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五花をめざして15
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「……ミゼアス兄さん、最初からそこまで考えていたんですか?」
驚いてアルンは問いかける。
「うん。ここの見習いたちを三人も傷つけてくれたんだ。それ相応の報いは受けてもらわないとね。ご自慢の財産も跡継ぎの座も弟に奪われてくれれば、僕はとても嬉しいな。そうしたら身の程ってものを思い知るだろうよ。それからの彼の人生を思うと、ぞくぞくしちゃうね」
ミゼアスはにっこりと笑う。
三人は恐ろしくて、ミゼアスの笑顔を直視できなかった。
「それに、僕の可愛いアルンまで毒牙にかけようとしたんだ。死んだほうがましってくらいの目にあってもらわないと、つり合いがとれないよね。もうちょっとだけ、働きかけてみようかな」
無邪気とすらいえるような笑顔を浮かべ、ミゼアスは言う。
どのように働きかけるつもりなのか、三人は恐ろしくて聞く気すら起きなかった。
「あぁ、ほら、どうしたんだい。お茶が冷めてしまうよ。お菓子はたくさんあるし、いっぱい食べなさい」
ついつい手を止めてしまっていた三人に、ミゼアスが声をかける。
「は……はい……」
ぎこちなく、三人は再び食べ出す。
「そういえば……さっき、『僕の可愛いアルン』って言いました。ミゼアス兄さん、アルンだけですか?」
コリンが拗ねたような声を出す。
「拗ねているのかい? 可愛いねぇ、コリン。きみのことだって可愛いよ。もちろん、ブラム、きみのことも可愛いよ」
吹き出しながら、ミゼアスが優しく言う。
コリンは機嫌を直し、ブラムは照れたように俯く。
「そうそう、今日から一週間、夜は特別授業だから。僕がきみたちをどれだけ可愛いと思っているか、たっぷりと身体に教えてあげるよ」
口元をどこかいかがわしい笑みに形作り、ミゼアスはそう言った。
アルンは顔を赤くし、ブラムは目を白黒させて、コリンはもじもじと身体をくねらせる。ミゼアスだけが悠然と構えていた。
いつまでも同じ時が続くわけではない。
今はミゼアスに守られ、教えを受けることもできる。だが、それだって新しい分野の教えが始まることになり、時の流れは止まらない。
アルンもそう遠くない将来、客を取ることになるのだ。
今回の出来事で、自分がどれほどミゼアスに守られているのかアルンは思い知った。しかし守ってもらえるのも、アルンが見習いのうちだけだ。
自分の身は自分で守れるようになる必要があるのだ。そしていつか、ミゼアスが守ってくれているように、アルンが誰かを守ることができるだろうか。
ミゼアスは、五花になれとアルンに言った。それはアルンなら五花になれると言ってくれているということだろう。
五花とはこの島の最高位、選びぬかれた珠玉の存在だ。簡単になれるものではない。
それでもミゼアスがそう言ってくれているのだと思えば、めざせる気がした。
いつかミゼアスのような五花になり、誰かを守れるようになるのだ。アルンはそう決意し、まずは今晩の特別授業を乗り切ろうと脈打つ胸を押さえた。
驚いてアルンは問いかける。
「うん。ここの見習いたちを三人も傷つけてくれたんだ。それ相応の報いは受けてもらわないとね。ご自慢の財産も跡継ぎの座も弟に奪われてくれれば、僕はとても嬉しいな。そうしたら身の程ってものを思い知るだろうよ。それからの彼の人生を思うと、ぞくぞくしちゃうね」
ミゼアスはにっこりと笑う。
三人は恐ろしくて、ミゼアスの笑顔を直視できなかった。
「それに、僕の可愛いアルンまで毒牙にかけようとしたんだ。死んだほうがましってくらいの目にあってもらわないと、つり合いがとれないよね。もうちょっとだけ、働きかけてみようかな」
無邪気とすらいえるような笑顔を浮かべ、ミゼアスは言う。
どのように働きかけるつもりなのか、三人は恐ろしくて聞く気すら起きなかった。
「あぁ、ほら、どうしたんだい。お茶が冷めてしまうよ。お菓子はたくさんあるし、いっぱい食べなさい」
ついつい手を止めてしまっていた三人に、ミゼアスが声をかける。
「は……はい……」
ぎこちなく、三人は再び食べ出す。
「そういえば……さっき、『僕の可愛いアルン』って言いました。ミゼアス兄さん、アルンだけですか?」
コリンが拗ねたような声を出す。
「拗ねているのかい? 可愛いねぇ、コリン。きみのことだって可愛いよ。もちろん、ブラム、きみのことも可愛いよ」
吹き出しながら、ミゼアスが優しく言う。
コリンは機嫌を直し、ブラムは照れたように俯く。
「そうそう、今日から一週間、夜は特別授業だから。僕がきみたちをどれだけ可愛いと思っているか、たっぷりと身体に教えてあげるよ」
口元をどこかいかがわしい笑みに形作り、ミゼアスはそう言った。
アルンは顔を赤くし、ブラムは目を白黒させて、コリンはもじもじと身体をくねらせる。ミゼアスだけが悠然と構えていた。
いつまでも同じ時が続くわけではない。
今はミゼアスに守られ、教えを受けることもできる。だが、それだって新しい分野の教えが始まることになり、時の流れは止まらない。
アルンもそう遠くない将来、客を取ることになるのだ。
今回の出来事で、自分がどれほどミゼアスに守られているのかアルンは思い知った。しかし守ってもらえるのも、アルンが見習いのうちだけだ。
自分の身は自分で守れるようになる必要があるのだ。そしていつか、ミゼアスが守ってくれているように、アルンが誰かを守ることができるだろうか。
ミゼアスは、五花になれとアルンに言った。それはアルンなら五花になれると言ってくれているということだろう。
五花とはこの島の最高位、選びぬかれた珠玉の存在だ。簡単になれるものではない。
それでもミゼアスがそう言ってくれているのだと思えば、めざせる気がした。
いつかミゼアスのような五花になり、誰かを守れるようになるのだ。アルンはそう決意し、まずは今晩の特別授業を乗り切ろうと脈打つ胸を押さえた。
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