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14.彼を信じて
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「姫様は近頃、お綺麗になられましたね」
「え? ……イリナったら、どうしたの?」
眩しいものを眺めるように目を細めるイリナに、セレディローサは戸惑いながら言葉を返す。
「お美しく、凛として……王国の白百合と呼ばれた亡き王妃様によく似てきて……」
言葉をつまらせ、イリナは俯く。頬からは雫が伝っていた。
「……申し訳ございません。何もできないイリナを役立たずとお叱りください」
「どうしたの? 何を言っているの?」
泣き崩れるイリナにそっと寄り添い、セレディローサは優しく声をかける。
「……西国のお客様がいらしている間の姫様は、とても楽しそうでした。年頃の少女としての幸せを得ることができていたというのに……」
「まあ、イリナは何も悪くはないでしょう。むしろ、美味しいパイを作ってくれたり支度を手伝ってくれたり、感謝しているわ」
「ですが、あのお客様を引き止めることも、代わりとなって姫様を楽しませることもイリナにはできないのです。いっそあの方と逆になることができればよいのに……申し訳ござません……」
「おかしなことを言わないで。デイネストが国に帰るのは仕方のないことだわ。それに彼は彼、イリナはイリナでしょう。イリナは私の大切な家族よ。誰もイリナの代わりになんてなれないわ」
「姫様……」
さらにイリナの瞳から涙があふれ出てくる。
「それに……デイネストは、私の呪いを解く方法を探すって言ってくれたのよ」
「姫様の……呪いを……」
イリナの瞳からこぼれ落ちる涙が止まった。セレディローサを見据えたまま、大きく目を見開く。
「……魔女の呪いは絶対。解除は不可能。きっと、無理でしょう。でも、探してくれるという気持ちだけでも、震えるほどに嬉しかったわ。たとえ……」
「いえ! イリナは信じます! そのお方が姫様をお救いしてくださると!」
セレディローサの言葉を遮り、イリナが強い口調で言い切る。
「でも……」
「姫様がそのお方のことを信じなくて、どうするのですか! 姫様の呪いを解く方法を探すとおっしゃったのですよね。無理と決め付けるなど、そのお方にも失礼です!」
幼い頃以来、聞いたことがなかったようなイリナの強い叱責を受け、セレディローサは言葉を失う。
「……そうね。無理と決め付けるなど、デイネストに失礼ね。私も彼のことを信じなくてはならないわ」
「そうです! 姫様の信じる力も、きっとそのお方の糧となるはずです」
「……きっと、命を失うのはいつだろうかと考えるよりも、彼が明日は来てくれるだろうかと考えるほうが、幸せな気持ちになれるわね」
「そうですとも! イリナも毎日、お祈りいたします!」
力強く手を握るイリナの温もりが、セレディローサを勇気付けてくれる。彼を信じ、待ち続けよう。
――最後まで心くじけることなく、立派な王女でいるためにも。
「え? ……イリナったら、どうしたの?」
眩しいものを眺めるように目を細めるイリナに、セレディローサは戸惑いながら言葉を返す。
「お美しく、凛として……王国の白百合と呼ばれた亡き王妃様によく似てきて……」
言葉をつまらせ、イリナは俯く。頬からは雫が伝っていた。
「……申し訳ございません。何もできないイリナを役立たずとお叱りください」
「どうしたの? 何を言っているの?」
泣き崩れるイリナにそっと寄り添い、セレディローサは優しく声をかける。
「……西国のお客様がいらしている間の姫様は、とても楽しそうでした。年頃の少女としての幸せを得ることができていたというのに……」
「まあ、イリナは何も悪くはないでしょう。むしろ、美味しいパイを作ってくれたり支度を手伝ってくれたり、感謝しているわ」
「ですが、あのお客様を引き止めることも、代わりとなって姫様を楽しませることもイリナにはできないのです。いっそあの方と逆になることができればよいのに……申し訳ござません……」
「おかしなことを言わないで。デイネストが国に帰るのは仕方のないことだわ。それに彼は彼、イリナはイリナでしょう。イリナは私の大切な家族よ。誰もイリナの代わりになんてなれないわ」
「姫様……」
さらにイリナの瞳から涙があふれ出てくる。
「それに……デイネストは、私の呪いを解く方法を探すって言ってくれたのよ」
「姫様の……呪いを……」
イリナの瞳からこぼれ落ちる涙が止まった。セレディローサを見据えたまま、大きく目を見開く。
「……魔女の呪いは絶対。解除は不可能。きっと、無理でしょう。でも、探してくれるという気持ちだけでも、震えるほどに嬉しかったわ。たとえ……」
「いえ! イリナは信じます! そのお方が姫様をお救いしてくださると!」
セレディローサの言葉を遮り、イリナが強い口調で言い切る。
「でも……」
「姫様がそのお方のことを信じなくて、どうするのですか! 姫様の呪いを解く方法を探すとおっしゃったのですよね。無理と決め付けるなど、そのお方にも失礼です!」
幼い頃以来、聞いたことがなかったようなイリナの強い叱責を受け、セレディローサは言葉を失う。
「……そうね。無理と決め付けるなど、デイネストに失礼ね。私も彼のことを信じなくてはならないわ」
「そうです! 姫様の信じる力も、きっとそのお方の糧となるはずです」
「……きっと、命を失うのはいつだろうかと考えるよりも、彼が明日は来てくれるだろうかと考えるほうが、幸せな気持ちになれるわね」
「そうですとも! イリナも毎日、お祈りいたします!」
力強く手を握るイリナの温もりが、セレディローサを勇気付けてくれる。彼を信じ、待ち続けよう。
――最後まで心くじけることなく、立派な王女でいるためにも。
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