きみを待つ

四葉 翠花

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15.教師

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 それにしても、ずいぶんと好かれているようだ。不思議に思いながらミゼアスはエアイールの姿を眺める。
 すると、思い出した。以前、売られてきたばかりで不安になっていた子供の頭を撫で、諭したことがある。真摯にミゼアスを見つめ返して頷く姿に、この子はきっと上に行くだろうと思ったものだった。
 おそらく、そのときの子だろう。

「ところで、どうしてそんな怪我をしたのですか? ミゼアス兄さんにはきちんと理由をお話したのでしょうね」

「いや……言ってない。っていうか、言えない」

「どうして?」

「だって……」

 そうだ、そこが聞きたいのだ。もっと追及して口を割らせてくれ。ミゼアスは心の中でエアイールに声援を送っていた。
 すると頭にぽふっと軽い衝撃を感じた。何事かと振り返れば、にやにやと笑う男と視線が合った。ミゼアスが学校に通っていた頃にもいた教師だ。本で頭を軽くはたかれたらしい。

「覗き見か? 五花にまでなったのにまた学校に通いたいなんて、変わり者だなあ」

 教師は、驚いて固まるミゼアスの首をつかみ、ずるずると教室の中に引きずっていく。

「みんなー、今日は現役五花様の特別授業だぞー」

 大声で教師が叫ぶと、たちまち教室内の子供たちの視線が二人に注がれる。

「さ、五花様。お願いしますよ。ためになる話でもひとつ、ぶちかましてやってください」

 あっけにとられるミゼアスに、教師は口元を歪んだ笑みに形作りながら、お願いという名の命令を下す。
 この島において五花というのは、とても偉い。唯一、五花よりも上とされるのは、ミゼアスも姿を見たことがない領主だけだ。今となっては、ミゼアスが教師に従わなくてはならない理由など何もない。

 しかし、もはやミゼアスに逆らう気力はなかった。
 子供たちが歓声をあげてミゼアスを見る。その中に驚いて目を見開くヴァレンとエアイールの姿を認め、ミゼアスは昨日から痛めつけられっぱなしの胃がキリキリと疼くのを感じた。
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