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10.三百年の孤独2
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二人は魔物と遭遇することもなく、無事に村までたどりつくことができた。
晴人は巡礼で旅をしており、聖神殿から戻ってきたところというのが、セイから教えられた設定だ。実際に村の入り口で巡礼だと言うと、あっさりと中に通された。
まずは村の中央にあるという、一軒だけの宿屋を目指す。
「……男ばっかり」
ぼそりと晴人は小さく漏らした。
ところどころで袋をかつぎあげるなどして働いている大人の姿や、走り回る子供たちの姿を見かける。のどかで平和そうな村だ。しかし、大人も子供も男の姿しか見当たらない。
「今は魔素が濃くなってきているからね。もともと女が生まれにくい傾向にはあるんだけれど、魔素が濃くなるとさらに男が生まれやすくなるといわれている」
耳打ちするようにセイが解説してくれる。
「じゃあ、女そのものは存在するんだね?」
どうも疑り深くなっている。この世界には男しか存在しないのではと、うすうす恐怖を覚えていたところだ。
「うん、存在するよ。でも今の時期なら、家の奥で大切に匿われていることが多いだろうね。女は魔素を取り込みすぎても、魔物化することはない。そのまま死んじゃうんだ。魔物化するのとあっさり死ぬのと、どちらがよいのかはわかりかねるけれどね」
「うーん……魔素を取り込みすぎるとよくないのはわかったけれど、浄化する方法っていうのはないの? ……俺以外で」
迷わずセイが晴人を指差してきたので、晴人はあわてて首を横に振る。
「魔素を浄化する素質を持った人間がいる。やり方はきみと一緒で、性交によって自らの身に魔素を取り込んで中和させるんだ。彼らは神殿に集められ、聖娼として人々に奉仕している」
「俺と同じだったら、その人たちも強くなって魔素を封じに行けるんじゃないの?」
「いや、彼らができるのは中和することだけで、自らの力として取り込むことはできないんだ。だから、きみのほうがずっと格上。自信を持っていい」
「……嬉しくない」
ぼそぼそとしたやり取りを続けながら、晴人は宿に到着する。
巡礼の旅をしている者で宿を取りたいと言うと、受付の少年はあっさりと了承した。宿代は前払いで、聖神殿を出るときにセイから渡された、この世界の通貨で支払う。
「巡礼の方なんて久しぶりです。どうぞ、ゆっくりとおくつろぎくださいね」
受付の少年はにっこりと笑い、晴人を丁寧に案内する。巡礼というのはそれなりに好ましい存在のようだ。
「あー、腹へったー」
個室に通されて一人になると、晴人の口から意識せずに言葉がもれる。もうすっかり癖になってしまっている独り言だ。
「ずっと歩いてきたからね。もうすぐ夕食だし、少しの辛抱だよ」
いつもなら返ってくるはずのない返事が聞こえてくる。晴人ははっとしたように一瞬、動きを止め、ややあってくすりと笑う。
「どうしたんだい?」
セイが不思議そうに首を傾げる。姿がぼんやりとしているところをのぞけば、話しかければ答えてくれる普通の人間とかわらない。
晴人は巡礼で旅をしており、聖神殿から戻ってきたところというのが、セイから教えられた設定だ。実際に村の入り口で巡礼だと言うと、あっさりと中に通された。
まずは村の中央にあるという、一軒だけの宿屋を目指す。
「……男ばっかり」
ぼそりと晴人は小さく漏らした。
ところどころで袋をかつぎあげるなどして働いている大人の姿や、走り回る子供たちの姿を見かける。のどかで平和そうな村だ。しかし、大人も子供も男の姿しか見当たらない。
「今は魔素が濃くなってきているからね。もともと女が生まれにくい傾向にはあるんだけれど、魔素が濃くなるとさらに男が生まれやすくなるといわれている」
耳打ちするようにセイが解説してくれる。
「じゃあ、女そのものは存在するんだね?」
どうも疑り深くなっている。この世界には男しか存在しないのではと、うすうす恐怖を覚えていたところだ。
「うん、存在するよ。でも今の時期なら、家の奥で大切に匿われていることが多いだろうね。女は魔素を取り込みすぎても、魔物化することはない。そのまま死んじゃうんだ。魔物化するのとあっさり死ぬのと、どちらがよいのかはわかりかねるけれどね」
「うーん……魔素を取り込みすぎるとよくないのはわかったけれど、浄化する方法っていうのはないの? ……俺以外で」
迷わずセイが晴人を指差してきたので、晴人はあわてて首を横に振る。
「魔素を浄化する素質を持った人間がいる。やり方はきみと一緒で、性交によって自らの身に魔素を取り込んで中和させるんだ。彼らは神殿に集められ、聖娼として人々に奉仕している」
「俺と同じだったら、その人たちも強くなって魔素を封じに行けるんじゃないの?」
「いや、彼らができるのは中和することだけで、自らの力として取り込むことはできないんだ。だから、きみのほうがずっと格上。自信を持っていい」
「……嬉しくない」
ぼそぼそとしたやり取りを続けながら、晴人は宿に到着する。
巡礼の旅をしている者で宿を取りたいと言うと、受付の少年はあっさりと了承した。宿代は前払いで、聖神殿を出るときにセイから渡された、この世界の通貨で支払う。
「巡礼の方なんて久しぶりです。どうぞ、ゆっくりとおくつろぎくださいね」
受付の少年はにっこりと笑い、晴人を丁寧に案内する。巡礼というのはそれなりに好ましい存在のようだ。
「あー、腹へったー」
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「ずっと歩いてきたからね。もうすぐ夕食だし、少しの辛抱だよ」
いつもなら返ってくるはずのない返事が聞こえてくる。晴人ははっとしたように一瞬、動きを止め、ややあってくすりと笑う。
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