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永田の初めて
しおりを挟むああ…出社するのが憂鬱だ。
結局セックスできなかったし、美和子はホテルに連れ込んだことを怒っているし、θポリスはログインできなくなり、運営にメールで問い合わせても何も返事は返ってこない。
鬱だ…俺はいったい何のために生きているのだ……
オフィスの扉を開くと、美和子の姿が目に入った。彼女は明るく、みんなとコミュニケーションをとっているように見える。俺はなるべく気づかれないように小さく挨拶をして中に入った。
仕事が開始して間もなく、乳輪の辺りに震えるような感覚がし始めた。気持ち悪くて思わず両手で手ブラするみたいに胸を押さえつけた。まるでローターをあてがわれているかのような感覚なのに、そこには何も指で感覚できる物体は確認できなかった。
ローターは乳輪を何周かすると、段々とその円周を小さくしていった。ゾクゾクとくすぐったい感覚に身体が震える。ローターはついに最終地点へと到達した。突き刺すようなくすぐったさに、背筋が跳ね上がる。
(なんっだ!これは!?)
ローターの刺激はまた乳輪の周りの刺激に戻る。俺は机に突っ伏してその刺激に耐える。円周が段々とまた中心に向かって迫ってくる。
(だめ!やめて!)
俺はまた背筋を跳ね上げねばならなくなった。
何度かこの動きを繰り返した後に、ローターは下半身へとゆっくりと移動を始めた。
(え!?なに!?そんなのありえないんだけど!)
何と、俺についているハズのない膣口への刺激が始まった。
俺は思わず女の子みたいな声を小さく上げてしまった。気持ち良さで感覚がバグってくる。
そして、そのローターの動きは上方へとゆっくり移動を始めた。
(まさか!?)
そこには敏感なクリトリスが待ち構えていた。
(ダメ!)
射精してもおかしくない刺激の強さだった。でも、射精させてもらえない!?
ローターの動きは止まらない。今度は膣口の中へと侵入を始めた。ローターがドコを目指しているのかは何となくわかる。あそこしかない……
そしてやはりローターはGスポットへと張り付いた。「ぐぬぬ…」と悶え声が漏れる。もう射精しまくっているハズだった。しかし、物質としての精子が発射されない。唐突に表れたもう一つのローターがクリトリスに張り付いた「あぁ!」。その刺激はまるで。
『紫式部が初めて茄子でオナニーをしたときのような感覚』だった。
(馬鹿な!女でもないこの俺が、いや、女であったとしても、こんな平安時代の人の、実際やったかどうか分からないような事の気持ちなんかが分かるハズがない!でもなんで………なんで分かっちゃうのぉ!?)
込みあがってくる快なのか苦痛なのか分からない強い刺激に、俺は耐えられなくなり、射精すると同時に思わず叫び声を上げた。
「いとをかし!」
自分の”shout”にかき消され、何と叫んだのか分からなかった。叫び声だからきっと「うあー!」とか「はうー!」とか、そんな感じの情けない声なのは確かだ。いくら窓際の目立たない席だからと言って、今の声は目立ったはずだ。きっとみんなに聞かれてしまっただろう。誰かが様子を見に来てもをかしくない………
早速近くに誰かが寄ってきた。俺は意識が朦朧としていて、それが誰なのかしばらく分からなかった。
よく見ると、それは美和子だった。彼女は声を我慢して腹を抱えて笑っていた。
「おもしろーい、今の何?」
(人が苦しんでいるというのに、この女は何がそんなに面白いというのだ……)
美和子は不適な笑みを浮かべて続けた。
「まるで『紫式部が初めて茄子でオナニーをしたとき』みたいでしたけど、大丈夫ですか?」
思い当たる節が複数あったが、俺はまだ声が出せないでいた。”今のコレ”の犯人はコイツで間違いない。こんな紫式部の具体的な感覚を言い当てられるのは、それを発信した本人ぐらいのものだ。そして、これは間違いなくθポリスを使ってやってきている。もしかしたら、俺がアプリをインストールできなくなったのも、コイツがなんか絡んでのことなのかも知れない。あのホテルで俺が寝ている間にコイツはきっと……
美和子がスマホの画面を俺に見せながら笑顔の表情で言った。
「これ、θポリスっていう小説投稿アプリなの。今、初めて投稿してみて、色々設定とか間違えちゃったかもしれないけど、結構面白いからお勧めよ。あ、永田さんはもうログインできないんだっけ?」
なんで俺がログインできなくなったことを知っているのだ。やっぱり裏で何かやりやがったな…
俺は「あぅ……あぅぅ………」みたいな声を出すのがやっとだった。多分眼球が飛び出るんじゃないかと言うぐらい瞼が開いていたと思う。
美和子は楽しそうに言った。
「次はね、『クレオパトラが奥まで挿入されたアナルパールを一気に引き抜かれて絶頂して潮を噴き上げる話』投稿するところなの」
俺はようやく口が動かせるようになったので、美和子に懇願するように言った。
「…お、おねがいしまf……美和子さん…おれ、一回出すとも…もう……ダメなんだs………」
「え!?一回出すと駄目!?じゃあ、連発なんて初めての経験じゃん!ラッキーじゃん!」
そこに助け舟が現れた。男の先輩社員が、俺の恥ずかしい声を聞いて駆けつけてきたのだ。
「大丈夫か永田、ちょっと医務室に行くか?」
俺は大きく首を上下に振ってうなずいて見せた。
(ようやく助かった……)
先輩に肩を抱えられるようにして連れられ、オフィスを出た瞬間、乳輪の周辺に、存在しないハズのローターの刺激を感じた。
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