ヴァレン兄さん、ねじが余ってます

四葉 翠花

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43.愛とは

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「あの男では育てられなかったのですよね。早く芽が出ろ、と願うことすら害になるなんて、本当に難しい花です」

「適当に見守っていりゃいいんだよ」

「……もし、あなたの性格がローダンデリア家の特徴だというのならば、ローダンデリア家の者が夕月花を育てられる、というのもあながち間違っていないのかもしれませんね」

「あー、大雑把でいいかげんだからなー」

「自分で言いますか……」

 エアイールのため息が響いた。

「……あいつはさ、夕月花のことも、俺の母さん、奥さん、そして領主のこと、みんな愛していたんだよ。でも、愛って難しいよな。大切なものを守るため、大切なものを殺す凶器になってしまうこともある」

「そうですね……」

 ヴァレンの髪を撫でる手が、ためらうように止まる。

「人を傷つけるのは愛じゃない、なんて通り一遍なことは言わないよ。複雑怪奇、本人も把握しきれない化け物、そういう愛だってあると思う。一口に愛といっても、いろいろ種類がある。もっとも俺にはそういったものがあると理解できても、実感はできないんだけどさ」

 しばし動きを止めていたエアイールだったが、ややあって口を開く。

「……実はわたくし、あの男を殺そうかと考えたことがありました」

「はい?」

「あなたが島を捨て、ローダンデリアに行くと言っていたら、実行していたかもしれませんね。これも愛だと、認めてくださいますか?」

「あー……まあ、実行しなくてよかったよ」

 突然の告白に、ヴァレンは苦笑する。

「それともうひとつ。この際だから言ってしまいましょう。あの男には感謝していることもあるのですよ」

「ん?」

「あなたの実家の商売を邪魔したことです。それがなければ、あなたは今ここにいなかったでしょうしね」

「はは……身勝手だなー」

「愛とは身勝手なもの、でしょう?」
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