巷で噂の婚約破棄を見た!

F.conoe

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浮気なんてダメだよー

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おお、あれが噂の婚約破棄。

王立学園の卒業パーティ。その中央で麗しの公爵令嬢様に指を突きつけ「婚約破棄だー!どうだ思い知ったかー!(意訳)」と宣言しているわが国の王子様を見て私は変に興奮した。
あれが噂の婚約破棄!
まさか王子までやるとは、まぁ想定内だけど、歴史的瞬間に立ち会ったみたいな変な喜びが湧いてくる。いいぞもっとやれ!

公爵令嬢様が「はぁあああああ」と長いため息をついていそうな口を扇で隠してから、王子の言う「公爵令嬢の悪行」の不自然さをズバズバズバズバついていく。すごいわー頭の回転はやいわー私だったらぽかーんしちゃうよ。さすが優秀と噂の公爵令嬢様。

婚約「解消」という普通な言い方ではなくあえての「破棄」という言葉で噂されるこの現象は、最近わが国どころか世界中の人間に流行っている病気……? 病気なのか? どういうべきなんだろうか。とりあえず流行病みたいに流行っているものである。
なんか「浮気したら婚約破棄(や離婚を)宣言したくなっちゃう」らしい。

そもそもの原因は妖精にある。

妖精はピュアなのだ。ピュアピュアなのだ。
浮気するならその前にちゃんと離婚しましょう。婚約者以外に好きな人ができたならちゃんと婚約破棄しましょう。でも心変わりはひどいから、情けない姿を世に晒しちゃえ!
という思考回路らしい。それがいろいろあって影響してこうなった。
私は妖精の言葉が分からないから聞いた話でしかないけど。

妖精は、この世界で人間とともに共存しているが、妖精はこの世と妖精界との間にいる存在なので基本的に物質的に触れることはできない。見えるだけ。声も聞こえるだけ。
でもこの世の自然界は妖精界と密接な関係にあるので、妖精と仲良くすれば作物はよく育つし、日照りや干ばつも防げたりする。
原理はわからないけどそういうものなのだ。妖精はとてもすごい存在なのである。超ピュアだけど。

そんな妖精はピュアなので基本的に政治に関わりはない。
政治的なむずかしい契約をしようとすると「????????」って顔をされるので人間はみんな諦めた。
無断で契約して妖精に迷惑かけた国の王様は1日でハゲた。2日で歯が全部虫歯になった。3日で痛風になった。4日で全身にニキビが吹き出た。触ると痛いタイプのニキビだったらしい。5日でもうやめてって謝った。
契約をなくしたら虫歯は自然には治らなかったけどハゲとニキビは治ったそうだ。あと痛風も。

妖精は基本的にピュアで優しいいきものなので、悪いことをしなければ味方でいてくれるため、小さな可愛い隣人として私たちの暮らしに溶け込んでいる。

そんな妖精が、最近「政略結婚」という存在を知ったそうだ。

人間社会に政略結婚が登場してからもうずいぶん時間がたってるのに、今? と私は思うのだけど、ピュアな妖精は政略とか「??????」で理解できなかったのだろう。
「?????」が「???!!!」になって、政略結婚ってこういうことなんだ!!! と理解なされたのが最近なのだと人間たちは思っている。

しかしこれにより世界は新しい形相を呈することになった。

今までの政略結婚により、お貴族様たちのなかで浮気は文化となり、夫婦双方にひみつの恋人がいるのが当たり前になっていたのだが、そんなの妖精は許さなかった。
「他に好きな人がいるのに他の人と結婚するとか意味わからない!」
妖精の言葉はわからない私でも理解できるその思考により、それはまるで病気のように、自然災害のように、人間の中に突発的に現れた。

病名?「婚約破棄劇」またはシンプルに「離婚劇」である。

双方ともに浮気している場合は、双方ともに「私この人が好きなの!」「俺はこの人が好きなんだ!」とパーティ会場で発表会を繰り広げ、ぽかーんとする外野をよそに「では離婚しましょう!」「そうだな!」と当人たちだけ満足げに離婚話をすすめる、という現象が起きる。

今でこそ「ああ妖精の」「あれが噂の離婚劇」と認知されているが、最初の一人であった公爵夫妻の離婚劇は隣国を巻き込んだ大騒動になった。公爵の奥さんは隣国の公爵家から嫁いできていたので。

そこで国王交えて
「落ち着けお前ら」
「これが落ち着いていられるか! 好きな人と結婚できないなんておかしいでしょう!」
「いやいやいやいや政略結婚じゃん!?」
というやり取りをしている部屋にポン!と現れたのが妖精だ。

「そうだよーセイリャクケッコンなんて変だよ! 好きな人と結婚しようよ!  愛がないなんてそんなのおかしい!」
「そうだそうだー!」
「おかしいよ! おかしい!」
「セイリャクケッコンやめようようー」
「そんなのつらいよーやめようよー」

と妖精たちは人間と同じ姿だけれどずっと小さくて、つい愛でたくなる体で、背中の羽をぱたぱたさせながら口々に言ったらしい。
王様ともなると妖精の言葉も学んでいるので、王様は妖精たちにおっしゃった。

「いやしかしですな」

と妖精たちに政略結婚の必要性をこんこんと説明なされたけれども、妖精は例によって「??????」の顔で首をかしげるだけ。

なんかこの騒動には妖精が関わってるようだと察した王様たちは、これは従っておこう、と離婚を認めた。そして両国はともに「はじめて離婚劇をした国」として世界で変に有名になった。

国王様たちはこの現象を、公爵夫婦だけのものだろうとお考えだったのだけれど、その後も続々と発生する「離婚劇」そして次に現れた「婚約破棄劇」に面食らい、妖精と話せば「愛し合わない結婚なんてだめだよ!」の一点張り。
急遽いま政略結婚に頼らない新体制というか、離婚が大量発生している貴族社会の新体制を作り上げるのに奔走しているのであるが、そんな王様の子、王子殿下までもが「婚約破棄劇」に罹患りかんした。

このまま普通に卒業して、婚約者と結婚したならそれをもって王太子になる予定だったのだが、頼りになる公爵令嬢様を失った王子の立太子は……え、どうなるの。
いちメイドごときにはちょっと分からないわ……思考放棄ではないヨ。

さて、そんな私の前で繰り広げられる次期国王のはずだった王子様による「巷で噂の婚約破棄」は順調に進んで、公爵令嬢の罪は何一つないということが明らかになった。

これは巷で噂の婚約破棄の中でも、浮気した側の浮気相手が性悪だった場合のパターンである。
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