116 / 133
第三章 巡り会い
116.寿命
しおりを挟む
「ミゼアス……」
寝台の上で眠り続けるミゼアスを眺めながら、アデルジェスは声を絞り出した。
領主主催の宴で見事な演奏を披露した直後、ミゼアスは突然倒れてしまった。
アデルジェスはミゼアスを抱えて、マリオンやイーノスと共に、彼らの家にやってきたのだ。
マリオンが医者を呼んだが、原因は不明との診断しか下されなかった。夜が明けてもミゼアスが目覚める様子はなく、昏睡状態のままである。
「ミゼアスの様子はどうですか?」
マリオンがやってきて、アデルジェスに問いかける。彼も一睡もしていないらしく、顔色が悪い。
「……ずっと、眠ったままです。いくら呼んでも何の反応もなくて……」
「そうですか……。実は先日、ミゼアスに不吉な言葉を残していった男娼がいましてね。寿命が残りわずかだとか……。そのときは戯言と思ったのですが、もう一度確かめに行ってきます」
「そんな……寿命……? お、俺も行きます!」
立ち去ろうとするマリオンをアデルジェスも追いかける。
あまりにも不吉すぎて、アデルジェスの頭は寿命という言葉について考えることを拒否した。
ただ、とにかくじっとしていらず、暴れ出したくなる衝動を抑えるのが精一杯だ。
ついてくるアデルジェスをマリオンは拒まず、二人は無言のまま、娼館に向かう。
すると娼館の前で、ちょうど帰ってきたところらしい化粧の濃い少年と出会った。マリオンが少年を呼び止める。
「あの店の……? 何の用? あたし、眠いんだけど」
「先日、寿命がどうのと言っていましたよね。あなたは本当に、人の寿命が見えるのですか? そして、本当だとすれば、その寿命をどうにかする方法はないのですか?」
ふてぶてしい態度で去ろうとする少年を捕まえ、マリオンは有無を言わせぬ調子で問い詰める。少年もマリオンの剣幕に押され気味のようだった。
「み、見えるのは本当よ……。でも、そんなに細かくはわからないわ。たとえば、あんたたちなんて、燃え盛っているようにしか見えなくて、あとどれくらいの寿命があるかなんてわからないわ。ここのところ、他に残り少ないとわかった相手なんて、昨日の宴で一人いたくらい……」
「では、寿命を延ばすような方法はないのですか?」
「……わからないわ。もし病気が原因だとすれば、取り除くことができればもしかすると……。でも、今までどうにかできたことは一度も……」
口ごもりながらも、少年は答える。しかし、その内容には希望が見当たらない。
大きく息を吐くと、マリオンはもう尋ねることなどないというように踵を返した。
「ね、ねえ……昨日のあの子って、本当に不夜島のミゼアスなの……?」
おそるおそるといったように、少年がマリオンの背に問いを投げかける。マリオンは足を止め、顔だけを振り返らせた。
「……だとしたら、どうだというのですか?」
冷たい、感情を一切伺わせない声でマリオンは言い放つ。
自分に投げかけられたわけでもないアデルジェスですら、身がすくんでしまいそうなほど底冷えのする声だった。
「……っ! な、なにも……ごめんなさい……」
しどろもどろに謝罪を述べる少年を後にして、マリオンは立ち去る。アデルジェスもあわててその後を追った。
寝台の上で眠り続けるミゼアスを眺めながら、アデルジェスは声を絞り出した。
領主主催の宴で見事な演奏を披露した直後、ミゼアスは突然倒れてしまった。
アデルジェスはミゼアスを抱えて、マリオンやイーノスと共に、彼らの家にやってきたのだ。
マリオンが医者を呼んだが、原因は不明との診断しか下されなかった。夜が明けてもミゼアスが目覚める様子はなく、昏睡状態のままである。
「ミゼアスの様子はどうですか?」
マリオンがやってきて、アデルジェスに問いかける。彼も一睡もしていないらしく、顔色が悪い。
「……ずっと、眠ったままです。いくら呼んでも何の反応もなくて……」
「そうですか……。実は先日、ミゼアスに不吉な言葉を残していった男娼がいましてね。寿命が残りわずかだとか……。そのときは戯言と思ったのですが、もう一度確かめに行ってきます」
「そんな……寿命……? お、俺も行きます!」
立ち去ろうとするマリオンをアデルジェスも追いかける。
あまりにも不吉すぎて、アデルジェスの頭は寿命という言葉について考えることを拒否した。
ただ、とにかくじっとしていらず、暴れ出したくなる衝動を抑えるのが精一杯だ。
ついてくるアデルジェスをマリオンは拒まず、二人は無言のまま、娼館に向かう。
すると娼館の前で、ちょうど帰ってきたところらしい化粧の濃い少年と出会った。マリオンが少年を呼び止める。
「あの店の……? 何の用? あたし、眠いんだけど」
「先日、寿命がどうのと言っていましたよね。あなたは本当に、人の寿命が見えるのですか? そして、本当だとすれば、その寿命をどうにかする方法はないのですか?」
ふてぶてしい態度で去ろうとする少年を捕まえ、マリオンは有無を言わせぬ調子で問い詰める。少年もマリオンの剣幕に押され気味のようだった。
「み、見えるのは本当よ……。でも、そんなに細かくはわからないわ。たとえば、あんたたちなんて、燃え盛っているようにしか見えなくて、あとどれくらいの寿命があるかなんてわからないわ。ここのところ、他に残り少ないとわかった相手なんて、昨日の宴で一人いたくらい……」
「では、寿命を延ばすような方法はないのですか?」
「……わからないわ。もし病気が原因だとすれば、取り除くことができればもしかすると……。でも、今までどうにかできたことは一度も……」
口ごもりながらも、少年は答える。しかし、その内容には希望が見当たらない。
大きく息を吐くと、マリオンはもう尋ねることなどないというように踵を返した。
「ね、ねえ……昨日のあの子って、本当に不夜島のミゼアスなの……?」
おそるおそるといったように、少年がマリオンの背に問いを投げかける。マリオンは足を止め、顔だけを振り返らせた。
「……だとしたら、どうだというのですか?」
冷たい、感情を一切伺わせない声でマリオンは言い放つ。
自分に投げかけられたわけでもないアデルジェスですら、身がすくんでしまいそうなほど底冷えのする声だった。
「……っ! な、なにも……ごめんなさい……」
しどろもどろに謝罪を述べる少年を後にして、マリオンは立ち去る。アデルジェスもあわててその後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】トラウマ眼鏡系男子は幼馴染み王子に恋をする
獏乃みゆ
BL
黒髪メガネの地味な男子高校生・青山優李(あおやま ゆうり)。
小学生の頃、外見を理由にいじめられた彼は、顔を隠すように黒縁メガネをかけるようになった。
そんな優李を救ってくれたのは、幼馴染の遠野悠斗(とおの はると)。
優李は彼に恋をした。けれど、悠斗は同性で、その上誰もが振り返るほどの美貌の持ち主――手の届かない存在だった。
それでも傍にいたいと願う優李は自分の想いを絶対に隠し通そうと心に誓う。
一方、悠斗も密やかな想いをを秘めたまま優李を見つめ続ける。
一見穏やかな日常の裏で、二人の想いは静かにすれ違い始める。
やがて優李の前に、過去の“痛み”が再び姿を現す。
友情と恋の境界で揺れる二人が、すれ違いの果てに見つける答えとは。
――トラウマを抱えた少年と、彼を救った“王子”の救済と成長の物語。
─────────
両片想い幼馴染男子高校生の物語です。
個人的に、癖のあるキャラクターが好きなので、二人とも読み始めと印象が変化します。ご注意ください。
※主人公はメガネキャラですが、純粋に視力が悪くてメガネ着用というわけではないので、メガネ属性好きで読み始められる方はご注意ください。
※悠斗くん、穏やかで優しげな王子様キャラですが、途中で印象が変わる場合がありますので、キラキラ王子様がお好きな方はご注意ください。
─────
※ムーンライトノベルズにて連載していたものを加筆修正したものになります。
部分的に表現などが異なりますが、大筋のストーリーに変更はありません。
おそらく、より読みやすくなっているかと思います。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
竜人息子の溺愛!
神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。
勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。
だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。
そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。
超美形竜人息子×自称おじさん
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる