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蜂黒須怪異談∞X∞
0084話「心霊オークションSNS」
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深夜、スマホを眺めていた私は、いつものネットオークションサイトに新しいカテゴリを見つけた。
「心霊オークションSNS」──
その名前は、見たこともない不思議なSNS風オークションプラットフォームを示していた。
説明文にはこうある。
「あなたの怨念・後悔・未練を出品できます。落札者は魂の代償を支払います。登録は自己責任で」
初めはジョークだと思った。
しかしユーザーのレビュー欄には、意味深な書き込みがずらりと並ぶ。
「落札者は翌朝、私の記憶の一部を失った」
「出品したら、深夜に娘の声が家中に響いた」
背筋が凍った。
⸻
1:
好奇心に負け、私は匿名アカウントを作った。
最初の出品は、古い人形。
ずっと前に祖母からもらったものだが、夜中に泣くような気配があった。
写真をアップロードすると、SNS上のタイムラインに小さく「出品中」と表示される。
その瞬間、スマホが震え、画面の奥からかすかな声が聞こえた。
「……私を、買って……」
息が詰まる。
夢か現か、境界が曖昧だった。
⸻
2:
翌朝、通知が来た。
「あなたの出品が落札されました。代償は支払われます」
落札者の匿名IDは「影の購入者」とだけ表示される。
部屋の空気が変わった。人形は静かに座っているだけなのに、どこか息をしているようだった。
スマホを見ると、落札者のプロフィールには空白しかなく、「取引完了」の文字が赤く光っている。
夜、夢に人形の中の少女が現れ、泣きながら訴えた。
「返して……」
目を覚ますと、指先の感覚がわずかに薄くなっていた。
代償の一部を、知らず知らず支払ってしまったのだ。
⸻
3:
SNS上では、次々と新しい出品が現れた。
呪いの箱、未練の手紙、怨念の写真──
ユーザーは匿名で品物を売買し、落札されるたびに奇怪な現象が報告される。
あるユーザーは書いていた。
「落札された呪いの人形を触ったら、夢の中で誰かに追われた」
私は不安を覚えながらも、次の品物を出品してしまう。
出品すればするほど、SNS上での自分の存在が薄れていく感覚があった。
⸻
4:
ある日、通知が来た。
「あなたの魂の一部を落札しました」
落札者のIDは、私の名前を少し変えただけのものだった。
画面の向こうに、自分自身が待っている──
鏡を覗き込むように、視線が画面からこちらを見返してくる。
理解した。
このSNSの落札者は、出品者自身を少しずつ取り込む仕組みだったのだ。
代償は他人ではなく、自分自身の時間や記憶、魂。
⸻
5:
SNSを閉じても、スマホの通知は止まらない。
夜になると、画面の奥で人形の少女が泣き、怨念の手紙が空中を漂い、写真の中の人物がこちらを見つめる。
匿名のはずの落札者は、私の行動を知っている。
出品すればするほど、私はSNS上の「商品」と化し、現実の自分も少しずつ消えていく。
逃れられない。代行者ではなく、出品者こそが、競売にかけられていたのだ。
⸻
6:
私、中医莉亞。
未成年で親に代行してもらい、曰く付きの心霊写真をオークションに出した。
最初は数字が跳ね上がり、ケタ違いの競りに心が躍った。
しかし、数字の勢いは突然止まった。
画面がバグり、無数の落札通知が画面を埋め尽くす。
「……ミツケタ」
スマホの画面から、黒い手が伸び、私の顔に絡みついた。
そのまま、何かに引きずり込まれる。
残ったのは、光を失ったスマホだけだった。
画面にはまだ、赤い文字でこう表示されている──
「落札完了」
深夜、静かな部屋に、少女の泣き声だけが残った。
心霊オークションSNS 完
「心霊オークションSNS」──
その名前は、見たこともない不思議なSNS風オークションプラットフォームを示していた。
説明文にはこうある。
「あなたの怨念・後悔・未練を出品できます。落札者は魂の代償を支払います。登録は自己責任で」
初めはジョークだと思った。
しかしユーザーのレビュー欄には、意味深な書き込みがずらりと並ぶ。
「落札者は翌朝、私の記憶の一部を失った」
「出品したら、深夜に娘の声が家中に響いた」
背筋が凍った。
⸻
1:
好奇心に負け、私は匿名アカウントを作った。
最初の出品は、古い人形。
ずっと前に祖母からもらったものだが、夜中に泣くような気配があった。
写真をアップロードすると、SNS上のタイムラインに小さく「出品中」と表示される。
その瞬間、スマホが震え、画面の奥からかすかな声が聞こえた。
「……私を、買って……」
息が詰まる。
夢か現か、境界が曖昧だった。
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2:
翌朝、通知が来た。
「あなたの出品が落札されました。代償は支払われます」
落札者の匿名IDは「影の購入者」とだけ表示される。
部屋の空気が変わった。人形は静かに座っているだけなのに、どこか息をしているようだった。
スマホを見ると、落札者のプロフィールには空白しかなく、「取引完了」の文字が赤く光っている。
夜、夢に人形の中の少女が現れ、泣きながら訴えた。
「返して……」
目を覚ますと、指先の感覚がわずかに薄くなっていた。
代償の一部を、知らず知らず支払ってしまったのだ。
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3:
SNS上では、次々と新しい出品が現れた。
呪いの箱、未練の手紙、怨念の写真──
ユーザーは匿名で品物を売買し、落札されるたびに奇怪な現象が報告される。
あるユーザーは書いていた。
「落札された呪いの人形を触ったら、夢の中で誰かに追われた」
私は不安を覚えながらも、次の品物を出品してしまう。
出品すればするほど、SNS上での自分の存在が薄れていく感覚があった。
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4:
ある日、通知が来た。
「あなたの魂の一部を落札しました」
落札者のIDは、私の名前を少し変えただけのものだった。
画面の向こうに、自分自身が待っている──
鏡を覗き込むように、視線が画面からこちらを見返してくる。
理解した。
このSNSの落札者は、出品者自身を少しずつ取り込む仕組みだったのだ。
代償は他人ではなく、自分自身の時間や記憶、魂。
⸻
5:
SNSを閉じても、スマホの通知は止まらない。
夜になると、画面の奥で人形の少女が泣き、怨念の手紙が空中を漂い、写真の中の人物がこちらを見つめる。
匿名のはずの落札者は、私の行動を知っている。
出品すればするほど、私はSNS上の「商品」と化し、現実の自分も少しずつ消えていく。
逃れられない。代行者ではなく、出品者こそが、競売にかけられていたのだ。
⸻
6:
私、中医莉亞。
未成年で親に代行してもらい、曰く付きの心霊写真をオークションに出した。
最初は数字が跳ね上がり、ケタ違いの競りに心が躍った。
しかし、数字の勢いは突然止まった。
画面がバグり、無数の落札通知が画面を埋め尽くす。
「……ミツケタ」
スマホの画面から、黒い手が伸び、私の顔に絡みついた。
そのまま、何かに引きずり込まれる。
残ったのは、光を失ったスマホだけだった。
画面にはまだ、赤い文字でこう表示されている──
「落札完了」
深夜、静かな部屋に、少女の泣き声だけが残った。
心霊オークションSNS 完
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