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7.呪われしアルストメリー
そして彼らは決めた、自分たちのための国を創る事を
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空中に浮く天井という、奇妙な現象が起きたのだ。
もしも、彼らに何の力もなかったならば、さぞ驚いたことだろう。
恐怖したことだろう。
逃げ出したことだろう。
だがしかし、彼らはそうしなかった。
何故なら、彼らもまた奇妙な現象を引き起こす力を持っていたから。
それから、すでに空っぽになった鍋を囲みながら、互いの自己紹介が始まった。
まず率先して自分の事を話したのが、メルキオール。
「俺は、こうやって水や風も操れるし、火だって起こせるんだ」
メルキオールはが空っぽな鍋に手をかざすと、あっという間に水が湧き出てきた。
そして消えそうになっていた炎が再び元気を取り戻した。
「すごいですねぇ……」
「いやぁ……先ほど見ましたが、これは本当に便利だ……」
ステラは目を輝かせて褒め称え、トラヴィスはメガネをくいっと直しながら目をパチクリさせた。
ルカは楽しそうに拍手をし、リーサはじっと見つめているだけ。
そして……頭が大きな図書館状態のアルフィーはと言えば、目の前で起きた現象に対して
「ありえない……」
と頭を抱えながら、ぶつぶつ呟いた。
アルフィーという人間は、自分が知らなかった事を知ることへの拒否反応は起きない。
むしろ率先して知識を吸収しようと、脳を働かせる。
だが、知っているはずの知識と相反する出来事が起きると、脳が反抗期を起こしたかのように頭痛が起きてしまうのだ。
火がどのように生まれるか。
水がどのように生まれるか。
その原理を頭に叩き込んでいるからこその、脳の混乱。
「おいおい、何だよ、ありえないって。現にこうして……ほれ」
メルキオールは、にかっとアルフィーに笑顔を向け……。
「くさっ!!」
「ははは!!くっせえ屁をする動物の臭い、風に連れてきてもらったぜ」
「やめろ!早く消せ!」
「ほらほらどうした、ありえないんだろ?ここにそんな動物いないんだから、お前がくせーくせー言うのも、ありえないはずだぜ」
「分かった!分かった信じるから!やめろ!」
こうしてアルフィーは力技を使われて、メルキオールの魔を信じさせられた。
ただ、この「屁」の風によって、張り詰めていた6人の空気が一気に和らいだのか、そこからはとんとん拍子に自己紹介が済んだ。
ステラは、あちこちに謎の空間を作ってしまう力を持っている。
その空間が何か、ステラ自身も分かっていないそうだが、ステラの力を恐れた親からは、虐待をされ続けてきたそうだ。
リーサは、自分がどんな力を持っているかは明かさなかったが、死んだ人の魂が見えることだけは話した。
そのせいで、親だけではなく、周囲から煙たがられて森に捨てられたそうだ。
トラヴィスは、医師を志していたらしいが、触れるだけで細胞や神経を変化させられる、不可思議な手を持っているとの話。
トラヴィスがいた国の人々は、トラヴィスの手を奇跡の手と崇めたてた。
だが、一方で、トラヴィスの手だけを切り取り、高い報酬で売り飛ばそうとする賊も現れるようになり、トラヴィスは必死で国から脱出した。
つまり。
ここに集まった6人は、偶然……いや、ルカによって創られた必然によって集められた、共通点を持っていたのだ。
1つ目は、それぞれが常人には理解されない特殊な力……「魔」を持っていること。
そして2つ目は、「魔」によって国を追われたこと。
この6人が、意気投合し、自分たちのための国を創ろうと動くのは、とても自然なことだった。
例えそれが、数多く起きる悲劇の序章だったとしても。
もしも、彼らに何の力もなかったならば、さぞ驚いたことだろう。
恐怖したことだろう。
逃げ出したことだろう。
だがしかし、彼らはそうしなかった。
何故なら、彼らもまた奇妙な現象を引き起こす力を持っていたから。
それから、すでに空っぽになった鍋を囲みながら、互いの自己紹介が始まった。
まず率先して自分の事を話したのが、メルキオール。
「俺は、こうやって水や風も操れるし、火だって起こせるんだ」
メルキオールはが空っぽな鍋に手をかざすと、あっという間に水が湧き出てきた。
そして消えそうになっていた炎が再び元気を取り戻した。
「すごいですねぇ……」
「いやぁ……先ほど見ましたが、これは本当に便利だ……」
ステラは目を輝かせて褒め称え、トラヴィスはメガネをくいっと直しながら目をパチクリさせた。
ルカは楽しそうに拍手をし、リーサはじっと見つめているだけ。
そして……頭が大きな図書館状態のアルフィーはと言えば、目の前で起きた現象に対して
「ありえない……」
と頭を抱えながら、ぶつぶつ呟いた。
アルフィーという人間は、自分が知らなかった事を知ることへの拒否反応は起きない。
むしろ率先して知識を吸収しようと、脳を働かせる。
だが、知っているはずの知識と相反する出来事が起きると、脳が反抗期を起こしたかのように頭痛が起きてしまうのだ。
火がどのように生まれるか。
水がどのように生まれるか。
その原理を頭に叩き込んでいるからこその、脳の混乱。
「おいおい、何だよ、ありえないって。現にこうして……ほれ」
メルキオールは、にかっとアルフィーに笑顔を向け……。
「くさっ!!」
「ははは!!くっせえ屁をする動物の臭い、風に連れてきてもらったぜ」
「やめろ!早く消せ!」
「ほらほらどうした、ありえないんだろ?ここにそんな動物いないんだから、お前がくせーくせー言うのも、ありえないはずだぜ」
「分かった!分かった信じるから!やめろ!」
こうしてアルフィーは力技を使われて、メルキオールの魔を信じさせられた。
ただ、この「屁」の風によって、張り詰めていた6人の空気が一気に和らいだのか、そこからはとんとん拍子に自己紹介が済んだ。
ステラは、あちこちに謎の空間を作ってしまう力を持っている。
その空間が何か、ステラ自身も分かっていないそうだが、ステラの力を恐れた親からは、虐待をされ続けてきたそうだ。
リーサは、自分がどんな力を持っているかは明かさなかったが、死んだ人の魂が見えることだけは話した。
そのせいで、親だけではなく、周囲から煙たがられて森に捨てられたそうだ。
トラヴィスは、医師を志していたらしいが、触れるだけで細胞や神経を変化させられる、不可思議な手を持っているとの話。
トラヴィスがいた国の人々は、トラヴィスの手を奇跡の手と崇めたてた。
だが、一方で、トラヴィスの手だけを切り取り、高い報酬で売り飛ばそうとする賊も現れるようになり、トラヴィスは必死で国から脱出した。
つまり。
ここに集まった6人は、偶然……いや、ルカによって創られた必然によって集められた、共通点を持っていたのだ。
1つ目は、それぞれが常人には理解されない特殊な力……「魔」を持っていること。
そして2つ目は、「魔」によって国を追われたこと。
この6人が、意気投合し、自分たちのための国を創ろうと動くのは、とても自然なことだった。
例えそれが、数多く起きる悲劇の序章だったとしても。
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