不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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友達以上恋人未満 1

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 五花にして、つい最近繰り上がりで白花の第一位になったエアイールは、悩んでいた。
 ここのところ忙しい日が続き、ヴァレンの顔もしばらく見ていない。やっと落ち着いたので、久しぶりにヴァレンの顔を見に行きたいのだが、そのための理由が見つからないのだ。

 おそらく、何となく顔を見に来たと言ったとしても、ヴァレンは拒絶などしないだろう。そうなんだ、などと呟きながら受け入れてくれる様子が浮かぶ。ヴァレンはおおらかで、いろいろなものがゆるい。
 しかし、だからこそ万が一にでも嫌な顔をされた場合、立ち直れなくなりそうなのだ。

 ヴァレンとの関係は、エアイールにもよくわからない。何度か身体は重ねたものの、ヴァレンの心がどこにあるのかは、つかみどころがない。
 決して恋人とはいえず、肉体関係もある友人というのが一番近いだろうか。本当はもっと近しい関係になりたいところだが、焦って悪化させることは避けたい。そのためには、どういった距離を持てばよいのかが悩みどころである。

 自室の中を一人でうろうろとし、エアイールは何か理由になりそうなものはないかと探し続ける。もし何か理由があれば、仮に拒絶されたとしても、その『理由』を拒絶されたのだと思えるだろう。

「あぁ……何かありませんかね、何か……」

「何を探してるんだ?」

 ぶつぶつと一人、呟きを漏らしていたエアイールは、すぐ近くで聞こえた声にびくっと身をすくませる。

「……ヴァレン……どうして、ここに……?」

 今まさに考えていた相手の姿を間近に認め、エアイールは驚愕に目を見開く。

「いちおう、扉は叩いたよ。返事がないから勝手に入ったけど、忙しかった?」

 軽く首を傾げるヴァレンに、エアイールは慌てて首を左右に振った。

「い、いえ、ちょっと考え事をしていただけなので、忙しくはありません。そ・それよりも、どうかしましたか?」

「んー、別に何か用があるわけじゃないんだけど、最近、顔を見ていなかったから元気かなーと思って」

 ヴァレンの言葉を聞き、エアイールの胸を覆いつくしていた暗雲が一気に晴れ渡っていく。まさか同じような思いを抱えて会いに来てくれるなど、考えもしなかった。いっそ涙すら浮かびそうなほどの感動を覚える。
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