◯と△

理不尽なしわ寄せ

小人国の郵便局ではカブトムシに荷物を運ばせていた。
角に紐を括り付けて、ズルズルと引きずって運ぶのである

ある時、七百五十グラムの荷物を百個運ぶ依頼が新入社員の小人の元に来た。これは大きな依頼である。
会社で飼っているカブトムシは、百十五匹。一回で行ければかなり儲け物だった。
しかし、一匹のカブトムシに運ばせていい荷物の重さは五百グラムまでと決まっていた。七百五十グラムの荷物を運ぶためには、この荷物を運びやすく分割するか、一つの荷物を二匹で運ぶかするしか無い。これでは二回に分けて運ぶことになり、旨味もその分減ってしまう。
どうにかならないものかと考えた新入社員は、一番力のある大きなカブトムシが七百五十グラムの荷物を軽々運んでいる様子を動画に撮影して、それを根拠としてカブトムシに運ばせてもいい重さを五百グラムから七百五十グラムに引き上げる提案を上司に持ちかけた。カブトムシからすれば迷惑な話である。
しかし、この提案は却下された。
それでも諦めきれない新入社員は、強行突破でそのまま一回で荷物を全て運んでしまった。
カブトムシの多くはヒーヒー言いながら荷物を運ぶハメになってしまったが、なんとか任務を遂行することができた。
このまま数字を計上してしまうと、この不正がバレてしまうので、新入社員は自身の今月の営業成績の数字に今回の利益を上手く散りばめ、不正の隠蔽を図った。更にこの事で彼の成績は全体的に底上げされる結果となる。
これに味を占めた新入社員は、度々この不正を働くようになった。自分の評価を上げたい一心で。

結果、約半数のカブトムシは通常より早死にしてしまった。想定よりも早くカブトムシを補充しなければならなくなり、会社の利益は全然上がらなかった。反面、不正を行った新入社員の評価はどんどん上がっていった。