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43.真犯人
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「……先ほど、娼館主と話してきました。あなたの客だという男について……」
ゆっくりとミゼアスは口を開く。
「それにしても、早いですね。あの方は、それほど間抜けだったということでしょうか」
「いえ、つけ髭やかつらなどで変装はしていたようです。でも、ヴァレンは全ての特徴を鮮明に覚えていました。さすがにほくろまでは気が回らなかったようですね。そこが決め手だったようですよ」
「そうですか。あの坊やを見くびっていたようですね」
ふう、と吐息を漏らすマリオン。
ヴァレンに砂糖菓子を渡した客は、マリオンの客だった。追及するとヴァレンに砂糖菓子を渡したことは認めたが、中身が何かは知らなかったようだ。
マリオンに頼まれたことは結局認めなかったが、その客がマリオン以外を買った記録はなかった。
まさかマリオンがと思いつつ、何かの間違いであってほしいとの期待すらこめてミゼアスは口火を切ったわけだが、マリオンはあっさりと認めた。
「……何故、こんなことを……」
「あの子は、あなたにふさわしくない」
きっぱりと言い切ると、マリオンはそっとミゼアスの頬に向かって手を伸ばす。
「美しく、気高く、賢いミゼアス。いっときは頼りなかったものの、今のあなたは立派な五花となりました。だから、もうあの子はいらないでしょう?」
静かな声で囁かれ、手がミゼアスの頬に触れる。冷たい感触に、びくりとミゼアスは身を震わせた。
「聞けば、あの子は花月琴の才が致命的にないというではありませんか。将来は二花止まりで終わる可能性が高いとか。そのような子、最年少の五花であるあなたには、ふさわしくありません」
マリオンの声は穏やかで、顔には優しげな微笑みすら浮かんでいる。
「……だからって、あんな『明けぬ夜』なんていうものを……」
厳しくはあったが、ときに優しさを見せることもあったマリオン。そのマリオンの言葉とも思えず、ミゼアスは呆然と呟く。
「あれはね、あの子にも機会をあげたのですよ。花月琴の才がないのは、情念が薄いためなのでしょう? それならば、あの薬で変わるかもしれない。……本当は、あなたも摂取することを狙っていたのですよ」
「僕?」
「信頼しているあなたに襲われれば、あの子は裏切られたと思うでしょう。いくら後から薬のせいだと思ったとしても、襲われた恐怖は消えません。心に闇ができれば、情念など勝手にわいて出てくるものです」
驚いた声を出すミゼアスに対し、滔々とマリオンは言葉を続ける。
「そこで情念を抱き、花月琴を弾きこなせるようになれば、それでよし。そうでなければ、壊れてしまえばよいと思いました。どちらでも構いません。ああ……きちんと中和剤も用意してありましたよ。あなたが壊れては、意味がありませんからね」
にっこりと笑うマリオン。その笑顔には一点の曇りもない。
「そんな……勝手なことを……」
ミゼアスは拳を握り締める。マリオンの言っていることが、信じられない。心には怒りがふつふつとわき上がり、奥歯を噛み締めた。
ゆっくりとミゼアスは口を開く。
「それにしても、早いですね。あの方は、それほど間抜けだったということでしょうか」
「いえ、つけ髭やかつらなどで変装はしていたようです。でも、ヴァレンは全ての特徴を鮮明に覚えていました。さすがにほくろまでは気が回らなかったようですね。そこが決め手だったようですよ」
「そうですか。あの坊やを見くびっていたようですね」
ふう、と吐息を漏らすマリオン。
ヴァレンに砂糖菓子を渡した客は、マリオンの客だった。追及するとヴァレンに砂糖菓子を渡したことは認めたが、中身が何かは知らなかったようだ。
マリオンに頼まれたことは結局認めなかったが、その客がマリオン以外を買った記録はなかった。
まさかマリオンがと思いつつ、何かの間違いであってほしいとの期待すらこめてミゼアスは口火を切ったわけだが、マリオンはあっさりと認めた。
「……何故、こんなことを……」
「あの子は、あなたにふさわしくない」
きっぱりと言い切ると、マリオンはそっとミゼアスの頬に向かって手を伸ばす。
「美しく、気高く、賢いミゼアス。いっときは頼りなかったものの、今のあなたは立派な五花となりました。だから、もうあの子はいらないでしょう?」
静かな声で囁かれ、手がミゼアスの頬に触れる。冷たい感触に、びくりとミゼアスは身を震わせた。
「聞けば、あの子は花月琴の才が致命的にないというではありませんか。将来は二花止まりで終わる可能性が高いとか。そのような子、最年少の五花であるあなたには、ふさわしくありません」
マリオンの声は穏やかで、顔には優しげな微笑みすら浮かんでいる。
「……だからって、あんな『明けぬ夜』なんていうものを……」
厳しくはあったが、ときに優しさを見せることもあったマリオン。そのマリオンの言葉とも思えず、ミゼアスは呆然と呟く。
「あれはね、あの子にも機会をあげたのですよ。花月琴の才がないのは、情念が薄いためなのでしょう? それならば、あの薬で変わるかもしれない。……本当は、あなたも摂取することを狙っていたのですよ」
「僕?」
「信頼しているあなたに襲われれば、あの子は裏切られたと思うでしょう。いくら後から薬のせいだと思ったとしても、襲われた恐怖は消えません。心に闇ができれば、情念など勝手にわいて出てくるものです」
驚いた声を出すミゼアスに対し、滔々とマリオンは言葉を続ける。
「そこで情念を抱き、花月琴を弾きこなせるようになれば、それでよし。そうでなければ、壊れてしまえばよいと思いました。どちらでも構いません。ああ……きちんと中和剤も用意してありましたよ。あなたが壊れては、意味がありませんからね」
にっこりと笑うマリオン。その笑顔には一点の曇りもない。
「そんな……勝手なことを……」
ミゼアスは拳を握り締める。マリオンの言っていることが、信じられない。心には怒りがふつふつとわき上がり、奥歯を噛み締めた。
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