きみを待つ

四葉 翠花

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31.責任

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「用足しに行こうとしたら、こんなものをぶつけられるとはな。そこの子供たち、いったいどういうつもりだ?」

 男は見習い二人を睨む。

「だ……だって、ヴァレンが……」

「ネヴィルが食べ物に……」

「黙っていなさい!」

 ネヴィルとヴァレンがもごもごと何か言いかけるのを、ミゼアスは一喝した。そして跪いたまま、男を見上げる。

「申し訳ございません。この子たちは見習いです。見習いの失態は、上役である僕の失態。僕が責任を取ります」

 ミゼアスは男を見つめ、毅然とした声で述べる。すると男がわずかに目を細めた。

「ほう……おまえ、五花のミゼアスか。おまえが責任を取ると?」

「はい、何でもおっしゃってください」

「それでは、私がおまえを痛めつけたいと言ったら?」

 口元を酷薄に歪め、男はねっとりとした声で言う。

「どうぞご存分に」

 躊躇することなく、ミゼアスは答える。

「ミゼアス兄さん!」

 ヴァレンが驚愕の叫びをあげる。ネヴィルも息を呑んだようだった。

「ヴァレン、黙っていなさい!」

 ミゼアスはヴァレンを叱咤し、男に向かって頭を下げる。

「お客様のお気の済むよう、この身を好きにしてください。ですので、どうかご寛恕のほどを……」

「なかなか麗しい光景だな。その健気さに免じて、おまえが一晩付き合えば許してやることにしよう。なに、本当に痛めつけることなどはしない。それなりの遊び方は心得ているつもりだ」

 意味ありげな笑みを浮かべる男。

「ありがとうございます。お客様の寛大なお心に感謝いたします。準備をいたしますので、少々お待ちいただけますか?」

 ミゼアスの言葉に男は頷き、こちらも準備があるからなと言い残して立ち去っていった。
 男の姿が見えなくなってから、ミゼアスはヴァレンに向き直る。
 ヴァレンは顔を歪ませて、泣きそうになっていた。

「ミゼアス兄さん……」

 ヴァレンは震える声で見上げてくる。
 ミゼアスは微笑んでヴァレンの頭を撫でた。

「僕のことは大丈夫。話は後で聞かせてもらうよ」

 穏やかな声でそう言うと、ミゼアスは次にネヴィルを見る。ネヴィルはびくっと身をすくませ、俯く。

「ネヴィル、きみも一時期とはいえ僕付きだったからね。この件に関しては僕が責任を取るから、きみは心配しなくてもいいよ。ただ、後で話は聞かせてもらうからね」

 静かに声をかけると、最後にガルトを見る。ガルトはミゼアスの視線を受け止めたが、その瞳は不安げに揺れていた。

「……きみには、いろいろと言いたいこと、聞きたいことがある。でも、それは後回しだ。誰か、代わりに僕の予約客の相手をするように手配してほしい。きみが空いているのなら、きみでもいい。穴を開ければ、困るのは僕だけじゃなくてこの館全体だ。それはわかるよね?」

「あ……ああ……」

 怯んだようにガルトが答える。

「じゃあ、頼むよ」

 口元に微笑みを浮かべて託すと、ミゼアスは三人に背を向ける。そして長くなるだろう一夜に向け、歩き出した。
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