霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ

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野花怪異談集全100話

14話「ガーン田♪」

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「1」     
     ーー「野花市立高校1年B組教室内」ーー

「おはよう」
「おはよー」
 朝の教室内では生徒たちの会話が飛び交いにぎやかである。
「おはようございます」
 そこに教室の引き戸を開ける美少女、私八木楓であります。
 生徒たちも私に気づき挨拶する。
 私は以前の黒髪おさげは辞めて髪を下ろしてセミロングしている。ただ家柄のしきたりである白粉はやめてはない。
 私の家柄のしきたりは学校中全て知れ渡ってるため目にかける者はいない。
 と、そこに1人で教壇前の机で座りタブレットと格闘してつぶつぶと呟いてる茶髪の女子生徒は、
「おはよう桜さん」
「つぶつぶ…あ!八木さんおは~……つぶつぶ」
 彼女の名は永木桜。極度の乙女ゲームマニアであり、期間限定レア物やグッズを見かけると即断で買い込み、いつも金欠で嘆いてる。
 一応永木財閥の会長の孫娘である彼女は会長が今度の期末テストでいい点数取れたらお小遣いをあげると言われて彼女も必死である。
「桜さん。何をしてるのですか?」
「見てわからない?今日は期末テスト初日だよ?いい点数を取るため、復習してるの」
 それを聞いた私は目を丸くして少し悩みましたが教えてあげました。
「桜さん。期末テストは今日じゃなくて来週ですよ?」
 と私が説明した同時に桜は逆さまにしたタブレットを向かって呟くのやめた。
 そして桜は席をゆっくりと立ち上がり、何やら連れの合唱部の3人組を呼んで深呼吸してリズムを整えるそこからーはい!
「いち」
「にーの」
「さん、ハイ!」
「「ガーン!!」」
 桜はオーバーリアクションで頭を抱えて泣き叫んだ。
 そして合唱部3人組の名前はいちが左野一果、にーのは真中ニノ、さん、ハイは右山高子だ。
「やれやれ。私も何度か言ったんだけどね」
「夢見さん」
 そこにふいと現れたポニーテール少女は夢見亜華葉あげは。彼女の夢は誰よりも速くとべること。彼女の人差し指は災いのもとになるため、八木家の監視対象になっている。そして私と亜華葉は学年一争うライバルでもある。
「期末テスト一番は私だからね!目指す最初の一歩は学年一よ!」
 ビシ!と早速彼女の突き出した人差し指から何やら白いもやの渦のようなものが開き一気に掃除機の暴音を出しながら吸い込まれていく。そして周囲にいる生徒達は正気を失い何か取り憑かれたように彼女の指からゆっくりと釣られて吸い込まれるように導かれる。
「ひいい」
「……ッ!!」
 私と桜は亜華葉の指の吸引力をまともに受けながらも必死に耐えていた。
 途中から手鞠もやってきたが鈍足の亀のようにな!
「ムシ」
 とある男子生徒の発した言葉に反応して亜華葉の人差し指から出る白いもやの渦が一瞬で消え去った。
「????」
 取り憑かれた生徒たちも我に返り事態も収束した。
 この場を収めた彼の名は鳥河大軌。
 数少ない"ムシ"の使い手見習い無視家である。
 無視家とは、あらゆる現象や人々の脅威などから無視する。そして誰も感謝などからされずに無視される人達のことである。
 大軌は八木家から亜華葉の監視対象を任せているがごくまれに本人は無視されている。
 今日もスクワットしてムシ肉体を鍛えて女子生徒にモテようと奮闘するがガン中なくほぼガン無視されてるのは本人も承知済みである。
「あれ?みんなどうしたの?」
「……」
 亜華葉は自身が災いの人差し指が引き起こしてることに自覚がない。今日も無事学校の平和が守られている。
「さっきからなにつぶつぶやいてるの?楓さん?」
「……」
 そのショートボブヘアの彼女は黒木あかねである。彼女自身はかなりの凄腕の霊能者だがお金好きためにタダ働きは嫌いである。
「余計なお世話よ!丸聞こえなんだけど?」
 いかんいかん。思ったことつい癖で独り言つぶやいていたようだな。
 桜は亜華葉の人差し指に凄くおびえていた。桜も私と同じ体質である。体質とは霊感を持った人達である。かくいう私もどれだけ苦労したか、この体質を持つことで蟲や幽霊を頻繁に視えてしまうのは乙女の悩みだー。そう、虫や蟲を駆除するのに殺虫噴射器は欠かせない。しかし八木家にはそんなもん余裕ない!贅沢は敵だーーー!!!!!!!!
「おーい。聞いてますか?楓さん」
     ハッ!私としたことがつい自分の世界に入りこんでしまった。あかねの呼びかけがなければ元の世界に戻れなかった。
     そこで一旦気を取り直して再開。
「なんでもないわ。それと桜さん。あなたにとってガーンするサプライズ怪異談あるわよ」
「なに?なに?」とサプライズと聞いて桜は身を乗りだす。
 私はアニメの未来型動物ロボットみたく制服の八木ポケットからいくつか取り出そうとする。
「ガーン田♪」と定番のアニメ声を真似てポケットから達筆の字で書かれた紙を取り出す。
 この後、私は深呼吸して口を紡ぎ怪異談を語りだす。周囲にいた生徒達は私の怪異談に耳を傾ける。桜は忘れずにボイスレコーダーを設置して、私の怪異談を録音する。亜華葉は1番注目するお手本として私の語る怪異談をメモして参考にした。手鞠を使って他のクラスも宣伝売り子も忘れない。そしてさらなるお布施と八木家に売られてるヤギキャンディを配るの忘れない。ただし、大軌とあかねは非協力的なのでムシしてる。さてそこで話が大きくなったのか、この後梨花先生に生活指導言い渡されてそれを知ったお母様から罰としてお布施とヤギキャンディと私の秘蔵ヤギプリンを全て取り上げられてしまった。その時私はガーン!とショックしたのは言うまでもない。どうやらあかねがチクッたようなのでお返しに学校内で霊視バイトしてることをチクると彼女もガーンショックをしたことに言うまでもない。


「2」

 ーー「石山県岩田市岩野村」ーー

 よう!みんな。
 オレ様の名は岩田岩太。
 略してガン田だ。
 ここら辺は何もない田んぼと古民家しかないのどかな村だがオレ様に向かって因縁をつけてガンするやつらがいる。
 そんな奴らにはガン飛ばしをお返しする。
「えっほ!えっほ!」
 おっ!ランニングしてる空手の主将らしき第一村人発見!
 エライぜ!全く。早速だがオレ様直々の激励の挨拶をしようと思うぜ!
「よう!はりきってるな。がんばれよ」
「チッ」
 と、そいつはオレ様に向かって舌打ちしてガン無視しやがったぜ!にゃろ~。
「待ちな!」
 オレ様はそいつの右肩をつかんだ。オレ様の周囲には陰ながら潜んで隠れていたオレ様の子分クラシックガン田団が楽器を持ち演奏の準備に入った。早速一発ぶちかますぜ。
 さぁ。お茶の間や仕事の合間などにひと息ついてる読者のみなさまもご一緒に!せ~の!
 ガーン♪
 それを聞いたそいつは頭を抱えた。
 青ざめたそいつは正座したままリヤカーの荷台に積まれて広がるど真ん中の田んぼ車道を走りどこかへ連れてかれた。

 ーー「次の日」ーー

 さぁ、今日もガンガン行こうぜ♪
 おっ?前方に髪型がヘッドロックで服装がアロハシャツでダボつきのジーンズでチャラチャラして決まってる村人発見!
「プッ!ククク」
 おい!
 こいつはオレ様の事を見た途端笑いながら素通りして笑ったよな?しかもオレ様が気にしてる円形脱毛症のハゲてる箇所を!
 許せね~!!
「待ちな!」
 オレ様はこいつの右肩をつかんだ。
 こいつもガンつけ対象だ。
 オレ様はいつものようにあいつらを呼んでアレをかますぜ!
 さあ、読者のみなさまもおまたせしたな。
 じゃあいくぞ!せーの!
 ガーン♪
 聞いたこいつは頭を抱えた。
 青ざめたこいつは正座したままリヤカーの荷台に積まれて広がるど真ん中の田んぼ車道を走りどこかへ連れてかれる時、オレ様は「もう2度とガンつけんなよ!」とこいつに向かって叫んだ。

 ーー「次の次の日」ーー

 今日も絶好調のガン田だ!
 む、そこにスポーツ水着を着込んでる妙齢の女性を発見!?
 いやいや、なんでもおかしいだろ?
 先程の奴よりも酷いぞ?
 うん。こいつは無視しよう。
 早速、俺は無視して通過すると、、、

「待ちなさい!」

 と、彼女に腕を掴まれてしまった。
 そこから、ガン田団が何故か俺の周囲に集う。
 そして、例のアレをかますみたいなので仕方なく。
 ガーン♪
「きゃああああきたわーー!!」
 と、まぁ彼女自身はリニヤカーに乗り込みそのまま田んぼ車道に走り去る。このパターンは新しいな。

 ーー1ヶ月後ーー

 クックック。もうオレ様に歯向かうやつらもいなくオレ様を見るなり避けるようにやつらは逃げていた。
 いて!?
 と、酔っ払いの中年サラリーマンが謝らず素通りしやがった。
「おい!」
 オレ様が右肩を掴むとあいつは振り向きオレ様を見るなりとても怯えて逃げるよう走り去った。
「なんなんだ?全く」
 と、最近オレ様からガンつけするどころか、みんなはさっきのあいつみたく怯えて逃げていく。子分のガン田団も最近見かけない。
 一体どうしたんだ?
 少しやり過ぎたかな?
 と、オレ様の左肩をポンポンと叩いてくる。
 オレ様はふと振り向くと肌がホワイトで花柄の華やかな和服を着た少女が立っていた。
「これを自分で見つめ直しなさい」
 と少女がこれを手渡される。
 オレ様はこれを自分で見つめる。
「…………!?」
 オレ様は思わず、
「ガーン!!」
 これを落としてあまりの衝撃に頭を抱えてしまう。

 彼女から手渡された手鏡には、今までガンした奴らの小さな顔がオレ様の顔にいたるところに張り付いてた。

 青ざめた呆然とするオレ様は正座したままリヤカーの荷台に積まれて広がるど真ん中の田んぼ車道を走りどこかへ連れてかれた。


「3」

「間に合ったですわ!」
 突如、教室の戸が開く。
 そこに息切れする金髪の女子生徒星田星夏。
 この怪異談の話でキャラクター紹介のためわざわざ急いで駆けつけてきた。しかしそろそろこのストーリーの終盤が迫っているので紹介スペースがないことを告げると、「ガーン!」と星夏はショックを受ける。
 と、そこに担任である梅田先生もやってくる。
「お前ら席につけ、朝礼やるぞ」
 あだ名がムッシーのこと梅田虫男はこの小説のメインキャラクターの1人で次回の怪異談作話に登場する予定を知った星夏は、「ガーン!!」と2度目のショックを受けて次こそ出番が来てメインキャラクターに昇格が来るようお祈りする。
「あらあら、星夏さんはのつもりですか?」
 私達はクスクスと笑った途端、朝の学校チャイムが鳴った。

 ーー????ーー

 正座した岩田を乗せて引いたリヤカーはある場所の建物に着くと、リヤカーを引く男性はそこで停車してその建物のシャッターを開く。
 そこではガーンした人達が保管する場所。
 そして岩田も正座したままそこに置かれる。
 中には腐乱してハエがたかったり、ミイラ化や崩れ去った者もいるが彼は気にしなかった。
 仕事を済ませた彼はシャッターを閉めてリヤカーを引いてどこかへ去っていた。

 ガーン田♪   完(ガン)
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