ヴァレン兄さん、ねじが余ってます

四葉 翠花

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24.本物

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 二人で喫茶店の個室にやってきた。内密の話をしたいときにも使われる店だ。
 店員は心得ており、茶と菓子を運んでくると、一礼して奥に引っ込んでいく。卓の上には呼び鈴が置いてあり、呼ぶまで誰も部屋には来ない。
 まずは温かい茶を一口含むと、ゆっくりとエアイールは口を開いた。

「今年は夕月花の生育が悪く、値上がりしそうだというのは、前から言われていたことです。ここ最近は収穫量が落ちていたようですが、三ヶ月ほど前の出来事で決定的になりました。前領主が事故で亡くなってしまい、代替わりしてから育たなくなったそうです」

 エアイールの話に、ヴァレンは相槌を打って続きを促す。
 そのあたりの話は聞いていたが、エアイールが調べたという内容を聞いてみたい。

「夕月花は、領主が特殊な世話をして育てていたそうです。ただ、その世話の詳しい内容は明らかにされていません。新領主は世話の方法を知らないため、育たないのではという話がありました」

 話にやや食い違いが出てきた。
 エイブの話では、新領主はローダンデリアの血を引いていないから、ということだったはずだ。

「世話の方法を知っていると目される人物が一人います。夕月花をローダンデリアに広めた商人です。ところが、新領主とこの商人とは折り合いが悪いらしいのです」

 夕月花を広めた商人とは、エイブのことだろう。確かに、夕月花に関して詳しいことを知っていそうだった。
 新領主との折り合いが悪いというのは、エイブの話を思い出せば納得ではある。奥方の不義の子だと思っているのだ、当然だろう。
 ただ、本当に不義の子なのか、それとも勘違いなのかはわからない。もしかしたら、そうやって貶めることによって、別の思惑がある可能性だってある。

「しかし、このまま夕月花が育たなくては商売あがったりでしょう。そこで、ローダンデリアの血を引き、商人の言いなりになるような存在を探しているという憶測もあります。いっそ、前領主と容姿が似ている子を探して、その子を立てるのでは、とさえ」

「なるほどね。で、前領主は赤味がかった金髪なんだろう?」

 今までの話から推測すると、おそらく現領主の髪は違う色なのだろう。
 エイブは赤味がかった金髪がローダンデリア家の血の証、と思っている様子もあった。

「そのとおりです。だからあなたを身請けしようとしているのかと思ったのですが……あなた、いちおう四花ですからねぇ。身請け金は相当だし、手続きは面倒だし……偽りの子を演出するのにそこまでするだろうかと疑問なのですよ」

「あ、俺、本物」

「はい?」

 あっさりとしたヴァレンの言葉に、エアイールがきょとんとした顔をする。
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