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46.二人きり
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「アルン君……きみ、ひどい」
「……いくらヴァレンでも、タコなんて産めるはずがないでしょう」
「冗談です。お茶、置いておきますね。ああ、エアイール兄さん付きの連中から伝言です。今晩の仕事の準備はしておくので、どうぞごゆっくりだそうです」
二人の文句をあっさりと受け流し、アルンは平然と卓の上に茶を置いた。
「ヴァレン兄さんも、今晩の準備は僕たちがしておくので、どうぞゆっくりしていてください。そうそう、蜜蜂亭で新作の菓子が出たそうですよ。僕たちはいつでも喜んでお使いを承ります」
淡々としたアルンの声に、ヴァレンとエアイールは顔を見合わせる。
ゆっくりさせてやるから、菓子を買ってくれ。つまり、そういうことだろう。
二人とも無言のまま、懐から小銭を取り出してアルンの手に乗せた。菓子を買うのには十分な金額だ。
「お預かりいたします。それでは、どうぞごゆっくり」
無表情から一転して、にっこり笑って一礼すると、アルンは去っていった。
「……なんか、ちゃっかりしているな」
「そうですね……まあ、下心満載とはいえ、いちおう気を使ったようなので、ありがたくゆっくりさせていただきますか」
茶に口をつけながら、エアイールが息をつく。
「じゃあ、きみも水槽に戻っていなさい。エサをあげようね」
ヴァレンはタコを部屋の奥に置いてある水槽へと戻し、小さな貝を与える。
タコはエサを受け取ると、水槽に沈んでいる壷の中へと潜っていった。お家に帰ったようだ。
「さて、これで二人きりだな」
「ヴァレン……」
エアイールがヴァレンを見つめてくる。頬がうっすらと色付いているようだ。ヴァレンも微笑んでエアイールを見つめ返した。
「じゃあ、飲もうか」
「はい?」
「夕月花の件が無事に終わったお祝い。お互い、夜に仕事があるから、あまりがっつりは飲めないけど」
「いえ、わたくしはそれよりも……」
「え? がっつり飲みたいの? 俺は構わないけれど、おまえってそこまで強かったっけ?」
「……もう、いいです……」
がっくりとうなだれるエアイール。何か気に入らなかったようだ。
「俺、おまえがいてくれて良かったと思っている。だから、一緒に祝杯を挙げたいんだけれど……嫌?」
「ああ……もう、いいですよ。わかりました。あなたがそう言ってくださる。それで十分ですよ……今は」
どこか苦笑にも似た微笑みを浮かべ、エアイールは呟く。
「……いくらヴァレンでも、タコなんて産めるはずがないでしょう」
「冗談です。お茶、置いておきますね。ああ、エアイール兄さん付きの連中から伝言です。今晩の仕事の準備はしておくので、どうぞごゆっくりだそうです」
二人の文句をあっさりと受け流し、アルンは平然と卓の上に茶を置いた。
「ヴァレン兄さんも、今晩の準備は僕たちがしておくので、どうぞゆっくりしていてください。そうそう、蜜蜂亭で新作の菓子が出たそうですよ。僕たちはいつでも喜んでお使いを承ります」
淡々としたアルンの声に、ヴァレンとエアイールは顔を見合わせる。
ゆっくりさせてやるから、菓子を買ってくれ。つまり、そういうことだろう。
二人とも無言のまま、懐から小銭を取り出してアルンの手に乗せた。菓子を買うのには十分な金額だ。
「お預かりいたします。それでは、どうぞごゆっくり」
無表情から一転して、にっこり笑って一礼すると、アルンは去っていった。
「……なんか、ちゃっかりしているな」
「そうですね……まあ、下心満載とはいえ、いちおう気を使ったようなので、ありがたくゆっくりさせていただきますか」
茶に口をつけながら、エアイールが息をつく。
「じゃあ、きみも水槽に戻っていなさい。エサをあげようね」
ヴァレンはタコを部屋の奥に置いてある水槽へと戻し、小さな貝を与える。
タコはエサを受け取ると、水槽に沈んでいる壷の中へと潜っていった。お家に帰ったようだ。
「さて、これで二人きりだな」
「ヴァレン……」
エアイールがヴァレンを見つめてくる。頬がうっすらと色付いているようだ。ヴァレンも微笑んでエアイールを見つめ返した。
「じゃあ、飲もうか」
「はい?」
「夕月花の件が無事に終わったお祝い。お互い、夜に仕事があるから、あまりがっつりは飲めないけど」
「いえ、わたくしはそれよりも……」
「え? がっつり飲みたいの? 俺は構わないけれど、おまえってそこまで強かったっけ?」
「……もう、いいです……」
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「俺、おまえがいてくれて良かったと思っている。だから、一緒に祝杯を挙げたいんだけれど……嫌?」
「ああ……もう、いいですよ。わかりました。あなたがそう言ってくださる。それで十分ですよ……今は」
どこか苦笑にも似た微笑みを浮かべ、エアイールは呟く。
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