不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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友達以上恋人未満 2

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「とりあえずおまえも元気そうだし、取り込み中だったら俺は帰るよ」

「いえ! 本当にただの、どうでもよい考え事だったので! ああ、今、お茶を淹れるので待っていてください」

 平然と帰ろうとするヴァレンをとんでもないとばかりに引きとめ、エアイールは半ば強引にお茶の準備に取りかかる。

「はあ……おまえが大丈夫ならいいんだけど」

 いくぶんあっけにとられたようではあったが、ヴァレンはおとなしく椅子に座った。

「ここのところ、俺も忙しかったからさー。おまえも忙しかったみたいだし、そういう時期だったのかなあ」

「そうですね。忙しいのが重なったようですね」

 お茶を受け取りながら呟くヴァレンに相槌を打ちながら、エアイールも自らのお茶を卓の上に置いて椅子に座る。
 他愛もない会話がエアイールの心を満たし、胸ははずんでいく。
 わざわざ会いに来てくれたということは、ヴァレンにも特別な想いがあるのではないだろうか。確かめてみたいが、それも恐ろしい。
 客の想いを揺さぶり、手玉に取ることはたやすいのに、ヴァレンの気持ちを確かめることはできない臆病ぶりに、エアイールは我ながら愚かなことだと胸中でため息を漏らす。

「ヴァレン……よかったら、寝室に行きませんか?」

 こういった問いはできるのに、とエアイールは自らに呆れる。
 いつもならヴァレンは、『いいよ』か『今日はごめん』と答える。どちらの場合でもあっけらかんとしており、断られた場合でもエアイールを拒否しているわけではないとわかるので、問いかけるのに躊躇もない。

「え……いいの?」

 しかし、今日のヴァレンはいつもと様子が違った。思いがけない言葉を聞いたように目を丸くして、エアイールを伺ってくる。
 かつてない反応に、エアイールも驚いてヴァレンを見つめた。
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