ヴァレン兄さん、ねじが余ってます 2

四葉 翠花

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09.五花のエアイール

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「夕月花の件では、お世話になったと聞いております。五花であり、現在は白花の第一位でもあるわたくしからもお礼を申し上げるべきでしょう」

 呆れ返ったヴァレンの視線をものともせず、エアイールはにこやかに微笑むと、ロシュのもとまでゆったりと歩いていく。

「わたくしはエアイールと申します。夕月花の件では、この島に降りかかるかもしれない災難をあなたのおかげで回避できたとお伺いしました。お礼を申し上げます」

「い、いや、俺はそんなにたいしたことは……って、五花のエアイール? え? ええっ?」

「ふふ……可愛らしい方ですね」

 すっかり混乱した様子のロシュに顔を近づけ、エアイールは蠱惑的な笑みを浮かべる。傍から見れば獲物を捕らえようとする姿にしか見えないが、ロシュは顔を真っ赤にして呆然と固まっていた。

「おい、エアイール。ロシュさんが困っているだろ」

 ヴァレンは捕食者をロシュから引き剥がす。

「さ、ご挨拶も終わったなら早く帰れよ。おまえだって、仕事があるんだろ?」

「今日は空けてありますよ。あなたにとって、そして島にとっての恩人でもある方がいらっしゃるのですから、おもてなししなくてはと思いましてね」

 追い払おうとするヴァレンに対し、エアイールは平然と微笑む。

「いや……これ、俺の宴席だから。おまえはもう帰ったら?」

「そうはまいりません。いくらあなた個人の宴席といえども、島の恩人をお招きしているのですからね。第一位であるわたくしも、おもてなしするのが当然でしょう。五花の特権を行使してでも、受け入れていただきますよ」

「……こんなことで、五花特権使うなよ……」

 そっと額に手をやり、ヴァレンは大きなため息を漏らす。
 理由はよくわからないが、どうあってもエアイールはこの宴席にはべりたいようだ。通常の仕事であればまだしも、個人的な宴席に五花特権まで使われては、受け入れざるを得ない。

「背景として、弾き手を務めますよ。あなたの邪魔はいたしません。どうぞわたくしのことは、演奏する装置だとでも思ってくだされば結構です」

 エアイールはいちおうの譲歩らしきものを見せる。これ以上邪魔をしないというのならば仕方がないかと、ヴァレンは深く息を吐いて諦めた。

「……ロシュさん、悪いんだけれど、こいつも宴席に置いてやって。すみっこのほうに転がしておけばいいから」
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