ヴァレン兄さん、ねじが余ってます

四葉 翠花

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42.結果

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 エイブは島を去り、ローダンデリアに戻って子供たちを解放した。
 ただ一箇所に集められただけで終わっていた子供たちは、何だったのかよくわからないまま、給金という名目で十分な金額を与えられて帰っていった。
 子供たちは首を傾げながらも、貴族や金持ちというのは変わっているものだし、金はもらえたのだから、まあいいかとそれなりに納得したようだ。

 ローダンデリア領主も、子供たちの解放に協力したらしい。
 エイブとは折り合いが悪いという話だったが、ヴァレンがローダンデリア領主に出した手紙の返事を見ると、一緒に償っていくとあった。言葉の端々からも、ローダンデリア領主がおおらかな人物だということが伝わってくる。
 ヴァレンはローダンデリア領主の手紙を読みながら、親近感がわいていた。どうも、自分と似たようなものを感じる。血の絆のようなものが伺えた。

 念のために酒と賭博の弟子にも情報を知らせて、子供たちが処分されないように手配していたのだが、問題はなかった。
 役者になりたがっていたという、彼の弟も無事に解放され、戻ってきたそうだ。やはりエイブに捕われていたのだという。
 ところが、解放されても彼の弟はまだ夢をあきらめられないようで、彼は再び家庭内闘争で頭を抱えているらしい。きっと、近いうちに逃げて遊びに来ることだろう。

 手紙のやり取りなどをしながら、あっという間に数日が過ぎていた。ようやく落ち着いてきたところだ。

「この結果で、あなたは良いのですか?」

 ヴァレンの部屋にて、毛足の長い絨毯の上に座ったエアイールが尋ねてくる。

「んー、いいんじゃない?」

 絨毯の上に寝転び、エアイールの膝に頭を乗せながらヴァレンはのんびりと返す。

「殺すため、あなたに子供を作らせようとしたのでしょう?」

「でも、そうはならなかったし」

「あなたの実家の商売を邪魔したのも、あの男だったのでしょう?」

「らしいな。でも、もう過ぎたことだし」

「あの男に対する怒りや恨みはないのですか?」

「ない」

「……あなたは、本当に拍子抜けする方ですねぇ」

 呆れたように呟きながら、エアイールはヴァレンの髪に触れた。夕暮れ時の夕月花のような色とエイブが言っていた、赤味がかった金色の髪がさらりと揺れる。

「あぁ、夕月花も持ち直してきたって。新領主はやっぱり、急に舞い込んできた役目に焦っていたみたい。落ち着いたら、夕月花も順調に育ち始めたらしいよ」

 ミゼアスはローダンデリア領主と会ったそうだ。もしかしたらローダンデリアに向かうかもしれないという予想は、当たりだった。
 手紙には、顔は似ていないけれど、間違いなく同じ血を引いていると確信したと書かれていた。ヴァレンが感じたことと同じことを、実際に会ったミゼアスも感じ取ったようだ。
 おそらく奥方の不義の子ではなく、本当にローダンデリアの血を引いているのだろう。
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