これでも生きていけると思います。

澤埜優

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心機一転

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某日。僕は久しぶりに靴を履き、街へと足を運んだ。
近頃全く外に出ておらず、役8ヶ月ぶりだと僕の脳は記憶している。
少し体力が衰えた気もするが、もともとしっかりとした体をしていたので以前とはあまり変わりなかった。
昼間の眩しくてり続ける太陽に苛立つサラリーマン、OL達よろしく僕も少し目を細めながら目的の場所へと向かった。
そういえばなぜ今僕が外に出ていて、何処に向かおうとしているか言ってなかったね。
実は先日『アルラウネ』で進展があったのだ。

『種持の集い』

それは『アルラウネ』を利用している高校生向けのオフ会である。
つまり僕と同じような心境を持った、見ず知らずの同級生たちと顔を合わせ、思いを語り合ったり、楽に死ねる方法を模索する集会らしい。
踏ん切りのつかない僕にはもってこいなこの機会。
逃すわけにはいかぬと参加を決意したのだ。
今回のオフ会の参加者は4人。
僕とオフ会の主さん。あと女の子ふたりらしい。
主といっても僕と同級生、そこまで改まる必要もないであろう。
女の子二人も例外ではない。
そして家を出てから歩くこと15分程度。
目的の場所へとたどり着いた。
僕が普段使用しているフリーメールのBOXに送信されてきた住所を携帯に打ち込み地図に沿って歩いてきただけなのだが・・・・。
これはまずい・・・・。
なぜなら、たどり着いた僕の眼前にあるのはだったから。
「うそやん・・・」
ついエセ関西弁が漏れ出してしまった。
いや、だって僕こんな店に来るのは初めてだし、それに今から参加するオフ会だって初めてだ。
それなのにこんな・・・・こんな初めてだらけで落ち着いて参加なんてできるはずがない。
しかしこれでも僕は今までにいくつものこんなんを一人で突き抜けてきた完璧人間。
こんなところで立ち止まるわけには行かない。
なんとしてでもこのピンク色の店で同じ願望を持つ人たちとのオフ会に参加し、最終的に死ぬためになんとしてもこの重たい足を動かせねば・・・・!
すると、店の前で立ち往生した僕に気付いたメイドさんの一人がわざわざ店の外に出てきて僕に話しかけてきた。
「こんにちはご主人様!どうかなされましたか?」
ご、ご主人様だと?!この僕をそんな呼び方で・・・・。
この子・・・・僕と結婚したいのか?!
「ひっ、ひぇっ・・・、えっ、いや、べつに・・・・。その。待ち合わせで!」
「ああ、種持の方ですね。みなさま中でお待ちですよ。ご主人様もどうぞお入りください!」
噛み噛みでいまいち伝わらなかっただろうに最後の待ち合わせで全てを察してくれたようだ。
今日待ち合わせの予定のグループはうちだけなのか?
とおもいつつ、メイドさんに案内されるがまま店内へと足を踏み入れる。
「「おかえりなさいませ!ご主人様!」」
うぉお・・・・・。メイド喫茶・・・・すげぇ・・・・。
何なんだ、この優越感。
それにこの店で働いている女の子ひとりひとりのレベルも高い。
これ、はまりそうだな。
「それではご主人様、VIPルームへお通ししますね」
「えっ、そんな。僕そんなにお金持ってきてないですよ?!」
「あ、いえ。既にお代金は頂いておりますので!さ、どうぞこちらへお越し下さい」
「は、はぁ・・・」
なんだろう、既に主さんが払ってくれてたのかな?
そんな疑問を頭の隅に残しつつ僕は案内されるがままVIPルームへと進んだ。
「私がご案内できるのはここまでです。ここから先はご主人さまお一人でお進みください。
 次回来店時に、私の事、指名してくださってもいいんですよ?」
と、メイドさんスマイルを振りまいてから先来た道を一人で帰っていく。
いやぁ・・・・絶対指名する。
と、それよりそろそろ部屋に入らないと時間に遅れるな。
僕の目の前には木製の扉に金の装飾が施してある大きな扉があった。
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