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7.呪われしアルストメリー

だからね、謝るだけじゃもう無理なの

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「ど、どうしたの!?」
「す、すみません……何でもないです……」
「何でもないわけないでしょう!?」

カサブランカが涙を流したのは、記憶の話を私がしたからだ。
やっぱり。この記憶というキーワードに、きっと何か隠されてる。
私は、もう少しカサブランカを揺さぶることに決めた。

「ねえ、私がアルストメリーを救う鍵だって……あなたそう言ったよね?」

カサブランカが、声を出さずに頷く。

「それに、私を巻き込んで申し訳ないとも、言ったよね?」

再び、カサブランカは頷くだけ。

「それなら、私にはもっと、あなたが持っている情報を知る権利があると、思うんだけど?」
「で、ですがそれは……」

こういう時の、悲劇のヒロインタイプのセリフは大体決まっている。

「余計なことを知ってあなたが苦しむのが申し訳ない、とか?」
「なっなぜ……」

なぜ私が言おうとしたことを先に言えるのか、とカサブランカは言いたいのだろう。
金魚のように口をぱくぱくさせている。
ここで「あなたのことならなんでもお見通しよ」的なファンタジーにお決まりなセリフをぶちかましてやりたいところだが、今はそれどころじゃないので、さっさと本題に入ることにした。

「あのね、カサブランカ」
「……はい……」

私は、わざと声のトーンを低めにした。
相手を怯えさせるのに、この方法が好都合であることを、社会人の諸先輩方に教わった。
まさかこのタイミングでこの技が使えるなんて、思わなかったけれど。

「すでに、私ね、巻き込まれてるの、あなたに、分かる?」
「は……はい……申し訳ございません」
「だからね、謝るだけじゃね、もう無理なの」
「……と言いますと……?」

まだ、とぼける気か。
それとも、本気で分かっていないのか。

「ノアが」

ノアという名前を聞いてから、またピクリと体が反応した。

「カサブランカの体にいるのは私だって知ってた」
「……それ……は……」
「これは、あなたにとって想定内?想定外?」

カサブランカは、何故か無言になった。

「それに、私を選んだのがあなたで、その理由が…………」

いざ言葉にすると恥ずかしいが、仕方がない。

「エッチなことが好きそうだから……とか言ってたけど?」
「それだけではございません」
「ということは、それ以外にも何かあるんだ?」
「あ…………」

しまった、という表情をカサブランカがした。
エッチが好きそう……というのも、どうやってカサブランカが判断したのかも気になるけれど……畳み掛けるように私はもう1つの疑問を投げることにした。

「あともう1つ気になることがあるんだけど……」
「…………一体何を…………」

これ以上暴かれるのか。
そう言いたげな目をして、カサブランカは私の言葉を待ってくれた。

「カサブランカの体は国を滅ぼす爆弾だ。下手な言葉を言えば、いつ爆弾が発動してもおかしくない。だから真実を知ろうとすると……ひどい頭痛がおきるようにした……とノアから聞いた。これ、全部本当?」

私が全ての疑問を言い終えると、カサブランカは色気たっぷりのため息をついてから

「ここから先の話は、あなたが今いる体にはどうしても残したくない情報なのです」

と、話すことを拒否してきた。
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