きみを待つ

四葉 翠花

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後日談

それぞれの道~三角関係~

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「あなた、組が違うのにどうしてここにいるのですか?」

「休憩時間、違う教室に行ってはいけないという決まりはないはずだけれど?」

 教室の片隅で、睨み合う二人の姿があった。
 エアイールとネヴィルである。声を荒げることもなく、静かな様子ではあったが、周囲には誰も近づこうとしない。
 ヴァレンは壁に向かって走り、飛びついては転ぶという動作を繰り返している。

「短い休憩時間なのですから、ゆっくりと休むか、予習でもしていたらいかがです?」

「気分転換に散歩というのも、有効な休憩時間の使い方だと思うけれど?」

 どちらも引かず、二人は言い合いを続ける。
 ヴァレンは走るのをやめ、ひたすら壁をよじ登ろうとしている。

「……ヴァレンは、私と同じ組です」

「僕は、同じ館内で暮らしているよ。学校よりも長い時間……ね」

 やや均衡が崩れた。ネヴィルが得意げな顔をする。
 ヴァレンは壁から窓側へと移動し、窓を開けた。そしてゆっくりと膝を曲げてその場に身を沈め、上を向く。
 跳躍準備態勢だ。


「ヴァレン!」

 エアイールとネヴィルは同時に叫び、ヴァレンに飛びかかる。今まさに飛び立とうとしていたヴァレンは二人に邪魔をされ、その場に尻餅をつく。

「ぎゃん!」

 鋭い悲鳴をあげ、ヴァレンは涙目で二人を見る。

「何をやっているのですか!」

「窓から飛び出そうとするなんて、危ないよ!」

 エアイールとネヴィルはヴァレンを叱りつける。ヴァレンはむーと唸り声をあげて、唇を尖らせた。

「だって、木の上に鳥がいるんだもの。捕まえたい」

 そう言って、ヴァレンは窓の外を指差す。窓のすぐ外に生えている木の上には、確かに鳥が止まっていた。

「……木に飛びつこうとするなんて、危ないでしょう。また怪我でもしたら、ミゼアス兄さんが心配するからやめてください」

「……窓から飛び出すのはやめようよ。せめて、放課後に外でやろうよ。ほら、もうすぐ休憩時間も終わるし」

 エアイールとネヴィルはぐったりとしながら注意する。また、ヴァレンの奇行が始まったのだ。

「えー……むう……」

 不満げな声は漏らしながらも、しぶしぶヴァレンは納得する。
 エアイールとネヴィルは顔を見合わせた。お互いに無言のままでも、何を言いたいかがはっきりとわかる。

「……頑張りましょう」

「……うん、頑張ろう」

 乾いた笑いを漏らしながら、二人は誓い合う。
 その横では、二人の気など知らずにヴァレンが側転を繰り返していた。
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