魔王』に戻っちゃったのね。『魔王の力を知れ!』とかカッコよかったわよ」
「ええっ!? いや、あれはその、帝国に対する……」
「クスクス、分かってるわよ。帝国が他国に侵攻しないように、『魔王』のフリして力を見せつけたんでしょ? あんなコトされたら、帝国だって迂闊な行動はできないでしょうからね」
「ああそうだな。『魔王ユーリ』に『首を洗って待ってろ』なんて言われちゃ、さすがの帝国も対策に追われるに違いない。侵略なんてしてる場合じゃないだろうな」
「そうなることを願ってます。じゃないと、本当に僕が帝国を潰さなくちゃいけなくなりますからね」
今回は勝ったけど、『亜天使』の力が不気味なだけに、僕1人では手に負えない可能性も充分ある。
自分の強さに慢心しないよう注意しなくちゃな。
「おっとユーリ、再会をもう少し楽しみたいところだが、怪我人が続出してるんでな。先に治療してくるから待っててくれ」
「あ、それなら僕に任せてください。炎駒よ、僕に力を貸してくれ!」
さっき喚び出した『炎駒』にもう一度来てもらう。
「おわあああ~っ!? なんだこのドデカい魔獣は!?」
「『炎駒』って、あの伝説の魔獣王『炎駒』のこと!?」
「す……凄い神聖力じゃ! ひょっとしてこれは『神獣』なのか!? こんなのは、わらわでも召喚できぬぞ!」
「何度も喚び出してゴメンね炎駒。この場にいる負傷者を全員治してほしいんだ」
炎駒には1日1回『神獣』としての力を行使してもらうことができるので、それをお願いする。
「クオオオン」
炎駒は一声返事をしたかと思うと全身が眩しく輝き出し、そのあたたかい治癒の光で、怪我を負った人たちの傷を全て治してくれたのだった。
もちろん、身体欠損も問題なく治っている。
僕が1人1人治していたらかなり時間が掛かっていただろうから、炎駒がいてくれて助かった。
「す……すんげええええ……『炎駒』にこんな力があったなんて知らなかったぜ」
よし、これで怪我人の治療はOKだ。
あとはこの破壊された街並みをなんとかしよう。
僕は『回帰魔法』を全開で発動させる。
「な、なんじゃこりゃあっ!? まるで時間が巻き戻るかのように、破壊された建物が直っていくぞ!?」
「こんなコトまでできるなんて……! ユーリってば、どんどん神様みたいになっていくのね……」
ほどなくして、街並みはほとんど元に戻った。
ただ植物には効果がない魔法なので、折れた街路樹などは直せなかったけど、これくらい修繕できればあとの復興はそう難しくないだろう。
「凄いぞユーリっ! おぬしは本物の救世主じゃ! わらわはもうおぬしのそばから離れぬからな! 今度こそ一緒に連れていってもらうぞ!」
「いや、サクヤ様、あなたはイオの姫君ですから……」
「マグナ、もうサクヤ様をその呪縛から解放してやれ」
そう言って近付いてきたのは、40代半ばほどの男性だった。
服装から察するに、イオ国の重鎮だろう。恐らく宰相かな?
以前の宰相はギュンターという、邪悪な野望を持った男だったけど、今度の人は誠実でとても聡明そうな人だ。
「テンプルム国王ユーリ陛下、お初にお目に掛かります、宰相のヘンデレックと申します。この度はなんとお礼を言ってよいか……」
「初めまして、テンプルム国の王ユーリです。皆さん無事のようで、本当に安心しました」
「ヘンデレック、サクヤ様を解放しろっていうのはどういうことだ?」
「サクヤ様はずっと病弱で自由がなかった。そして病気から回復されたあとも、イオ国の姫として縛られていた。もうこの辺でよいだろう。これからはサクヤ様には自由に生きてほしいのだ」
「じゃ、じゃあ、わらわはユーリのところへ行ってもいいのか!? やったーっ!」
「で、でもヘンデレック、サクヤ様がいなくては……」
「シェナ、このイオは大丈夫だ。私とガイルウ陛下に任せておけ」
「だけどヘンデレック……えっ、お前とガイルウ陛下に?」
「そうだ。我らだけでちゃんとやっていける。だからマグナ、シェナ、お前たちもユーリ陛下のもとへ行くがよい。付いていきたいのだろ?」
な、なんだ?
サクヤだけじゃなくて、マグナさんとシェナさんもテンプルムへ来るってことか?
それって大丈夫なの!?
「で、でも、アタシたち……」
「……姉さん、素直になりましょう。私、ずっとユーリのところに行きたいと思っていたわ。そばに居たいと……一緒に国を作っていきたいと」
「………………そうだな。別に意地張ってたわけじゃないけど、アタシはイオにいなくちゃダメなんだと思い込んでた。でも本心はユーリのそばに行きたかった。シェナの言うとおり、素直になるぜ」
「ということですユーリ陛下。ご迷惑をお掛けするかと思いますが、この姉妹もテンプルム国においていただけませんか。イオのことはご心配なく。宰相である私がなんとかします」
「迷惑だなんてとんでもありません、ベルニカ姉妹が来てくれたら心強いです。テンプルムもさらに発展するでしょう。心より歓迎いたします」
「わらわもだからな、ユーリ!」
「ああ、サクヤも大歓迎だよ」
サクヤが満面の笑顔でもう一度僕の首に飛びついた。
成り行きでサクヤとベルニカ姉妹がテンプルムに来ることになったけど、ウチが人材不足なのは間違いないのでありがたいところだ。
ただ、女難の面で考えると、またトラブルが増えそうな予感はするけど……。
どうか穏便に済みますように。
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『無限のスキルゲッター』の第2巻が6月下旬に発売されます。
2巻では、ユーリが人類最強クラスから異世界最強クラスへと成長していきます。
そしてなんと、web版では出てこなかった新キャラが登場します。
ほか、書籍版では合計2万字ほど改稿・加筆いたしました。特にドラゴン退治編はかなり改稿しましたので、リノたちも大活躍します。
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