僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第二章 南へ

32.少年からの誘い

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 アデルジェスは長椅子に座り、膝の上に向かい合わせの形でミゼアスを座らせて、口づけを交わす。絡み合う舌が、燃え上がるように熱い。

「んっ……まだお風呂に入っていないから、あんまりしちゃ駄目……」

 戸惑った声をあげるミゼアスの瞳も、情欲に潤んでいる。

「うん……ちょっとだけ……」

 もう一度口づけ、アデルジェスはミゼアスの身体を服越しに撫でていく。直接的な箇所は避け、背中や脇腹、腰に手を這わせる。

「やぁん……あんまりしちゃ駄目だって言ってるのに……」

 甘い吐息を漏らしながらミゼアスが抗議する。それでもアデルジェスは構わずに服越しの愛撫を続けていく。

「あぁ……だめぇ……」

 とろけたミゼアスの声がアデルジェスの熱を煽る。だんだん我慢ができなくなってきた。直接ミゼアスの肌に触れ、もっと甘い喘ぎをあげさせたい。アデルジェスはミゼアスの服に手をかけようとする。

「あっ……それは駄目……」

 アデルジェスの手をかわし、ミゼアスは素早くアデルジェスの膝から逃げ出す。

「お風呂に入ってから、ね……」

 まだ甘い余韻を残す声で拒絶し、ミゼアスは浴室へと去っていった。
 取り残されたアデルジェスは、火照った身体を持て余して嘆息する。
 孤独感がじわじわとわきあがってくるが、わずかな間の辛抱だと己に言い聞かせる。ミゼアスが風呂から上がれば、また楽しい時間の続きが待っているのだ。
 しかしどうにもこの熱は、収まりがつきそうにない。

「……手洗に行ってくるか」

 ゆっくりと深く息を吐き、アデルジェスはそっと部屋から出る。
 ふらふらと廊下を歩いていると、突然物陰から手が伸びてきた。アデルジェスは廊下の隅にあった、物置のような一角に引きずり込まれてしまう。

「え?」

 いったい何事かと思えば、目の前には先ほどの集団の一人、アデルジェスと目が合った少年がいた。
 年齢は十五、六歳くらいだろうか。やや小生意気そうだが、顔立ちはなかなか整っているようだ。

「ねえ、あんた、とぼとぼ歩いてたけど、恋人に振られたの?」

 にっと笑いながら少年が問いかけてくる。

「い、いや、そういうわけじゃ……」

 しどろもどろに弁解しようとするが、少年は笑みを深くしただけだった。

「そこ、大きくしてる。つらいだろ? 俺が口で抜いてやるよ」

 少年はアデルジェスの下半身に視線をやった後、挑戦的に見上げてくる。状況についていけず、アデルジェスは身動きできずにいた。

「大丈夫だよ、あんたの恋人には黙っててあげるから。いい部屋に泊まってるんだ、金には困ってないだろ?」

 ズボンに手をかけられそうになり、アデルジェスは慌てて少年を押し留める。

「い、いや、俺はそういうことは!」

 少年を振り払い、アデルジェスは急いで部屋に向かって駆けていく。
 どうにか部屋に戻り、激しい音をたてて扉を閉めると、アデルジェスはやっと一息ついた。何回も深呼吸を繰り返し、自らを落ち着かせる。
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