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エピローグ

不幸の量産

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今の所のサンプルを照らし合わせてみると、どうやら私の思った通り、地球人も我々と同じように、生活の中で四つの『D』、『S』、『E』、『O』を活用しているらしい傾向が見られた(二人目の女性のレスリングの練習には違和感有り)。
しかし、地球人のそれは、これといった外部からの支援や管理もされていないことから、自分自身の判断でその全てを管理していく必要があるようだ。
そして、やはり脳内で分泌している物質が何なのかを見ることができないことによる弊害が顕著に現れているようにも窺えた。

見えないから一番刺激の強いものを選択してしまう、一番手っ取り早いものを選択してしまう、周りが推奨するものを選択してしまう。それが一番危険な『D』であるというのが致命的である。
まるでこの『D』の分泌のみで全ての問題を解決することを都合よく思っている連中がいて、地球上のホモサピエンス全てがそれに振り回されているかのような構図が頭に浮かんできたぐらいだ。
初めにも説明したが、これらの物質の摂取をするにはバランスに気を配る必要がある。とくに『D』の過剰摂取は一番最悪で、中毒に陥ると取り返しのつかない状況に陥ってしまう。
この地球上ではその一番最悪の状況が何でも無いことのように日常的に展開されている。

ある種が急速に発展していくためには『D』は欠かせない。『D』が多ければ多いほどそのスピードは速い。だからと言って、副作用も考慮せずに『D』一筋で突っ走るのは余りにも無謀ではないか。
それによって本当の幸せというものを知らないまま、ポンコツに仕立て上げられ、一生を終えなければならない者が存在することを、まるで無視している。
そんな犠牲を払っておいて、その先にそれ相応の価値が保証されているわけでもない。むしろどんどん不幸を量産していっているように、私には見えた。

まあ、この程度のサンプル量で私の星の『D』と、地球人が脳内で分泌させる『D』とを全く同じ物であると判断して語るのは早計ではあるか…
仮に全く同じ物質だったとしても、我々と地球人との体質の違い、住んでいる環境の違い、辿ってきた歴史、文化の違い等、様々な違いを考慮して、総合的に判断していく必要があるだろう。

だが、夏休みの自由研究の提出物を仕上げる目的なら、この程度のサンプル量で許されるだろう。多分…
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