少年の短い家出

みすたー.そいそーす

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拐引《かいいん》

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 俺は目を覚ます、しかし視界は真っ暗で口には何かテープのようなものがはられてる。背中には、固く冷たい感覚。そして腕は後ろでしっかりと縛られている。すると竹山さんの声がした。

「ごめんな椿。俺はお前を騙してたんだ。まあ、ただで寝どこと3食飯つきなんて、そんな都合のいい話があるわけないけどな。」

 そう笑い気味に言う彼の周りで、数名の笑い声も聞こえる。俺は手首の縄を外そうと必死になって手を動かす。しかし縄が丈夫なうえにしっかりと結ばれている。

「抵抗するな。言う事を聞いてもらおうか。おとなしくしてろ、今お前の親父に連絡入れるから。」

 すると竹山は電話をかけ、部屋には携帯の音だけが鳴りひびいた。すると俺の親が電話に出てきた。

「もしもし、名雪です。」

 疲れ切った声でそう答えた。

「お前の息子は預かった。今すぐ1億2000万きっちり揃えて、駅のホームに来い。そこの二番レーン端から3番目のベンチにおいてその場を去れ。」

「何を言っているのですか?イタズラ電話なら切りますよ?」

 すると、一人が俺の口についているテープを勢い良く剥がす。口の周りがひりひりした。

「おい、なんか言え。」

「椿か?椿、そこにいるなら返事してくれ!」

 電話越しに聞こえる声の主に俺は返事をする。

「ああ、父さん俺だよ。家出したらつかまっちゃった、これは俺が起こした問題だ、こいつらに金なんて出さないでいいよ。」

 さらに言葉を続けようとしたが、右の頬に強烈な痛みが広がる。

「おいガキ!余計なこと喋んな。しゃべったらどうなるかわかるな?」

 そう言い、男は俺の腕にナイフを突きつけた。俺は恐怖で腰が抜け、声も出なかった。

「わかった、金は用意する。あと一日待ってくれ。」

「わかった、明日の昼の12時カバンに金を入れ、その場を立ち去れ。警察に連絡したら、ガキの命は無いと思え。」

 そう言い残し電話は終了した。
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