きみを待つ

四葉 翠花

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後日談

それぞれの道~そのとき~

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 ミゼアスは長らく白花の第一位として君臨していた。
 もう今年で二十一歳になる。十八歳程度が賞味期限といわれる白花にあっては、異例の年齢だ。
 しかし十五歳のときに患った大病の後遺症により、成長が止まったミゼアスは、未だに美しい少年の姿を留めていた。
 下手をすれば十三歳程度に見られることもある。

 あの大病の折、死の淵で幼馴染に出会えたと思った。いつか会えるから待っていてくれと言われたような気がして、あれから六年、ずっと信じて待ち続けている。
 もしや、あれはただの夢、思い込みだったのではという思いが何度もわきあがり、そのたびに打ち消してきた。
 今日が駄目ならば明日、明日が駄目ならばその次。いつか、絶対に会えるはずだ、と。

「ミゼアス兄さん、ウインシェルド侯爵からお手紙ですよ」

 ヴァレンが手紙を持ってくる。
 あの頃ミゼアス付きの子供だったヴァレンは、もう十六歳だ。見習い一の問題児だった彼は、今や立派に四花の白花となっている。
 もうとっくにミゼアスの身長を抜かし、年齢相応に成長していくヴァレン。胸にわずかな疼きを感じながら、ミゼアスは手紙を受け取った。

「……もう四花のきみが、どうしてこんな使い走りをするんだろうね」

「まあまあ、いいじゃないですか。ミゼアス兄さんに会いたかったんですよ」

 ミゼアスが呆れた声を漏らすと、ヴァレンはあっけらかんと笑う。

「……同じ館内にいるんだし、しょっちゅう会っているじゃないか」

 苦笑しながらミゼアスは手紙の封を切る。ヴァレンも昔よりは大分落ち着いたが、やはり本質は変わらない。
 むしろ突飛な行動の質は格段に向上してしまった。回数が減った分、質で勝負といった有様だ。

「……ふうん」

 手紙を読みながら、ミゼアスはつまらなさそうな声を漏らした。

「どうしたんですか?」

「監視対象者が島に来るんだって。まあ、僕には関係ないみたいだけれど。二花あたりをつけるつもりだって書いてある。いちおうのお知らせだね」

「はあ……そうたいしたことはなさそうですね」

「そうだね。……え?」

 相槌を打ちながら、ミゼアスは手紙の一点に目が釘付けになる。
 思わず、目を疑った。信じられない。見開かれた目から、涙が一筋、零れ落ちる。

「ミゼアス兄さん……?」

 訝しげなヴァレンの声がどこか遠くから聞こえてくるようだった。
 単なる同名の別人かもしれない。そう思って無理やり心を落ち着かせようとする。しかし、ついにそのときが来たのだと告げる声がどこかから聞こえ、胸に響き渡る。
 そうだ、やっと夢の約束が果たされるのだ。

 ――監視対象者、アデルジェス、十九歳。

 ミゼアスは涙でぼやける幼馴染の名を、ずっと眺めていた。
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