77 / 455
4.王子の葛藤
ただ待つだけ
しおりを挟む
突如として変わった俺の世界は、悪意に満ちていた。
「所詮、あの女の息子だから、その程度のことしかできないのね」
俺が、失敗をする度に、なじる女がいた。
飽きもせず、俺の顔を見るたびに繰り返される言葉の数々は、俺の心を抉るものばかり。
それを止めてくれる者は、誰もいない。
皆、それを見て見ぬふりをするだけ。
その代わり、父親は……会いに行けば、優しくしてくれたのだが……。
でも王として忙しくしているらしい父親と会えるのは、月に1回か2回あればいい方。
そんな俺の、変わってしまった日常というのは……朝起きれば、まずはどんなにまずいご飯でも、無理矢理食べさせられることから始まる。
それからすぐ、まずは学んでは怒られる。
次に、魔法の訓練をしては怒られる。
武術の練習をしては怒られる。
そして社交の練習をしては怒られる。
夕方にはまた、まずいご飯を食べさせられて、何もない真っ暗闇の中で無理矢理眠ることを強制される。
あのテストの前までは、ちょっとしたおしゃべりをして、笑い合うことも多かったのに、今ではゴードンやメイド達は、淡々と職務をこなすだけ。
今の彼らは、人形のように感情がまるで見えない。
今、喜んでいるのか、悲しんでいるのか。
声や仕草、表情で、分かったはずだった。
少なくとも……もう会わせてもらえなくなった母親については、わかりやすすぎる程だった。
それが、まるで今、分からない。
誰のも。
そんな中、強い怒りなのか、憎しみなのか分からない、トゲのような感情を次々とぶつけてくる女が、あのテストの日から急に俺の前に現れたのだった。
父親の妻……つまり、正妃という立場だというその女は、俺の決められたつまらない1日1日の中に、必ずと言っていいほど俺のところに来ては
「あんな女の子供の癖に」
と怒りの感情をぶつけてきたかと思えば
「あの女にできて、どうして私は……」
と急に泣き喚かれたことも少なくない。
(どうして、こんなことを言われないといけないの?)
息つく暇もないほど1日を終えて、1人で寝るようになってしまったベッドの中で俺はいつも隠れるように泣いた。
それから、会えなくなった母親が歌ってくれた子守唄を、自分のために歌い、無理矢理夢の中に落ちる。
そうして時が過ぎるのを、ただただ待つだけ。
でも、そんな俺が、ただ待つだけだとしても、楽しみにしている日ができた。
「所詮、あの女の息子だから、その程度のことしかできないのね」
俺が、失敗をする度に、なじる女がいた。
飽きもせず、俺の顔を見るたびに繰り返される言葉の数々は、俺の心を抉るものばかり。
それを止めてくれる者は、誰もいない。
皆、それを見て見ぬふりをするだけ。
その代わり、父親は……会いに行けば、優しくしてくれたのだが……。
でも王として忙しくしているらしい父親と会えるのは、月に1回か2回あればいい方。
そんな俺の、変わってしまった日常というのは……朝起きれば、まずはどんなにまずいご飯でも、無理矢理食べさせられることから始まる。
それからすぐ、まずは学んでは怒られる。
次に、魔法の訓練をしては怒られる。
武術の練習をしては怒られる。
そして社交の練習をしては怒られる。
夕方にはまた、まずいご飯を食べさせられて、何もない真っ暗闇の中で無理矢理眠ることを強制される。
あのテストの前までは、ちょっとしたおしゃべりをして、笑い合うことも多かったのに、今ではゴードンやメイド達は、淡々と職務をこなすだけ。
今の彼らは、人形のように感情がまるで見えない。
今、喜んでいるのか、悲しんでいるのか。
声や仕草、表情で、分かったはずだった。
少なくとも……もう会わせてもらえなくなった母親については、わかりやすすぎる程だった。
それが、まるで今、分からない。
誰のも。
そんな中、強い怒りなのか、憎しみなのか分からない、トゲのような感情を次々とぶつけてくる女が、あのテストの日から急に俺の前に現れたのだった。
父親の妻……つまり、正妃という立場だというその女は、俺の決められたつまらない1日1日の中に、必ずと言っていいほど俺のところに来ては
「あんな女の子供の癖に」
と怒りの感情をぶつけてきたかと思えば
「あの女にできて、どうして私は……」
と急に泣き喚かれたことも少なくない。
(どうして、こんなことを言われないといけないの?)
息つく暇もないほど1日を終えて、1人で寝るようになってしまったベッドの中で俺はいつも隠れるように泣いた。
それから、会えなくなった母親が歌ってくれた子守唄を、自分のために歌い、無理矢理夢の中に落ちる。
そうして時が過ぎるのを、ただただ待つだけ。
でも、そんな俺が、ただ待つだけだとしても、楽しみにしている日ができた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる