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第三章 巡り会い
96.先輩の白花
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「まさか、賭博王に酒豪王という線でいくとは思いませんでした。確かに、そういった白花は聞いたことがありません。珍しさが功を奏した、ということでしょうか。あなたもよく考えたものですね」
「いえ……それ、僕が指導したわけじゃなくて……ヴァレンが一人で勝手に突っ走っていっただけです……」
苦い思いを噛みしめていたミゼアスの耳に、別な意味で頭の痛い言葉が響く。
嫌味ではなく、本当に感心しているらしいのが、さらにつらい。
「……実は、島を出る前にあの子が私を尋ねてきたのですよ」
「ヴァレンが?」
思わずミゼアスは疑問の声を漏らす。ヴァレンからそのような話は聞いた覚えがない。
「ええ。薬のことは怒っても、恨んでもいない、と。あまりにも真っ直ぐな目で言うものですから、畏怖を覚えましたね。あなたがあれほど信用していた理由が、わかったような気がしました」
穏やかにマリオンは続ける。わずかに寂しさが漂うようでもあったが、苦しげというほどではなかった。
「……あなたは、幼い頃から一際目立つ存在でした。他を拒絶するような、孤高の美。まるで磨き上げられた芸術品のごとく、あなたは完璧でした。人を寄せ付けないあなたが、私には多少なりとも和らいだ表情を見せてくれることは、私にとって誇りだったのですよ」
くすり、と笑みをこぼすとマリオンはミゼアスの頬に片手を伸ばす。
「でも、今のあなたはあの頃よりも、もっと美しい。本当に、幸せそうな笑顔を浮かべるようになりましたね。血の通った、温かな人間の美しさが今のあなたにはあります。あなたの旦那様が、その美しさを引き出したのですね」
マリオンの手がミゼアスの頬に触れる。やや硬めの、乾いた手だった。島にいた頃のような柔らかく、なめらかな手ではない。だが、心地よい温もりがある。
血の通った温かな人間の美しさは、今のマリオンも得ているのだ。
「マリオン兄さん……」
「もう、『兄さん』ではありませんよ。あの頃のように上下の立場だけではなく、今はお互いに白花ではないのですから。若輩者という言い訳は、もう通用しませんよ」
まるで、先輩の白花だった頃のような妖艶な笑みを浮かべるマリオン。つい、かつての立場に戻ったかのように、ミゼアスは呑まれそうになる。
「で……でも、呼び捨てにするのも……」
「私は呼び捨てのほうが嬉しいですけれどね。戸惑うあなたも美しいですね。あなたはとても可愛らしいですよ、ミゼアス」
ゆっくりと、マリオンの顔が近付いてくる。白花第一位として長年君臨していたミゼアスとはいえ、かつて刷り込まれた上下関係は簡単に抜けない。
ただ、目を見開いて固まることしかできなかった。
お互いの息がかかりそうなほど顔が近付いたとき、来客を告げる鈴の音が鳴り響いた。
「いえ……それ、僕が指導したわけじゃなくて……ヴァレンが一人で勝手に突っ走っていっただけです……」
苦い思いを噛みしめていたミゼアスの耳に、別な意味で頭の痛い言葉が響く。
嫌味ではなく、本当に感心しているらしいのが、さらにつらい。
「……実は、島を出る前にあの子が私を尋ねてきたのですよ」
「ヴァレンが?」
思わずミゼアスは疑問の声を漏らす。ヴァレンからそのような話は聞いた覚えがない。
「ええ。薬のことは怒っても、恨んでもいない、と。あまりにも真っ直ぐな目で言うものですから、畏怖を覚えましたね。あなたがあれほど信用していた理由が、わかったような気がしました」
穏やかにマリオンは続ける。わずかに寂しさが漂うようでもあったが、苦しげというほどではなかった。
「……あなたは、幼い頃から一際目立つ存在でした。他を拒絶するような、孤高の美。まるで磨き上げられた芸術品のごとく、あなたは完璧でした。人を寄せ付けないあなたが、私には多少なりとも和らいだ表情を見せてくれることは、私にとって誇りだったのですよ」
くすり、と笑みをこぼすとマリオンはミゼアスの頬に片手を伸ばす。
「でも、今のあなたはあの頃よりも、もっと美しい。本当に、幸せそうな笑顔を浮かべるようになりましたね。血の通った、温かな人間の美しさが今のあなたにはあります。あなたの旦那様が、その美しさを引き出したのですね」
マリオンの手がミゼアスの頬に触れる。やや硬めの、乾いた手だった。島にいた頃のような柔らかく、なめらかな手ではない。だが、心地よい温もりがある。
血の通った温かな人間の美しさは、今のマリオンも得ているのだ。
「マリオン兄さん……」
「もう、『兄さん』ではありませんよ。あの頃のように上下の立場だけではなく、今はお互いに白花ではないのですから。若輩者という言い訳は、もう通用しませんよ」
まるで、先輩の白花だった頃のような妖艶な笑みを浮かべるマリオン。つい、かつての立場に戻ったかのように、ミゼアスは呑まれそうになる。
「で……でも、呼び捨てにするのも……」
「私は呼び捨てのほうが嬉しいですけれどね。戸惑うあなたも美しいですね。あなたはとても可愛らしいですよ、ミゼアス」
ゆっくりと、マリオンの顔が近付いてくる。白花第一位として長年君臨していたミゼアスとはいえ、かつて刷り込まれた上下関係は簡単に抜けない。
ただ、目を見開いて固まることしかできなかった。
お互いの息がかかりそうなほど顔が近付いたとき、来客を告げる鈴の音が鳴り響いた。
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