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虎の穴
しおりを挟むまぁ、通常下校時間は決まっていて。
5時には、校舎を出なければならなかった。
学祭とか特別な時は、顧問の許可を得ればいいのだったが。
自宅は近いので、5時半には家に着いた。
着替えてギターを持ち、地図を片手に歩き出していた。
マンションから、50メートル程行き。
右折して小さな橋を渡り、少し歩くと左側に少し奥まった小さな家があった。
石の両サイドは、砂利が敷き詰められていて。
多分、駐車場だと思った。
1台の赤い軽自動車が、停まっていた。
表札には新垣と書いてあり、チャイムを鳴らした。
玄関のドアを開けられると、綺麗な女性が出てきていた。
「あ こんにちわ 初めまして、田中麗奈です。よろしくおねがいします。」
「待ってたわよ。入ってね。」
女性に案内されて、家の中に入った。
中は以外に広く、リビングと左手にダイニングとキッチンがあった。
リビングに通されて、ソファーに座ってると。
紅茶とクッキーを、出された。
女性の名前は、優であった。
少し緊張して、紅茶を飲んでいた。
「あんまり緊張しなくていいのよ。もうすぐ戻ってきますからね。レッスンしないであの音域の広さは驚いたわよ。まぁ、レッスンしたからって音域が広くなるわけではないですけどね。なる人もいるのね。ただ、今は高音が苦しいでしょ? そこを直していかないとね。せっかくの声が潰れちゃうわよ。」
「そうなんですね。まだ、本格的にボーカルやり始めて1年ちょっとなので。全くわからないです。メンバーで審査会やって選ばれただけなので。」
「もっと素敵な声でるわよ。見てたけど、感情移入が激しいでしょ? 取り敢えず歌えなくなるようだと失格ですからね。そこも注意しないとね。感情を入れるのはいいことだけどね。入れすぎもよくないのよ。」
「はい、何度か失敗してます。バンドのメンバーが一緒に歌ったりしてくれてます。」
「でも、それが高音域だったら。だれもフォローできないでしょ?気をつけないとね。」
話しをしてると、吾郎が帰ってきた。
「先生、お邪魔してます。」
「ここは、歌の先生とギターの先生いるから。それじゃ、迷っちゃうな。俺は吾郎でいいし。妻は優って呼ぶといいよ。」
「わかりました。吾郎先生 優先生。」
「先生やめようかな。照れくさいだろ。じゃ、さんにしてね。それならいいよな?」
「はい、吾郎さん 優さん よろしくおねがいします」
「じゃ、一応レッスンの前に実力を見ようかな。こっちのスタジオでね。」
2人について行くと、8畳くらいの防音室があり。
アンプやマイクが並べられてあり、本格的なスタジオだった。
2人は別室に入って、ガラス越しに声を掛けていた。
あちらの声は、スピーカーで流れてきていた。
「そこに譜面あるだろ。それを弾いてくださいね。【スカボロフェアー】歌もだからね。」
「ちょっと知らないんですけど、歌詞もだいたいはわかりますけど。」
「譜面読めるなら、できるよね? 準備してやりなさいね。これアコステだから、そこの使っても構わないからね。」
多分、スローテンポな曲だった。
歌詞からすると、恋愛ムードな感じだった。
一通り目を通すと、エレキギターを置いてアコステに持ち替えていた。
綺麗な、メロディーだった。
今まで弾いたことのない、曲だった。
麗奈は少し間違えながらも、弾いていた。
1番が終わると。
「ストップ 全くダメだね。今まではリズムはドラムとベースに頼ってきたからいいけど、リズムが狂ってるし、間違えた所わかるよね?」
「はい 4箇所間違えました。すいません。」
「後、歌も下手だよ。まるで素人が歌ってるみただったからね。」
「すいません ごめんなさい」
「ほら、謝るなら間違わず正確に弾いて。歌もしっかり歌って。」
何度も1番の途中とかで、ダメ出しをされていた。
何十回もやって、やっと1番を無事弾き終わった。
「はい、お疲れ様。だいたいの実力はわかったから、次からは、ビシビシしごくからね。」
「はい、よろしくおねがいします。」
慣れないアコステで、少し指も痛かった。
スタジオから出ると、元の2人に戻っていた。
「じゃ、遅くなったから送ってくるよ。帰ろうか。」
「はい お邪魔しました 優さん ありがとうございました。失礼します。おやすみなさい。」
100メートル足らずの道を、吾郎と一緒にマンションまで帰っていた。
「まぁ、最初であそこまで弾けたやつはいないからな。曲も知らないのに。また、明日な。」
マンションの前で吾郎と別れて、家に入っていた。
8時だった。
急いでうがいをして、夕飯を1人で食べて片付けていた。
風呂に入り、ゆっくり浸かってから自室に戻り練習していた。
茉莉子の部屋をノックして、 【スカボロフェアー】のCDがないか聞いた。
「あれって、すっごい昔の歌でしょ?ちょっと待ってて。」
茉莉子は戸棚とか探し始め、CDを持ってきていた。
「これ、お母さんが持ってたのよ。なんでこんなものを?」
「今日、新垣先生のところで譜面だけ渡されて弾かされたの。8時くらいまでかかってやっと1番終わったの。」
「あらら 知らない曲か、しかも洋楽だしね。歌は歌わなかったでしょ?」
「歌も歌わされたから、困っちゃって・・・・・・・」
「超スパルタだね。英語の勉強がんばりなよ。いつも聞いてるからリスニングはOKだと思うけどね。私だって、譜面だけだったら簡単には弾きこなせないわよ。」
自室に戻り、ヘッドホンで曲を聴いていた。
麗奈が弾いた印象とは、異なっていた。
何回も聞き直して、歌詞も覚えていた。
エレキだったが、曲を練習していた。
その日は、麗奈は3時まで弾いていた。
「あなた、ちょっと意地悪だったんじゃないの?あの娘の音楽と、かけ離れてるしね。譜面だけで、知らない洋楽歌えって。外人じゃないんだから。」
「まぁな、それでも明日来れば見込みはあるしな。来なければ、ダイアの原石が埋もれたままになっちゃうけどな。やる気あれば、今頃必死に練習してるけどね。明日は違うことやるのに。」
「あら、見てあげないの?」
「そりゃ、練習してくればある程度は出来るようになるからな。見ないよ。」
次の日から、部活ではクリスマスソングの練習をし始めていた。
あすかが商店街に頼んで、去年と同じ場所でできることになった。
ちょっとした、ステージの様な台も作ってくれるらしい。
去年と同じレパートリーと、オリジナルのクリスマスソングを3曲用意した。
麗奈は、毎日通っていて。
いつも帰り道は、ショボンとして少し涙を浮かべながら帰っていた。
上手くなってるのか、実感がなかった。
でも、信じるしかなかった。
歌は、まだ発声練習だった。
毎日、毎日、1時間は発声練習をしていた。
ギターはというと、コードからだった。
コード移動で、何度もダメ出しを貰っていた。
家でも、コード練習に半分を費やし。
半分の時間は、みんなとの曲の練習に当てていた。
土・日は、地獄だった。
朝の8時から夜の7時まで、練習だった。
途中、10分休憩が2回と昼食の休憩が30分だった。
1年の審査は、その後も2回行われた。
合格点までは行かなかったが、取り敢えず期待すると言うことで練習をさせていた。
「麗奈。この頃弾き方変わってないか? 前よりも綺麗な音出してるけど。」
「自分だと、わからないんですけどね。地獄の虎の穴ですよ。」
「なんだ、そりゃ? そんな特訓があるのかよ?」
「えっと、指導してくれるって人が家に来て。毎日通ってますね。3時間くらい。土日なんて、10時間ですからね。地獄ですよ。」
「へえ、物好きがいたもんだな。有名な人なのか?」
「私は知らなかったですけど、姉が知ってました。かなり有名だったみたいだけどプロにはならなかったみたいですね。」
「ギターだけ10時間きついよな。手が取れちゃうよ。」
「あ 歌もなので、奥さんが歌を教えてくれてます。まだ、発声練習だけですけどね。」
「それって、もしかしたら新垣って人だろ。この街に去年引っ越して来たんだよな。有名だよ。」
「はい、そうです。」
「いいなぁ~ 月謝高いんだろ? よく親が出してくれたな。麗奈っち、お金持ちだな。」
「最初は、タダでもいいって言われたんですけど、それでは、気がひけるだろうからって月5000円です。父が出してくれてます。」
「普通、あんな人だったら、1回1時間5000円だよ。すごいな。」
「でも、毎日帰り道は情けなくて、ショボンとして帰ってますよ。」
麗奈も物凄く練習してると思い、メンバーもそれ以降激しい練習をしていた。
12月も中旬になり、吾郎と優に24日の休みを貰うように言った。
「あら、なんで来れないの? せっかくクリスマスパティーしようと思ったのに。また、二人っきりになっちゃうじゃないの。」
「えっと、ごめんなさい。商店街でライブやるので、行かないといけないので。」
「そっか、それじゃ愛弟子を見に行こうかしらね。」
「先生、恥ずかしいですから。まだ、先生にお見せ出来るようになってませんから。」
「いいのよ、今の実力を見たいだけだものね。だって、夏の祭典も学祭も全部見てたから知ってるわよ。」
「家族とクリスマスって、言えば良かったですよ。もう。」
「あら、去年も見たわよ。どうせ今年もやるんじゃないかって、期待してたけどね。」
まぁ、23日まで特訓は続いていた。
イブの練習は、学校で行っていた。
1年は2グループで、2曲づつ演奏を任された。
子供向けの曲だった。
Aグループ Bのグループ 麗奈達の順番だった。
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